《リュウトパーティー拠点 テント内》
「それで! リュウトさんはどこに!」
キールは緊急用の通信魔皮紙を使って、全員を招集。そして、リュウトに起こった異変のすべてを説明した。
「落ち着くんだ」
「これが落ち着いて居られますか! すぐに追いかけます!」
「うんっ!」
みやとアカネ、あーたんが飛び出そうとしたその時――
「おい、落ち着け」
クロエの目が鋭く光る。まるで圧をかけるように、一言ずつを噛み砕いて吐き出す。
「状況……把握してんのか?」
「俺たちにそんな余裕はねぇって、わかるだろ?」
「――殺すぞ」
「な!?」
アカネが反論しようとするとみやが座っているクロエの前に出て見下ろす。
「あ?」
「チビの癖に威勢がいいっ」
「てめー……いい度胸してんじゃねぇか、殺されてぇみてーだな」
バチバチとみやとクロエが火花を散らす……ちなみにみやの身長が155㎝でクロエが153㎝なのでほとんど変わらないはずだが……
そんな中、キールパーティーの中で唯一落ち着いていたアンナが発言した。
「私もキール様のパーティーメンバーに賛成ね、今は追わない方が先決よ」
「アンナさん!?」
「アンナっ、リュウトが心配じゃないのっ?」
「そうだよー!ご主人様また無茶しちゃう!」
「キール様の言った通りよ。明日にはここで山亀の討伐が始まるとして――」
「うんっ」
「その時、私たちが“決めた持ち場”に居なかったらどうなると思う?」
「……え?」
「連携が崩れて、作戦は失敗するわ」
アンナはそこで一拍置いてから続けた。
「リュウトはアタッカーとして重要なポジションよ。いないなら作戦そのものを見直す必要がある」
「作戦の練り直しだけじゃないわ。魔皮紙の補充、アバレー騎士たちへの伝達――全部今日中にやらなきゃ間に合わない」
「つまり、今からリュウトを探しに行って、もし見つからなかった場合……全体が崩壊する」
「確かに……そうですが……」
「?、あーたんむずかしいことわかんなーい」
「アカネ、あーたんを連れて外に出てなさい、今の話を聞いても尚、追いかけるなら止めないわ」
「…………はい、あーたん、行きますよ」
「ご主人様さがしにいくの〜?」
「いいから行きますよ」
「は〜い」
アカネはあーたんを連れてテントの外へ出て行った。
「ま、そう言うことだ、わかったかチビ女」
「む……その歳でぺちゃぱいっ」
「胸は関係ねぇだろ!」
「クロ、もう落ち着け……」
「ちっ」
「そう言う事で私達が1番に考えないといけないのはリュウトの抜けた穴をどうするか、よ」
「「「…………」」」
リュウトの攻撃力はキール達も含めここにいる全員は良く知っている……だからこそ、どれだけ大きな穴か理解しているのだ。
………………
…………
時間がないのを解っているが沈黙が続く。
だが、それを破ったのは意外な人物だった。
「みなさん!」
テントの中に入ってきたのは先ほど出て行ったアカネだ。
そして、その背後には1人の魔法使いの女の子が居た!
「話は聞かせて貰いました!私の名前はユキ!いい案があります!」