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第442話 整理整頓!これから!

 「ここまでで、質問ある人ー!」


 そう言うと、見事に三人が同時に手を挙げた。


 ……うん、そりゃそうだよね。

 とりあえずお酒をひと口……っと、じゃあ順番に捌いていきますか!


 「はい、じゃあルカから」


 「その話じゃと──今回の件で【神】はワシらの“敵”になった、ということじゃな?」


 「確かに、今回初めて僕は……この服の【糸】を通して神に身体を操られた。

  普通に考えたら、敵って思っちゃうよね」


 「のじゃ?」


 「でも、こうも思えるんだ……

  “どうしても、そうする必要があったんじゃないか”って」


 「つまり、ロビンとやらを殺す必要があった……ということなのじゃ?」


 「うん。僕はそう思ってる。

  それには【勇者】と【魔王】の関係が絡んでるんじゃないかって」


 「ふむ?」


 「──あれ? そういえば……僕が異世界から来てるって、知ってたっけ?」


 「今更なのじゃ」


 「今更ですぞ」


 「今更だな」


 「お、おぅふ……話が早くて助かるよ。

  僕の世界では、【魔王】を倒すのはいつも【勇者】なんだよね」


 「お主の世界の勇者とは、どんな存在だったのじゃ?」


 「あ、ごめん、それ……ゲームの話なんだけど……」


 「ゲーム? なのじゃ? すまぬが、人間になったばかりで、そこら辺はまだ疎いのじゃ」


 「ゲームと言えば……ミクラル王国で言うところの“チェス”でしょうか」


 「チェスあるんだ」


 「アバレーで言うと、“将棋”みたいなものですぞ?」


 「将棋あるんだ……。

  まぁ、よくよく考えると、僕もカジノで奴隷やってたことあるし──」


 「──あっ! テレビゲームって誰か知ってる!?」


 「……」


 「……」


 「……」


 「あ、うん……知らないのね……。

  えーっと、勇者の話だよね。僕の世界では……」




 ──あれ? ここまで話してて思ったけど、これって……失礼じゃない?


 俺の世界には魔物なんていなくて、勇者なんて“ゲーム”でしか存在しない。

 そんな説明聞かされたら、彼らはどう思うんだ? 馬鹿にされてるって思わない……?


 今更だけど……ちょっとそういう気がしてきた。




 うーーーーーーーーーーーーーーーん……

 うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん……




 「ぼ、僕の世界の勇者は……将棋ゲームに例えると、“王”だね!

  周りのみんなを動かして、時には自分も前に出たりするんだ!」




 ──うん! 我ながら、チグハグだな!




 「なるほどなのじゃ!」


 あ、この人納得してくれた。


 他の二人も、なんとなく理解しようとしてくれてる……っぽい。


 まぁ異世界の話なんて、今みたいに“嘘つき放題”だもんなぁ。

 あんまり深掘りされないように気をつけよう……。


 「それで? それとこれと……何が関係あるのじゃ?」


 「さっきの説明からすると──

  “王”は【勇者】で、“相手の王”が【魔王】。

  そして“王は王でしか取れない”と仮定したら──

  【勇者】である僕を、神は“駒”として動かす必要があった」


 「なるほどなのじゃ。

  でも結局、とどめを刺したのはお主じゃないのじゃろう?」


 「うん。そこで──さっきのムラサメさんの話に繋がる。

  もう1人の“僕”──つまり“女神”が、神の操作に“抵抗”したんだ。

  駒である僕を、“別の手”が操った。それが異常事態」


 「つまり、盤上がぐちゃぐちゃになったのじゃ?」


 「うん。そして、盤上の全てのルールを無視して叩き込まれた一手、それが──【神の一撃】」


 「【神の一撃】……ほほう」


 ……うん、自分で言っててちょっと恥ずかしいネーミングだったな。


 「それをしなきゃ行けないほど、あの状況は異常だった……とも考えられる。

  だとすれば、神は僕に魔王を倒させたいだけで“敵”と断定するのはちょっと違う気がしてね」


 「確かに、本気で敵と見なしていたなら──

  お主の【糸】を完全に消していたはずじゃ。

  微弱とはいえ、まだ力を貸してくれている……」


 「そう、それが僕の考え──理由はそんなとこかな」


 「……分かったのじゃ」


 「それじゃあ、ムラサメさんは?」


 「はいですぞ。我が君──まずは吾輩の油断により、お手を煩わせてしまったこと、まことに申し訳ありませんでしたですぞ!」


 「ま、まぁ……あれは仕方ないよ。

  相手は《龍牙道場》の究極奥義を使うほどの人だったし。

  技のキレも反応も何もかも完璧で、何が来るか知ってなきゃ対処は無理だよ」


 ……うわぁ、なんか偉そうだな俺。

 でもムラサメさん相手には、ちょっと偉そうに言った方が納得してくれるから、話がスムーズに進むんだよな。


 「は、はいですぞ……!」


 ムラサメさんはこくこくと頷き、それから話を続ける。


 「それで──吾輩たちが気絶し、ルカ殿が瀕死となった間、我が君は戦い続けていた。

  その際、『女神の魔法』を使用された……とおっしゃっておりましたですぞ?」


 「……うん」


 アイさんと戦っていた時、俺の中で“怒り”が抑えきれなくなった。

 よく分からないけど──あれは明らかに『怒り』がトリガーになったんだ。


 「その魔法……今でも使用可能なのですぞ?」


 「うん、使えるよ。

  あのときの感覚、ちゃんと覚えてる。

  僕の適性魔法『魅了』を使う時と、すごく似てたからね」


 「そうですぞか……。では、あの魔法の能力は──」


 「“僕が受けたダメージと同じ苦痛を、相手が“意思して”受ける”ってやつだよ」


 「ふむ……なるほど。であれば、あまり出番はないかもしれませぬですぞ」


 「ん? どうして?」


 「なぜなら……! 今後は吾輩が、断じて油断せず!

  我が君を──決して傷つけさせぬよう守り抜くからですぞ!!」


 「う、うん……頼りにしてるよ」


 「おおおおぉ……!! 我が君……!!

  そのお言葉……! この吾輩めに……!

  再び、忠義の機会をお与えくださるとはですぞおぉぉ!!」


 ああ……また号泣してるな、たぶん。

 仮面だから見えないけど、ほぼ確実に大泣きしてるやつだ、これ。


 「えーっと、最後にエス」


 「俺から聞きたいのは一つだ、これからどうする?」


 これから、か。

 ロビンの話を聞いている時からそれは決まってる。


 「うん、それはもう決めてる」









 「僕達は魔神に会いに行く」















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