目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第269話 体育祭作戦会議

 朝日が昇り、《魔法目覚まし時計》がポワンポワンと可愛い音で俺を優しく起こしてくる。


 「ん……朝かぁ……ふわぁ~」


 身体を起こすと、サラサラと金髪ロングが肩を滑り落ちる。

 ……うん、完全に“女の子の朝”してるわ、俺。


 最近、すっかりこの生活に慣れてきて、家の中では元の癖が全開。

 現在の俺の寝巻きは、パンティーにブラジャーという黄金コンボ。

 ――何度でも言うけど俺、中身は男です。


 「……やばいな俺、慣れって怖い……」


 気を取り直してベッドから抜け出し、下着姿のまま洗面所で顔を洗う。

 そのまま台所へ行き、魔法コンロの魔法陣に魔力を通す。


 ボフッと音がして、火が灯る。魔法版IH。

 ……ところで、IHコンロのIHってなんの略なんだろう。

 今さら聞けない疑問No.1だよねあれ。

 イケてる火(Inferno Hot)?

 異世界火力?

 どっちにしろ火力マシマシ。ありがとう魔法文明。


 「えーっと、フライパン置いてっと……油油……あ、『ゲマ油』あった。よし、次は『ユルナチョウ』の卵に、『ピルクドン』のベーコン……それと《白パン》っと」


 フライパンに油を引いて、卵をトンッと割ると、

 ジュゥゥ~~っと美味しそうな音が台所に響く。

 仕上げに水をちょっと入れて、蓋をポン。


 すると。


 「ぬやぁ~……眠いのじゃ……朝ごはんなのじゃ……」


 爆発したモップみたいな頭で、制服姿のルカがふらふらと登場。

 寝ぼけすぎて一周回って新種の魔物みたいになってる。


 「おはよう。……ってルカ、頭どうしたの!?何と戦ったの!?」


 「夢の中で暴れ牛と相撲してたのじゃ……」


 「寝癖で世界救えそうだよ……とりあえず髪なおして来て、焼けるまでに」


 「めんどくさいのじゃ~……」


 ボサァ……と髪をなびかせながら、スローな動きで洗面所へ向かっていくルカ。

 その後ろ姿が一番魔法使いらしく見えた。


________



______


 「アオイちゃん、ルカさん、おはよーう!」


 「うん! おはよー!」


 「おはようなのじゃ~」


 《なんでも箱》の依頼が始まってから数ヶ月――

 《ストロングウーマン》のリーダーが言ってた通り、俺たちには何か“壁”があったらしい。

 けど、その壁……仮にATフィールドと名付けるとして、それが依頼をこなすごとに少しずつ中和されていった。


 今では――


 「スヒマルさん、おはよう!」


 「は、はい! おはようございます……!」


 ……彼女以外とはそれなりに話せるようになってる。


 スヒマルさんはそう言うと、そっと机に顔を伏せて寝たフリを始めた。

 ……ねぇ、俺なんかした??


 と、その時。


 「はーい、みなさん、今日は授業の前に《体育祭》について話し合いましょう。クラス代表さん、よろしくお願いしますね」


 「ひゃ、ひゃい! わゃかりました!」


 ……噛んだ……しかも盛大に噛んだ……!

 なんでこうなるの……俺、噛みグセ治らないの……?


 顔が真っ赤なまま、みんなの前に立ち、黒板の前へ。


 「え、えと……では、先ほど先生が言っていた通り、《体育祭》についてですが……」


 深呼吸! ゆっくり話せ! いける俺!


 「まず、他のクラスの競技と……それから、僕たちが出した《騎馬戦》について、作戦会議をしたいと思います!」


 そう。あれから何度か《クラス代表会議》が行われて、《体育祭》が近づいた今、

 ようやく全クラスの競技が出揃ったのだ――!


 「まず、競技なのですが、僕たち一年アドベンチャー科は《騎馬戦》。


 そして、

 一年マジック科は《我慢比べ》。

 一年ビジネス科は《物運び》。


 二年生たちは別枠で戦うようなので、僕たち一年はこの三種目で競い合うことになります」


 黒板に、それぞれの項目が魔法によって綺麗に記される。


 「では、まず僕たちが提案した《騎馬戦》から話し合いましょう」




 クラス会議、開幕!



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?