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第260話 代表会議

 代表会議が始まり、それぞれが順に自己紹介をしていった。


 うんうん……一年も二年も、ほんとに個性が強いなぁ。

 ……いや、こんな大遅刻かました俺が言えた義理じゃないけどさ。


 はぁ……それにしても――

 隣のカブ先輩、なんかずーっとこっちチラチラ見てるんですけど!?

 めっちゃ恐い顔してるし……なに?怒ってる?やっぱり遅刻したから? ごめんね!? 


 (たすけてルカ……ここ、空気こわいよぉ……)


 「うむ、自己紹介ごくろうであった。各自一年生は、机に置いてある腕章に魔力を通してくれ」


 会長の言葉に従って、俺も机の上の腕章にそっと魔力を流す。

 するとそれは、ふわりと宙に浮かんだあと、自然と俺の右腕に巻き付いた。


 「おぉ……」


 安全ピンいらず、これなら確かに便利だ。

 ちなみに、腕章には《クラス代表》って文字が刻まれている。……うーん、まだ慣れない。


 「これからは、君たちが各クラスを引っ張っていく立場になる。クラスによって人数差もあるだろうが……期待している」


 「はいっ」


 俺たち一年代表たちは、それぞれ小さくうなずいた。


 「では、続いて――“体育祭”の話に入る。

  君たちはまだ入学したばかりだが、準備はもう始める段階にある。

  内容は簡単、『体育祭で何をするか』を各クラスで話し合ってこい」


 なるほど、各クラスで出し物を決めるスタイルか。

 開会式や定番の競技は決まってるっぽいけど、自由枠があるのは面白い。


 ……うん、これはなんか文化祭に近いかも。

 それぞれのクラスの得意分野を活かして、身体を動かす競技を出す――そんな意味合いなんだろうな。


  「続いて――クラスにこの箱を設置してほしい」


 会長が出してきたのは、どう見ても手作りの木箱。

 上には貯金箱みたいなスリットが開いていて、正面には手書きで【なんでも箱】の文字。


 そしてその隣には……うん、なんかよく分からない芋虫みたいなキャラクターの絵。

 たぶん可愛さを狙ったんだろうけど、むしろちょっと怖い。


 「これは現在の二年は知っているな? 【なんでも箱】といって、クラス内の問題を自由に書いて入れるためのものだ。

  代表の仕事は、この箱に入った“なんでも”を処理すること。ちなみにこの箱は私の手作りだ。

  箱のデザインは自由だが、各クラスに必ず設置するように」


 ……うへぇ、つまりあれだよね。よろず屋ってことだよね。

 これ、絶対早く帰れないやつじゃん……ルカに伝えなきゃ。


 いやまぁ、《◯魂》みたいで面白そうな気もするけどさ……!

 いやでもこれ毎日チェックして返答とかしなきゃいけないのでは……!?


 「では、今日はここまでにする。各自、クラス代表として二年間しっかり努めるように。……解散」


 会長はそう言って、手作りの箱を抱えたままスタスタと会議室を出ていった。


 「あー、さてっと。終わった終わった。帰るぞ、アオイ」


 「へ? あ、はい」


 ……え、名前呼びになってる!? いつの間に!?

 そんなことに驚きながら、俺も先輩――カブさんの後ろを歩いて会議室を出る。


 てか、なんだこの人、めっちゃガニ股で肩揺らして歩いてる……どんな生き様なのそれ。


 「あー……このあと時間空いてるか?」


 「え? あ、うーん……友達に聞いてみないと」


 正直、ルカをひとりにしてるから確認しないと……


 「……あー?」


 うわっ、こわっ! なにその目つき!

 ご、ごめんなさい!


 「じゃあその友達も連れてこい。これから【なんでも箱】の依頼を片付けに行く。お前も一度、見ておけ」


 ……意外と、優しい……のか? いや、怖いけど優しい? どっち?


 「30分後、北の棟の前に集合だ。遅刻すんじゃねーぞ!」


 「は、はいっ!」


 俺はそのまま猛ダッシュでルカを呼びに走り出した――!


 ――――――――――――――――――――――


 「なにそれ!楽しそうなのじゃ!行くのじゃアオイ!はよはよっ!」


 事情を話したら、ルカは満面の笑みでウキウキしていた。

 ……このテンション差、なんなんだろう。


――――――――――――――――――――――


教科書抜粋:アバレー王国について


アバレー王国

三大国家の一つにして、世界屈指の富を持つ獣人たちの王国。

豊かな自然と経済力を両立させた、独自の文化と価値観を持つ国である。


主な特徴

・獣人による国家運営

 国民の大多数が獣人で構成されており、身体能力・感覚能力に優れた彼らの特性を活かした産業が発展している。

 政治も愛染家を中心とした評議会制をとっており、種族間の調和が重視される。

・自然と共にある建築文化

 アバレー王国では、住居の多くが建築ウッドと呼ばれる特殊な魔樹の中に造られている。

 この木は加工せずとも内部に空洞があり、魔力により調整された空間は夏は涼しく、冬は暖かい。

 自然を傷つけず、共に暮らすという獣人たちの哲学が反映された建築様式である。

・経済力の強さ

 交易・鉱山・薬草・魔石などの天然資源に恵まれ、それらを元に築かれた国家規模の商会が多数存在する。

 金銭的な影響力は絶大であり、他国の政策や研究支援にも出資することで国際的発言権を得ている。

・環境保護意識の高さ

 自然を尊ぶ価値観が国全体に根づいており、森林伐採の制限や魔物との共存政策など、環境と経済のバランスがとられている。

 そのため、他国からの観光客や学者も多く訪れる。

 尚、人間の観光を拒否している街は多いので気をつける事。


総評


「金と自然が両立した国家」。

物質的な豊かさと精神的な豊かさを追求する獣人たちの理想郷とも言われている。







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