歳を取ると時間の流れが早いというけれど――
俺たちは、間近に迫る《文化祭》について話し合っていた。
「それじゃあ、これから《文化祭》の企画について話し合いを始めます」
《文化祭》……日本でよくあるアレ。
憧れの出店がずらりと並んで、クラスごとに模擬店を出して――て言うのはアニメの中だけ。
俺の中学時代なんて、展示に毛が生えたレベルの出し物で、すごいなと言えばクラスのしょぼいファミリー映画。
だが、ここは――異世界だ。
つまり、あの“ありえない”が、普通に実現する可能性があるってことだろ!?
「はい」
「はい、どうぞー」
ワクワクが止まらない俺の前で、最初に手を挙げたのは……筋肉チームのリーダーだった。
「ジムにしてみてはどうかな?」
「へっ?」
次の瞬間、筋肉パーティーの面々が一斉に上半身の制服を脱ぎ捨て、ドンッとマッスルポーズ!
………はい?
「俺たちのこの筋肉……!手に入れるには、最高のメニューで最高に追い込む必要がある!その“極意”を知る俺たちが、トレーナーとして導くッ!!」
うわぁ、語尾に筋肉ついてそう……。
「な、なるほどぉ……候補に入れとくね?」
いやいやいや、絶対イヤだよ!?
俺、自慢じゃないけど運動なんてほぼしないタイプなんだから!
でもその代わり、食べるのは大好きなんだよなぁ……ま、ありがたいことにこの身体、どれだけ食べても太らないんだけどね!
女体化ボディ、唯一の神恩……!
「他には? 他に案、ありますか~?」
……シーーーーン。
や、やばい!このままじゃマッスルジム案で決定コース!?
「……あ、あの」
「はいっ!どうぞ!!」
飛びつくように指名したのは、いつもは目立たないパーティー《ファイアーヒューマンドロップ》のリーダーくん。
小動物みたいにオドオドしながら手を上げていた。
「ぼ、僕たちは冒険者なので、冒険者っぽいことを……」
「なるほどっ!男飯だね!」
「え、えっ?」
「男ごはん!!」
冒険者=ワイルド=肉ドーン=飯テロ!
これしかないっしょ!超ワクワクする!
「い、いえ、そういうのではなくて……剣の展示とか、装備の紹介とか、そういう……」
「…………そっか……」
「えっ、なんで急にテンション下がったんですか?」
結局……この世界でも文化祭に出店なんて、夢のまた夢なのか。
アニメやラノベだけの幻想だったのかなぁ、ああいう賑やかなやつ……。
「はいのじゃ」
静まり返る空気を切り裂くように、すっと手を上げたのはルカだった。
なんだろ、突拍子もないこと言い出さなきゃいいけど――いや、絶対言うよねこの人。
「どうぞ、ルカさん」
「《肉屋》じゃ」
……うん?
「《肉屋》って……?」
「肉を焼いて、食わせるのじゃ」
うおおおおおおおおおお!!!まさかの!!!
まさかのルカ!!!!
流石俺のマスター!!!!!!!!!わかってるねぇ!!
みんなが「それは却下でしょ」って空気を出し始める。
いや、違う!これはもう使命だ――飲食店を実現するための、俺の戦いだ!
「あ、あの、みんなの案を……統合した形でどうかなって思うんだけど……」
「「「?」」」
「例えば、武器の展示もしつつ、肉料理を振る舞う。冒険者の雰囲気も出せるし、一石三鳥じゃない?」
「「なるほど!」」
「のじゃ!」
「マッスルジムは?」
「そ、それについては……今から考えよう!考えようね!」
――よしっ!これで夢の飲食文化祭実現、いけるっ!
ワクテカ!