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第405話 アオイの初パーティー

 「どうじゃったのじゃ?聞けることは聞けたのじゃ?」


 話を終えて、家の外に居るルカの元へ行くと話しかけてきた。


 「いや、正直聞きたいことの9割聞けなかった」


 「む?」


 鏡の中の『俺』は'とある契約'をするとそのまま鏡が割れ、話すことが出来なくなった。


 「元々これをさせるために僕と話させたんでしょ?ルカ」


 「なんのことやらなのじゃ、もう一人のお主はワシ達を動かしてるボスなのじゃ、ワシ達が知るはずもない」


 ルカと話すのにもう不快感はなく、仮面をとっても何も感じない......と言うことは。


 「どうやら僕は契約したみたい」


 某アニメの魔法少女に誘惑する猫みたいな生物に会った訳ではないけど契約したみたいだ。


 「そうか、なのじゃ......ちょっと待っとくのじゃ」


 ルカは魔皮紙を取り出して誰かと連絡をとり始めた。


 内容を聞かれたくないのか、話しながら俺がさっきまでいた家の中に入っていく__



 「……」



 契約内容は俺の記憶にない。


 そこだけ記憶が抜けているのだ......その理由も抜けている。


 「だけど、契約しないとヤバイことになることは覚えてる」


 脅しとかではなく、自分の本意からした契約なのは確信があった。

 そして......


 「契約したことで僕の【勇者】としての力が封印された」


 近くの片手サイズの石を拾い上げて思いっきり力を込めて投げるが石は5メートル程先で力なく落ちた。


 「かと言って普通の女の子よりも低い筋力しかないのは今後困るんだけどなぁ」


 重いもの持てないのは何かと不便だ......と言うかそこらへんの市販の剣とか重すぎて持てねぇ。


 「後はルカがこれからを説明してくれるみたいなんだけど」


 そう言うとちょうどルカが家から出てきた......あ、ドアの立て付け悪いから苦戦してる。


 「壊さないでねー」


 やっとドアを閉じた後ルカがキリッとした顔で来た。


 「ご、ごほん……では、非力になったお主をお世話するパーティーを紹介するのじゃ」


 「なるほど。確かに、“お世話される側”になりそうだ」


 鼻につく言い回しだけど──正直、ちょっとワクワクしてる自分がいる。


 これまで固定のパーティーを作らなかったのは、俺の中にいる“もう一人の俺”のせいで、誰かに迷惑をかけるかもしれないと思ってたからだ。


 でも、今回紹介される連中は、その“俺”の存在も理解した上で接してくれる人たちだ。

 ……なら、きっと大丈夫なはずだ。


 「まずは……あやつか」


 ルカが呼びかけると、奥の闇から一つの影がこちらへ歩いてくる。


 ――少女だった。


 夜だというのに、腰まで伸びた白髪がやわらかく光を放ち、歩くたびにその髪がさらさらと揺れる。


 俺の目の前まで来ると、彼女は静かに足を止め――そして、


 「……えっ」


 なんと、その場でひざまずき、頭を垂れた。


 しかも、あの綺麗な髪が地面につくのもお構いなし。まるで忠誠を誓う騎士か、どこぞの従者のような……。


 イエスマイロードとか言いそうな勢いなんだけど!?


 「ち、ちょっと!」


 「『みや』とぃいます。ぁなた様のお付きとして命を捧げます」


 うわ!まじで言っちゃったよ!えぇ......てか!今名前なんつった!?なんかどっかで見たことあると思ったらこの子まさか!


 「リュウト君のパーティーの!?」


 「っ!」


 「そうだよね?あの時、通信魔皮紙に少し写ってた」


 「私の事はぃじょうです......」


 何?触れちゃいけない系の過去だったかな?


 「こら、みや。アオイが聞いてるのじゃ、答えるのじゃ」


 「っ!!!」


 「あ、いやそんな無理しなくても」


 「ごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃ」


 「うえぇ!?」


 みやちゃんはかなり震えた声で俺の目の前で地面に頭をつける程土下座をして謝りだした......何したのこの子に!

 待て、落ち着け......こう言うときは! 


 「えーと、落ち着いて頭をあげて?いや、あげなさい」


 「は......ぃ」


 うわ、この子目に涙を浮かべてこっち見てる。


 「いつか話したいときに話してくれれば良いからね?ほら。たって?綺麗な髪が汚れちゃうよ」


 「ぁりがとうございます......」


 「うんうん、ルカ、あんまり恐がらせないでね」


 「いや、ワシじゃなくどちらかと言うとお主の......もう一人来たのじゃ」


 「え?」


 そういってルカの視線は俺の後ろ上に向いたと思ったら。




 ドーーーーーーーン




 と上から降ってきた。


 「え!?なにごと!?」


 俺が振り返り見ると......スーパーヒーロー着地姿をしている漆黒の鎧を纏いし者【リン】こと『エス』が居た!うわ!


 「エス!!!エスエスエスエス!久しぶり!」


 「__っ!!」


 俺はたまらずエスを抱きしめた。


 「いやー!なつかしい!元気してた?少し背が伸びた?いつ以来だっけ?もうそんなこといいか!久しぶり!というかここにきたって事は!」


 「あ、あぁ、俺もお前を護る」


 「まじかよ!頼もし!」


 うわぁ、なんだろ!懐かしいいぃ、知ってる人いるし良かったぁ......と言うかエスも俺の事情知ってたのか、それだとあの時ミクラルに居たのも都合がつく。


 「アオイ、久しぶりの再開も良いがそろそろ離してやるのじゃ、もう一人がそろそろ到着するみたいなのじゃ」


 「え?うん」


 俺はエスを解放する......もうここまで戦力揃ってるのにまだいる?てかこの人達を超える人とか現れないだろ、出る順番ミスったんじゃない?もはや知らない人が来たら逆に誰?ってなって雰囲気が..................










 おいおいおいおいおい!まじかよ!











 「紹介するのじゃコイツは」


 「アバレー王国代表騎士のムラサメさん!?」


 ルカの隣にはいつの間にか冒険者の憧れである謎の仮面の騎士事、アバレー代表騎士の姿があった!うそだろおい!いやいやいやいやいやいやいやいや!


 「な、なんであなたが」


 「なぜ?おかしなことを言うですぞ!」


 「お、おかしなこと?」


 「ここに来てると言うことはもうお分かりですぞ?つまり!わたくしはあなた様に命......いや、魂すら......いや!身体も全て捧げてお護り致しますですぞ!」


 「ええええぁええええ!?」


 目の前の俺より実力も身分も上の人が!?

 みやちゃんと同じように忠誠を誓うポーズをとった!?

 嘘でしょおおおお!?


 「一体『僕』はどんだけネットワーク繋げてるんだ」


 「そして、ワシなのじゃ」


 ルカはそういうとみんなムラサメさんの横並び膝をついて忠誠を誓うポーズをした......うわぁ、何これ、何この状況。


 「ワシらは全員これからお主を護るために全力を尽くしますのじゃ」


 「は、はは......よろしくね......」


 苦笑いしかでない、一体『俺』はどんな教育してたんだ。

 何と言うか、「僕が死ねと言ったら死ぬの?」って聞いたら迷わず肯定されそうな雰囲気の人達だ......てか、みやちゃんに至ってはまじでもう死にそうなくらい恐がられてるし。


 「とりあえずみんな頭をあげて立って?」


 軍隊のようにみんな言うことを聞く......うわ、やりずらい!なんかこう、俺はこういうの苦手なんだよな。


 例えるならめちゃくちゃ怒鳴り散らす上司と思われるより普通にみんなから慕われて飲み会誘われるような上司になりたい。


 「ごほん、えー......っと」


 みんなこっちを見てくる。










 「とりあえず、今度飲み会しよっか」








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