「これが山亀か、でけーなぁ」
「これだけ大きいとチビが目立つねっ」
「あ? 殺すぞ」
「ふんっ」
「……どうして私はこの人達と一緒なんだろ~」
山亀の右前脚付近には、クロエ、たまこ、みやの三人が待機していた。
{二人とも、喧嘩しないでください。最初が肝心ですよ? 失敗したらどうするんですか?}
「「それはないから安心(しろ)(してっ)」」
「そこは自信あるんだ~」
{では、お願いします!}
「さて、と――【限界突破】!」
「【天の治癒】、いっきまーす!」
クロエの身体から一瞬で汗が吹き出し、筋肉が引き裂かれるような音が骨の奥から響く。だが、それと同時に彼女の全身を包むように、たまこの回復魔法がきらめいた。
限界を越えた肉体に即座に癒しを与える――これは、極めて繊細なタイミングが必要な連携だ。それを淡々とやってのける二人の呼吸は、まさに職人芸だ。
「こりゃぁいい! 日頃は俺がかける側だったからな! これなら、あの山野郎の右手ぶっ飛ばせるぜ!」
「結構飛ばすわね~。普通なら五分ってところかしら~」
「全力でしてるからな! 俺の全力についてこれなかったら、合わせるぞ?」
「余裕よ~。というかそろそろ、あなた女の子かどうか分からなくなってきたわ~」
「――見えた」
みやの魔眼が淡く輝き始める。視界を超越した感覚が研ぎ澄まされ、山亀の分厚い鱗の間に存在する“ひずみ”を炙り出す。
千に一つの、狙えるかどうかの境界線。そこを、みやは言い当てた。
「硬くなってるけど……ある。崩せる点が、確実に」
「教えろ、クソ白髪!」
「はずすなよっ、チビ! そこから右に20メートル地点、上から342個めっ!」
クロエの体が風を裂き、一瞬で目標地点へ跳躍する。その着地と同時に、重力と魔力を乗せた渾身の拳が炸裂する。
「ここかぁ! 超級奥義! 【地割れ】ッ!!」
――ボコオオオォン!!
爆音と衝撃が世界樹の外壁にまで響いた。
クロエの拳が炸裂した地点には、山亀の分厚い鱗が断ち割られ、亀裂が全体に拡がっていく。
その隙間から、血液が滝のように吹き出し、大地を紅く染めた。
「いてぇだろ? これがおめぇを殺す技だ! 覚えとけ!」
「山亀に言ってるの~? 聞こえてないでしょ~?」
「うるせぇ! こまけーこたぁ良いんだよ! 追撃しろ!」
「命令口調っ! なまいきっ! 【光激】!」
みやの掌から放たれた光弾が、裂けた皮膚の隙間に正確に命中していく。
光の軌道は一切ぶれず、まるで最初からその穴が空くことを計算していたかのような追撃。
「早く次言えや!」
「次っ! そこから二百メートル左で、上から7番目!」
「と、言うことで~こっちは大丈夫よ~。ユキちゃん、【あれ】が発動するまでには、右翼をボロボロにできるわ~」
{流石ですね。では、次、左側の方お願いします!}