目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

Act of Intimacy-6. 父の決断

父エドガー・ノクターン侯爵がセドリックとの政略結婚を宣言し、ヴァルトを屋敷から追放すると命じた夜。リュシアン王国の貴族街、月光が雲に隠れ始めた瞬間。混乱と絶望の中、イリス・ノクターンがとった行動は、十八年の箱入り人生における最初の反抗だった。彼女は執事ヴァルト・グレイハウンドの手を取り、人目を避けるように屋敷の北翼へ走った。二人が逃げ込んだのは、誰も訪れない古い道具部屋。そこで予期せぬ感情の渦が二人を飲み込もうとしていた。


「父上は...あなたを連れていこうとしている」


イリスの声は震えていた。彼女の白銀の髪は乱れ、普段は完璧に整えられた姿からはかけ離れていた。淡いラベンダー色の瞳には、生まれて初めて見せる激しい感情の炎が宿り、頬には涙の跡が光っていた。普段は厳格な装いの彼女だが、今夜は急いで羽織った薄紫の簡素なドレスで、その裾は埃で汚れている。


「お嬢様、私は」


「言わないで!」イリスは声を抑え、震える指でヴァルトの口元を押さえた。「あなたが去るなんて...認めない」


道具部屋は狭く、積み上げられた古い家具や調度品で影が深い。月明かりは窓から細く差し込み、二人の姿を青白く照らしていた。埃っぽい空気が彼らの息遣いで揺れ、閉ざされた空間に緊張が満ちる。


ヴァルトは黙って彼女を見つめていた。執事服は普段の完璧さを失い、父親との対立の場で乱れたまま。琥珀色の瞳は獣の輝きを放ち、深いグレーの髪は額に落ちていた。彼の体からは抑えきれない獣の気配が漏れ出し、狭い部屋に満ちていく。


「私はお嬢様の命令に従います。しかし」ヴァルトの声は低く、抑えられていた。「あなたがそれで幸せになれるとは思えない」


イリスは小さく首を振った。彼女の手がヴァルトの胸に触れる。「この人だけは...奪わないで」と囁いた彼女の言葉は、自分自身に向けたものなのか、遠く離れた父親に向けたものなのか。


「私は...あなたを手放せない」


その言葉と共に、イリスの顔がヴァルトの胸に埋もれた。感情を禁じられて育った箱入り令嬢の初めての嗚咽。彼女の体は細く、温もりを失っていた。


「それに…前回で少しほぐれたかもしれないし」と見つめるイリス


ヴァルトの自制が崩れ去る音がした。彼の強い腕がイリスを抱き寄せ、彼女の体を床から持ち上げた。イリスは驚きの声を漏らしたが、次の瞬間、彼女の背中は壁に押し付けられていた。


「お嬢様...いいえ、イリス」ヴァルトの声は獣のように低く。「私はあなたを守るためにここにいる。しかし、今はただ...あなたが欲しい」


彼の告白に、イリスの体が熱を帯びた。感情のない人形と呼ばれてきた彼女の中で、抑え込まれてきた炎が一気に燃え上がる。彼女の手がヴァルトの髪に絡まり、彼を引き寄せた。


「この混乱の中だからこそ...本当の気持ちが分かるのかもしれない」


イリスの言葉が尽きる前に、ヴァルトの唇が彼女のものを求めた。それは以前の優しさとは違う、荒々しく切迫した口づけ。まるで今この瞬間を永遠に刻もうとするかのように。


イリスの唇が開き、ヴァルトの舌を迎え入れた。彼女の細い腕が彼の首に回され、体が密着する。ドレスの薄い生地越しに、ヴァルトの熱が伝わってくる。獣の体温は人間より高く、その熱がイリスの冷えた心を溶かしていく。


「あなたが去るくらいなら」イリスは息を荒げながら囁いた。「私も一緒に連れていって」


彼女の言葉にヴァルトの瞳が獣の金色に変わった。もはや理性では抑えきれない感情が、彼を支配していた。彼の唇がイリスの首筋を這い、鋭い犬歯で軽く噛んだ。イリスは小さな悲鳴を上げたが、それは拒絶ではなく、未知の快感によるものだった。


「イリス...あなたは貴族の令嬢。私は獣だ。許されない」


言葉とは裏腹に、ヴァルトの手はドレスの背中のファスナーを下ろし始めていた。イリスは迷いなく、彼の動きを受け入れた。


「私は人形と呼ばれてきた」彼女は息を荒げながら言った。「でも、あなたに触れられると...本物の人間になれる気がする」


ドレスが緩み、イリスの白い肩が露わになる。ヴァルトの唇がその肌に触れ、軽いキスを落としていく。イリスの体が震え、未知の悦びに弓なりになった。


「見せて」彼女は囁いた。「あなたの獣の姿を...全て見せて」


ヴァルトは一瞬躊躇ったが、イリスの決意に満ちた瞳を見て、ゆっくりと執事服のボタンを外し始めた。そして上着を脱ぎ、シャツも脱ぎ去った。露わになった彼の上半身には無数の傷痕があり、その筋肉は月明かりの下で浮き上がっていた。


イリスの指が震えながらも、その傷跡を一つずつ辿っていく。彼女の冷たい指先の感触に、ヴァルトは息を飲んだ。


「これは...私を守るための傷?」


彼は黙って頷いた。イリスの手が彼の腕を辿り、少し伸びた爪に触れる。それは彼の獣の本性の証。彼女はその鋭い爪を恐れるどころか、指先でそっと撫でた。


「私を傷つけないでしょう?」それは質問ではなく、信頼の表明だった。


「命よりも大切な存在を、どうして傷つけられる」ヴァルトの声は深く響いた。


その言葉に、イリスの最後の不安が消え去った。彼女は自ら肩からドレスを滑り落とさせた。白い肌が月明かりに照らされ、まるで大理石の彫刻のよう。しかし、その体温は確かに生きていた。


ヴァルトは息を呑んだ。イリスの体は想像以上に繊細で、まるで触れれば壊れてしまいそうだった。彼の大きな手が恐る恐る彼女の腰に触れ、その細さに驚く。


「イリス...」彼の声は震えていた。「あなたは美しい」


彼女は微かに笑った。その表情は、箱入り令嬢の仮面が完全に溶けた瞬間の証だった。「あなたの目に映る私は...本当の私なの?」


「獣の目は嘘を見抜く」ヴァルトは彼女を抱き上げた。「あなたは人形ではない。生きた、美しい女性だ」


二人の唇が再び重なり、深いキスを交わす。イリスの素肌がヴァルトの胸に押し付けられ、その感触に二人とも息を飲んだ。獣の熱と人間の冷たさが溶け合い、新たな温度を生み出していく。


ヴァルトの手がイリスの胸に触れ、その小さな起伏を優しく包み込んだ。イリスは未知の感覚に小さく声を上げた。彼の指が彼女の敏感な部分をそっと刺激すると、イリスの体が弓なりになる。


「ヴァルト...これは」


彼は彼女の言葉を遮るように唇を重ね、そのまま彼女を床に敷かれた古い絨毯の上に横たえた。彼の体がイリスの上に覆いかぶさり、月明かりが彼らの姿を幻想的に照らす。


イリスの手が彼の腰に触れ、さらに下へと探りを入れた。ヴァルトは獣の唸り声を漏らし、彼女の好奇心に応えるように腰を押し付けた。


「これが...あなたの欲望?」イリスの声は好奇心と緊張が入り混じっていた。


「あなたへの、全て」ヴァルトは囁いた。「でも、怖がらせるつもりはない」


イリスは首を振った。「怖くない。ただ...知りたい」


彼女の言葉に、ヴァルトの自制がさらに崩れた。彼の手がイリスの太ももを撫で上げ、彼女の秘密の場所へと迫る。彼女は驚きの声を上げたが、拒絶しなかった。むしろ、その接触を受け入れるように体を開いた。


「イリス...このまま続けると」


「このまま」彼女は彼の言葉を遮った。「私たちは明日どうなるか分からない。でも今夜だけは...私のものでいて」


その言葉が、ヴァルトの最後の障壁を壊した。彼の指がイリスの秘所に触れ、その湿り気に驚く。彼女は本能的に腰を動かし、その触感を求めていた。獣の本能と人の欲望が混ざり合い、二人を支配していく。


「痛いかもしれない」ヴァルトは低く囁いた。


イリスは小さく頷いた。彼女の手がヴァルトの頬に触れ、「あなたを信じる」と目で伝えた。


ヴァルトは自らの衣服を完全に脱ぎ去り、イリスの前に獣の姿をさらけ出した。彼女は驚きの息を呑んだが、それは恐怖ではなく、畏敬の念だった。彼女の指が伸び、彼の硬く熱いものに触れる。


「今日は...入るかしら?」


彼はただ頷き、ゆっくりと彼女の上に覆いかぶさった。二人の体が完全に重なり、イリスは彼の重みと熱さを全身で受け止めた。そして、少しずつ彼女の中に入っていくヴァルトの感覚。鋭い痛みに彼女は身を硬くしたが、ヴァルトの優しいキスがそれを和らげていく。


「イリス...大丈夫か?」


彼女は涙目になりながらも頷きつつ「もしかして、奴隷環のせいかも。」とイリスが思いつく。奴隷契約の時に、奴隷商がヴァルトに施した異能。主人を傷付けることができないように制限をかけているはず。


ならば。


「ん…えいっ!」イリスが強制解除の手続きを手早く行うと、呪いは砕け散った。その瞬間、イリスの下半身に激痛が走る。ついに繋がってしまった。


獣の衝動に揉まれながら、全てを察したヴァルトはゆっくりと腰を動かし始め、イリスの体を慎重に愛していった。二人の吐息が混ざり合い、汗ばんだ肌が擦れ合う音が静かな部屋に響く。イリスの痛みは徐々に快感に変わり、彼女の声も変化していった。


「ヴァルト...これって」彼女の言葉は途切れがちだった。「愛の奇跡かな?」


「そうだ」彼は確信を持って答えた。「そして獣の、最も純粋な本能だ」


彼のペースが上がり、イリスの体は彼のリズムに合わせて動き始めた。彼女の指がヴァルトの背中に食い込み、彼の肌を傷つけるほどの強さで抱きしめる。それは痛みではなく、彼女の激しい感情の表れだった。


「この人だけは...奪わないで」イリスは繰り返した。今度ははっきりと、自分の心に言い聞かせるように。


ヴァルトの動きが激しくなり、イリスの体が波打つように彼に応えた。二人の息遣いが荒くなり、汗が混ざり合う。イリスは初めての快感の波に溺れ、本能的に彼の名を呼んだ。


「ヴァルト...ヴァルト...」


彼は彼女の首筋に顔を埋め、獣の本能のままに彼女の肌に歯形をつけた。それは「あなたは私のもの」という原始的な宣言。イリスはその痛みさえも受け入れ、むしろその感覚に興奮を覚えた。


クライマックスが近づき、二人の動きは頂点に達した。イリスは生まれて初めての絶頂に体を震わせ、ヴァルトもまた彼女の中で全てを解き放った。熱い波が彼女の内側を満たし、二人は抱き合ったまま動かなくなった。


息を整えながら、イリスはヴァルトの髪を優しく撫でた。「たとえ父上が何と言おうと...あなたを失いたくない」


ヴァルトは彼女をさらに強く抱きしめた。「たとえこの命に代えても、お前を守る」


獣の執事と人形姫は、運命に抗う決意を固めていた。明日がどうなろうとも、今この瞬間、二人の絆は断ち切れないものとなった。彼らの体は分かれても、魂は永遠に結ばれていたのだから。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?