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第307話 『女神』討伐

 《????》


 光の届かぬ黒き玉座の間。

 その中心に描かれた巨大な【転移魔法陣】を囲うように、吸血鬼兵たちが何百と静かに息を潜めていた。

 天井には王直属の《バットドラゴン》が数十体、逆さに張りつき、今か今かと牙を磨いている。


 「来い……来い……」


 玉座に座る男――《アビ》はその時を待ち続けていた。


 「本当に来るのでしょうか?……“彼女”が……」


 側近の問いかけにアビは鋭く目を向けた。


 「疑っているのか?」


 「い、いえ……ただ……根拠が……」


 「あるさ」


 アビは指を鳴らすと、空間から一枚の魔皮紙がスッと現れた。

 それはまるで何の記述もない、ただの白紙に見えたが……その名を《エル・ディオス・デスヴェラード》――【神を暴くもの】と呼ばれている。


 「……それは?」


 「《エル・ディオス・デスヴェラード》。魔神様より選ばれし我ら魔王の系譜にのみ与えられる、“神の痕跡を暴く紙”。女神がこの世界に干渉すれば、こいつが微かに反応を起こす」


 「ですが、それは“確信”には……」


 その瞬間、側近の首が宙に浮く。

 青白い血が吹き出し、床を冷たく染めた。


 「“魔神の贈物”に疑念を持つ愚者は不要だ」


 死骸に目もくれず、アビは指を鳴らす。

 するとバットドラゴンの一体が音もなく地に降り立ち、死体を丸呑みにして天井へ戻る。


 「ふ……少し熱くなりすぎたな……」


 アビは再び玉座にもたれ、呟く。


 その瞬間――魔法陣が蒼白く光を放ち始めた。


 「……来たか。構えろ」


 吸血鬼兵たちは一斉に魔法を構え、バットドラゴンたちが牙を剥く。


 そして……


 「到着し――え?」


 「の、のじゃ!?」


 「…………へぇ」


 転移魔法陣から現れたのは、アオイ、ルカ、そしてルコサ。

 次の瞬間、アビが低く、命じた。


 「殺せ」


 数百の魔法と剣が一斉に放たれる――《女神》を仕留めるために。

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