《グリード王国・スペードツータウン》
ヒロユキたち3人は、今後の旅に向けた支度をするため、久しぶりに拠点として使っていた“家”へと向かっていた。
そして今日は、その家をたまこに紹介する日でもあった。
「……それで、ジュンパクの居場所は?」
「私が知ってるわけないじゃないですか。寝てたんですよ?」
「……あれは寝てるというより“死んでる”」
「人を死人にしないでください!?」
「そうよ~、私が治したんだから、死んでないわよ~?」
「ふふ、じゃあ――ここですよここ! マイホーム!」
ユキが嬉しそうに指差した先に、小さな門と白い外壁の建物が見えてくる。
この家はグリード
ヒロユキたちはここに武器や魔皮紙などを保管しており、必要に応じて取り寄せる拠点として使っていた。
「へぇ~? けっこう大きいのねぇ?」
「当然です! 依頼をコツコツこなして、コツコツコツコツ貯めて――ようやく買ったんです!」
「……本当なら、俺のギルドカードで一発だった」
「そんなのダメですよ! お金は“働いた対価”なんです!
お母さんが言ってました。“自分で稼いだお金で買った物が一番大事にできる”って……
だから――ちゃんと大切にしてくださいね♪」
「…………」
「……なにか文句ありますか?」
「はいはい、夫婦喧嘩はそこまで~。
とにかく、早く見せてちょうだいな~? 私の荷物、多いのよ~?」
「ふっふっふ……では! いざ、ご覧あれ!」
ユキは家の前に立ち、いつものように玄関に手をかざして魔力を流す。
「――ん?」
「どうした?」
「いえ……鍵が、開いてました?」
「え?」
「鍵の閉め忘れってこと?」
「いえ、そんなことはないはずです。
この家、玄関の鍵を2時間以上開けっぱなしにしてると、自動で閉まるように設定してあるんです」
「つまり~……」
「っ!」
ユキは表情を強張らせ、勢いよくドアを開け、ドタドタと中へ駆け込んでいった。
そして、リビングの扉を開け放つ――
「やぁ、おかえりー」
「おかえりさね」
「ルコサさん!? なんでここに居るんですか!!」
そこには、まるで自分の家のようにくつろぐルコサとルダの姿があった。