神秘の光に照らされたピラミッドの最深部。
そこには石で組まれた巨大な王座がひとつ。
静寂の中、ただ一人の男がその玉座に座し、目を閉じて時を待っていた。
「……ヌルスは、よくやってくれた」
その手には、真紅に染まった魔皮紙。
それは『女神』の波動が刻まれた、明らかな証。
「……貴様らの行動は、ヌルスの魂を通してすべて筒抜けだ」
言葉と同時に、どこからともなくワインボトルとタンブラーが浮かび上がる。
魔力の手によって優雅に注がれた赤い液体に、氷のような白い結晶が一片、落とされた。
「――封結された“人間の魂核”か。
……やはり、汚れた魂ほど味わいが深く、芳醇だな」
ワインをひと口。
舌の奥で蕩ける“罪の味”に、魔王はゆっくりと目を細めた。
「だが、これは“儀式”ではない。
――魔神様の命令だ。貴様らがここまで辿り着けたのなら……俺が、直々に裁く」
その言葉と共に、魔王の前に無数の魔法陣が展開される。
空間を歪ませ、現れるのは――魔皮紙を媒介に映し出された映像、それはアヌビス族が見ている光景。
それぞれに、ユキ、ジュンパク、ヒロユキ、そして……アオイの姿が映る。
「……こいつか」
ひときわ大きく映し出された、金髪の仮面の少女。
その姿に、魔王の瞳が静かに止まる。
「魔神様によれば……こやつだけが“異端”だと。だが――勇者と同じく“殺せるなら殺せ”との命令が下っている」
魔王は片手を動かし、視界に現れた他のモニター群へと目を移す。
戦場を、全体を、俯瞰するように見渡して。
「ふむ。我が軍を相手によく戦っている……だが、それだけだ。
あれは全戦力の半分に過ぎん。人間界からの援軍、そして遅れてくる我が方の増援……貴様らに耐えきれるかな?」
魔王メイトは静かに笑む。
それはまるで、勝利を確信する者の微笑みだった。
――だが。
{魔王様! 魔王様!}
「……どうした」
通信を繋いできたのは、援軍部隊の指揮を任されている幹部の声だった。
{緊急事態ですッ! 新しい侵入者が、前線の背後に――!}
「……ふむ、此方へ通じるポータルは閉じていたはずだが?」
{はい、それが……閉じていたはずなのですが――うわっ!? うわああッ!?}
「…………」
通信は、唐突に――沈黙した。
「……勇者の仲間か。ならば……どれ」
魔王はひとつ息を吐くと、魂の流れに触れる。
消えた部隊の中にいるアヌビス兵の魂を辿り、“それ”を視ようとした……だが。
「…………馬鹿な……」
援軍の数は、およそ一千万。
ライブラグス国の四分の一に相当する軍勢だ。
“全滅”など、ありえない。絶対に――ありえないはずだった。
「何が……あった……」
しかし、魔王の力を以てしても、魂のいずれにも接続できない。
それはつまり――数時間のうちに、痕跡も残さず“壊滅”したということを意味していた。
「……一体、何者だ……!?」
だが魔王メイトは、まだ知らなかったのだ。
その答えを。
――それは、かつて世界を震撼させた存在。
人知を超え、戦略も、数も、常識すらも塗り潰す脅威。
名を――
『天災』
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そして彼女達は先程までアオイ達が居た場所から見下ろす......
「おー、派手にやってるのじゃ」
「派手、否定、先輩の方、派手」
「クククッ、そうかの?まぁ許すのじゃ久しぶりの姿だったのじゃからついはしゃぎすぎたのじゃ」
「危険、獲物、気付く」
「そこは大丈夫なのじゃ、なんせ生命反応がある奴は全員殺してやったのじゃ」
「......」
「はいはいわかったのじゃ、じゃぁ後は作戦通りに頼むのじゃ」
「否定、私、作戦通り」
「ぐぬぬ......つべこべ言わず早く行ってくるのじゃ!」
「了解」
彼女達は動き出す。
【手紙』に書かれていた通りに......