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第416話 ルカ情報収集

 《セクシアル村》


 「しっかし、気味の悪い村なのじゃ……どこへ行っても、子供、子供、子供、子供、子供、子供!」


 アオイと別れた後、ルカは一人で村中をくまなく歩き回っていた。


 「ここら辺が子供の多いエリアなのじゃ? ……いや、それにしてもじゃ。

  この村、そんなに広くもないのに──」


 そう、異様なのだ。

 村を歩けば、あちこちで獣人と人間の子供たちが仲良く遊んでいる。

 最初は微笑ましく見えたその光景も、よく見れば不自然すぎる。


 「大人の数に対して、子供の数が圧倒的すぎるのじゃ……」


 ルカの感覚では、大人一人に対して子供三人以上の比率になっている。

 しかも、建物の裏や奥のほうからも、途切れることなく子供の声が聞こえてくる。


 「ふむ……考えられるのは、魔族が種族の繁栄を優先して、子供を大量に産んでいるということなのじゃが……

  しかし、それなら今までの長い年月の中で、もっと増えていてもおかしくはなかったのじゃ……」


 ルカがそんな風に思案していたその時──


 「お姉ちゃん、あそぼー!」


 「む?」


 ふいに、背の低い女の子が一人、ルカに声をかけてきた。


 「ぼーる遊び、しよっ!」


 「ぬぅ……すまぬのじゃ。今はそれどころでは……」


 「……ふぇ……」


 ぷるぷると唇を震わせ、今にも泣きそうな顔になる少女。


 「ま、ま、まつのじゃっ……!」


 「うぅ……」


 ルカは慌てて周囲を見渡す──が、周りの大人たちからは、冷たい視線が返ってくるばかり。


 (な、なんなのじゃ……遊んでやらないと、“悪い大人”扱いされる空気なのじゃ!?)


 「ぐぬぬ……これ以上目立つとまずいのじゃ……そうじゃ! お主、これを見よ!」


 ルカは足元に転がっていた、何の変哲もない手のひらサイズの石ころを拾い上げた。


 「ふぇ?」


 「よ〜く見るのじゃ……ほれっ!」


 ルカがその石を手のひらで包むと、目の前でみるみる色と形が変わっていく。


 「わぁっ!すごーい!」


 最後には、太陽の光をきらきらと反射する、漆黒の美しいクリスタルへと変化した。


 「これをお主にやるのじゃ。ワシは忙しいのでな、これで勘弁してほしいのじゃ」


 「ほんとに!? やったー! うん、いいよ! お母さんに見せてくるー!」


 そう言って女の子は嬉しそうに駆けていき、母親のもとへ戻っていった。


 ──ふと気づけば、さっきまでルカに冷たい視線を向けていた村人たちも、すでにそれぞれの作業や遊びに戻っていた。


 「……いったい、あの雰囲気は何だったのじゃ? まぁ、何とかなったからよしとするのじゃ。ふぅ……」


 「お姉ちゃん!」


 「うおっ、どうしたのじゃ? もう戻ってきたのか」


 「これっ! お礼にあげる! あまくておいしいの!」


 少女の手には、魔皮紙のコップ。中には、アオイが飲んでいたのと同じ──

 ピンク色の、ドロッとした液体が入っていた。


 「おぉ……たしかに、少し喉が渇いておったのじゃ」


 「はいっ!」


 嬉しそうに手渡されたその飲み物を、ルカは素直に受け取り──


 「ん……ゴク、ゴク……ぷはっ!」


 一気に飲み干すと、空いたコップを自分の魔皮紙にしまい、再び歩き出す。


 「しっかし……他に何か手がかりが――…………ッキャウッ!?」


 何の前触れもなく、それは起きた。

 村の広場で遊んでいた子供たちが投げたボールが、ルカの足に軽く当たった。

 ただ、それだけの出来事のはずだった。








 「くっ……イ……!!!!!」




 突如、ルカの全身に走る異常な震え。

 肩がビクリと跳ね、膝が砕けるようにその場に崩れ落ちる。


 「っ……ぁ……な、なんじゃこれは……ッ」


 全身がビクビクと痙攣し、力が入らない。

 そして、はっきりとわかる──


 これは、何かを“感じさせられた”反応だった。


 ただの衝撃でこうはならない。

 触れただけで、まるで“快楽”のような電流が脳を直撃したような……そんな錯覚。


 「っは……はぁ、はぁ……っ……なんじゃ……これ……」


 周囲の子供たちは、何事もなかったかのようにボールを追いかけて笑い合っている。


 ルカだけが、世界から取り残されたように、その場で震えていた。




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