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第445話 体調良くなった!

《数日後》


 朝日がのぼり、空気がじわじわと熱を帯びてくる昼前──

 時間にして、たぶん11時頃。


 俺は、いつもの装備に身を包んでいた。




 「よし……完璧!」




 体調も万全! 気分も良し!




 現在、家にいるのは俺だけ。

 他のみんなはそれぞれ用事で出ていて、今は自由行動だ。




 「一応、通信用の魔皮紙は預かってるから、

  連絡を取ればすぐ来てくれるらしいけど……」




 基本的には、各自自由に動いていていいらしい。

 人手が足りなくなった時や、何かあった時は呼び出しが来る。

 ……うん、チームで動いてるって感じがして、なんか嬉しいな。




 「ふふっ……こうやって、自分の目標に向かって、

  みんなで力を合わせてるって、いいよね」




 ──まぁ、動こうとした矢先に体調崩して、

 一週間くらい寝込んでたんだけどね!


 そこは……気にしない。女になった代償ってやつだ。




 「さて……やることは山積みだけど、

  まず最初にやるべきは……“アレ”だよね」




 ……そう。

 この間、“怒りに任せて”やっちゃったこと──




 エスに謝らなきゃ。




 思い出すたび、後悔で胃が痛くなる。

 なんで、あんなことで怒っちゃったんだろ……?




 ちなみに、エスはあの日、顔を真っ赤にしてそのままどこかへ行ってしまった。




 その日はイライラしてて気にも留めてなかったけど──

 今になって考えると、もう少し言い方とか……

 オブラートに包んで教えてあげるべきだったなぁって……。




 「……ほんと、つまらないことで怒っちゃったなぁ」




 でも、ふと思う。

 そもそも、ああいう“女の体のこと”って、誰が教えるんだろう?




 「やっぱり、親が教えるのかな……?」




 まぁ、考えたって仕方ないか。

 エスみたいなタイプは、お酒も飲まないしあんまり喋らないから、

 本当のところが分からないんだよなぁ。




 俺の記憶をたどって思い出すのは──

 あんな風に固くなる前の、あの子の姿。




 リンの……あの、優しい笑顔。




 「あんなに、あったかい笑顔を見せてた子だったのに……」




 でも──人は変わる。

 奴隷商で、何があったのかは分からないけど、

 ……俺も、それを身をもって経験した。




 だからこそ、

 今のエスを、ちゃんと見てあげたいって思う。


 「僕が……あの時のことを聞かれたくないように、

  エスだって、聞かれたくないよね。

  だから──今のエスをそのまま受け入れるのが一番いいな」




 ──うん、そう決めた。


 「……てことで! 考えよう!」




 うーん……これまでのエスの行動で、何かヒントはなかったかな……




 「……待って。僕、もしかして……エスのこと、何にも知らない……?」




 思い返せば、仕事が終わるといつも真っすぐどこかへ行ってしまうし、

 この前の飲み会だって、たぶん俺の“方針確認”のために仕方なく参加しただけ。

 エス自身のことは、全然分かってない。




 「……よし。ならば“知る”ところから、始めよう」




 俺は魔皮紙を取り出して、エスへの通信を開いた。






 「{もしもし、エス? ちょっと……付き合ってほしいんだけど}」

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