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第384話 焦るアオイどたばたでピラミッド内部潜入

 「まずい……」


 竜巻が自分達の兵を巻き込み、血の砂煙を上げながら接近してくるのを視界の端で捉えつつ、

 俺はサラサラの金髪の髪を振り乱し、兵隊達を気絶させていく。



 「みんな解ってるの!?あの魔法は君達も巻き込んで__」


 「しねええ!」


 「この!バカちんがぁ!」


 ダメだ!こいつら聞いてない!くそ!

 相手も相手で一向に攻撃の手が緩まない。

 少しでも気を抜くと俺はあの剣や槍に貫かれて死ぬ!



 「くそくそくそ!」


 死ぬ! 死んじまう!

 雨のように魔法や武器が飛んでくるせいで、通信の暇すらない……つまり、自分でどうにかするしかない!


 考えろ、俺……! 考えろ!


 襲いかかる敵を気絶させ、糸で拘束しながら竜巻との距離を取ろうとする……が、足はまるで進まない。

 後ろから感じるあの風圧、もうすぐ背中に届く――!


 「退いて! 邪魔っ!」


 竜巻の気配を背に受けながら、体中に冷や汗が噴き出す。

 ……例えるなら、下校中に催してるのにトイレがどこにも無い、あの絶望感!


 ――いやいや、そんなこと考えてる暇じゃねぇ!


 もう目と鼻の先まで、竜巻が迫ってる!

 俺の手持ちの魔皮紙じゃ、アレは止められない!


 万事休すか!?


 ……その時だった。


 地面が“コンッ”と音を立てたかと思えば、青く透明な“クリスタル”が次々と隆起し、俺の周囲の兵たちを下から串刺しにしていく!


 「な、なんだこ、ぐぎゃっ!」


 「がッ」


 「に、にげ――」


 目の前で兵士たちが一人、また一人と突き上げられ、その血が俺に降りかかる。

 それでも俺は、その地獄の光景を直視した。


 「た、助かった……けど、グロすぎ……」


 一歩間違えれば、串刺しになってたのは俺だった。

 でもやっぱり……これはグロい!


 なおもクリスタル串刺し刑(勝手に命名)は止まらず、気がつけば一本の道を“掃き清める”ように兵士たちを排除し、ピラミッドまでの直線ルートが出来上がっていた。


 「ユキさんかな? それともキールさん……? でも、あそこに入らないと、竜巻にやられる!」


 俺はピラミッドに向かって全力で駆け出す。

 途中、魔法で妨害しようとした敵兵も、魔法陣を展開した瞬間――地面から貫かれ、動かなくなった。



 最後にピラミッドの中へと滑り込み、すぐさま振り返ると――

 入り口は、あの青いクリスタルで完全に塞がれていた。


 「……って、僕も閉じ込められてない?」


 外から兵達が来る心配はなくなった。けど同時に、自分も出られないじゃん!


 とはいえ、竜巻からは逃れられたし――ま、まぁ、どのみち今の俺にできることは一つしかない。


 「このピラミッドを調べるか……」


 本来の目的だってそうだったし。

 もし、ここに魔王が居るとしたら――


 「全員に通信した後、救援が来るまで時間を稼ぐ……か」


 【獣人化】しているおかげで、暗い内部でも視界は良好だ。

 敵が居ないとも限らない。慎重に周囲を警戒しながら、俺は奥へと足を踏み入れる。


 ……にしても、あのクリスタル。

 どこかで見たことあるんだよなぁ……うーん、なんだっけなぁ……


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