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第292話 ユキの冒険の始まり。

 《ナルノ町 ギルド》


 「見て見て!剣!剣ですですー!」


 「こーらー、ユキちゃん、あんまりジロジロ見ないのよー?」


 ギルドに到着するなり、ユキは冒険者たちの装備に目を輝かせていた。

 肩にかけられた剣、重そうな盾、キラキラした魔導具――

 全てが“本物”の輝きだった。


 「ふぁー!ファー!ですっ!」


 興奮が収まらず、ユキはぴょんぴょん跳ね回る。

 その様子はまるで、体全体で“ワクテカ”を表現しているみたいだった。


 ……将来、本当に冒険者になりそうで怖い。

 先生たちはちょっとだけ、不安げな目でそんなユキを見ていた。


 その頃、手続きを終えたウマヅラが戻ってきた。


 「ギルドには話を通してある。これから全員、【転移魔法陣】で《モルノスクール》まで移動する」


 「了解よー」


 ドーロが頷き、子供たちを一人ずつ魔法陣の中心へ誘導していく。



 「すごいすごいです!わー!身体がっ、身体が光りましたですっ!!」


 魔法陣がふわりと光を放ち、ユキの姿が淡く揺らいだ。



 その一歩が、彼女にとって――

 世界を知る、最初の冒険だった。


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