目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第289話 《文化祭》話し合い

 歳を取ると時間の流れが早いというけれど――


 俺たちは、間近に迫る《文化祭》について話し合っていた。


 「それじゃあ、これから《文化祭》の企画について話し合いを始めます」


 《文化祭》……日本でよくあるアレ。

 憧れの出店がずらりと並んで、クラスごとに模擬店を出して――て言うのはアニメの中だけ。

 俺の中学時代なんて、展示に毛が生えたレベルの出し物で、すごいなと言えばクラスのしょぼいファミリー映画。


 だが、ここは――異世界だ。


 つまり、あの“ありえない”が、普通に実現する可能性があるってことだろ!?


 「はい」


 「はい、どうぞー」


 ワクワクが止まらない俺の前で、最初に手を挙げたのは……筋肉チームのリーダーだった。


 「ジムにしてみてはどうかな?」


 「へっ?」


 次の瞬間、筋肉パーティーの面々が一斉に上半身の制服を脱ぎ捨て、ドンッとマッスルポーズ!


 ………はい?


 「俺たちのこの筋肉……!手に入れるには、最高のメニューで最高に追い込む必要がある!その“極意”を知る俺たちが、トレーナーとして導くッ!!」


 うわぁ、語尾に筋肉ついてそう……。


 「な、なるほどぉ……候補に入れとくね?」


 いやいやいや、絶対イヤだよ!?

 俺、自慢じゃないけど運動なんてほぼしないタイプなんだから!

 でもその代わり、食べるのは大好きなんだよなぁ……ま、ありがたいことにこの身体、どれだけ食べても太らないんだけどね!


 女体化ボディ、唯一の神恩……!


 「他には? 他に案、ありますか~?」


 ……シーーーーン。


 や、やばい!このままじゃマッスルジム案で決定コース!?


 「……あ、あの」


 「はいっ!どうぞ!!」


 飛びつくように指名したのは、いつもは目立たないパーティー《ファイアーヒューマンドロップ》のリーダーくん。

 小動物みたいにオドオドしながら手を上げていた。


 「ぼ、僕たちは冒険者なので、冒険者っぽいことを……」


 「なるほどっ!男飯だね!」


 「え、えっ?」


 「男ごはん!!」


 冒険者=ワイルド=肉ドーン=飯テロ!

 これしかないっしょ!超ワクワクする!


 「い、いえ、そういうのではなくて……剣の展示とか、装備の紹介とか、そういう……」


 「…………そっか……」


 「えっ、なんで急にテンション下がったんですか?」


 結局……この世界でも文化祭に出店なんて、夢のまた夢なのか。

 アニメやラノベだけの幻想だったのかなぁ、ああいう賑やかなやつ……。


 「はいのじゃ」


 静まり返る空気を切り裂くように、すっと手を上げたのはルカだった。

 なんだろ、突拍子もないこと言い出さなきゃいいけど――いや、絶対言うよねこの人。


 「どうぞ、ルカさん」


 「《肉屋》じゃ」


 ……うん?


 「《肉屋》って……?」


 「肉を焼いて、食わせるのじゃ」


 うおおおおおおおおおお!!!まさかの!!!

 まさかのルカ!!!!



 流石俺のマスター!!!!!!!!!わかってるねぇ!!



 みんなが「それは却下でしょ」って空気を出し始める。

 いや、違う!これはもう使命だ――飲食店を実現するための、俺の戦いだ!


 「あ、あの、みんなの案を……統合した形でどうかなって思うんだけど……」


 「「「?」」」


 「例えば、武器の展示もしつつ、肉料理を振る舞う。冒険者の雰囲気も出せるし、一石三鳥じゃない?」


 「「なるほど!」」


 「のじゃ!」


 「マッスルジムは?」


 「そ、それについては……今から考えよう!考えようね!」



 ――よしっ!これで夢の飲食文化祭実現、いけるっ!


 ワクテカ!


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?