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第456話 リュウト達の前に現れたのは武神

 《リュウトパーティー》


 「リュウトっ!」


 「ん、みや……どうした?」


 昼下がり、曇り空の下。

 川のほとりの大岩に寝転がって空を見上げていたリュウトに、みやが声をかけてきた。


 「どうした、じゃないよっ。リュウトこそ、こんなところでボーッとして……」


 「いや、ちょっとな……」


 みやの顔を一度見てから、リュウトはまた空へ視線を戻す。


 「…………よいしょっとっ」


 みやは岩に腰かけて、リュウトと並んで曇り空を仰ぐ。


 「…………」


 「…………」


 空を流れる雲は、どこまでものんびりと、ゆるやかに流れていた。


 「神の使徒の言葉、気になってるのっ?」


 「…………ああ」


 「“魔王を倒したって報告はもういい”とか、“あの女王には近づかず、時が来るまでひっそり暮らせ”……だっけ?」


 「…………」


 「ううん、別に私が“元魔王”で、“神の使徒が嫌い”だから言うわけじゃないけどっ」


 みやはそっと笑った。


 「リュウトがあの女王に会いたいって思ってるなら、会えばいいよっ? リュウトはリュウトのしたいようにすればいいっ。……私たちは、それにちゃんとついていくからっ」


 「……フフッ、そうか」


 「うんっ!」


 空を見上げながら、ふたりは微笑み合う。


 そんな穏やかな時間を破るように、奥から明るい声が響いてきた。


 「リュウト様〜! 見てください〜!」


 声とは裏腹に、どこか子どもっぽさを残した無邪気なトーン。


 「……ユキ!? な、なんだその格好はっ!?」


 そこにいたのは――

 際どい水着姿の、金髪の大人ユキちゃんだった。


 「アンナさんが、これを着て行くとリュウト様がよろこぶって……!」


 「アンナさんめ……!」


 「……イヤでしたか?」


 大人びた雰囲気のユキが、少しだけ潤んだ瞳でリュウトを見上げる。


 均整の取れた身体には無駄がなく、胸のサイズこそ控えめだが、形の美しさと透き通るような肌が妙に艶めかしかった。


 「ロリコン……」


 「ち、違うぞ、みや!」


 「ロリコンってなんですか?」


 「っ、いや、それよりもだ!ユキ、その姿は戦闘用だろ?普段は戻ってろ!」


 「はーいです~」


 ユキの身体が光に包まれ、みるみるうちに幼い姿へと戻っていく。だが――


 「うわぁぁぁぁっ!? それはそれでマズい!!」


 「?」


 大人の水着を着ていたユキは、身体が縮んだことで水着が脱げ落ち、完全に真っ裸になってしまったのだ!


 「は、早くテントに戻れ!そしてちゃんと服を着てくるんだ!」


 「はーいです~♪」


 トテトテと裸のままユキが走って行くのを、リュウトは見ないように顔を背ける。


 「……やっぱロリコン」


 「だから違うってば!」


 「ふふっ、冗談だよっ。でもね、アンナもアカネも、みんなリュウトのこと心配してるんだよ?」


 「…………」


 「だから……ね?」


 「……はぁ。分かったよ。けど、どうなっても知らないぞ?」


 「今さらだよっ」


 「みんなに伝えてくれ。俺たちは今から――」


 その瞬間、空気が凍りつく。刹那、リュウトとみやの身体が反射的に戦闘態勢へと移る。


 「――っ!」


 「誰っ!?」


 「おいおい、殺気を出すまで気付かねぇなんて、本当に魔王を倒した勇者様か?」


 嘲るような声とともに現れたのは、短くまとめたオレンジの髪を持つ、鋭い眼光の男だった。年は三十前後、無駄のない筋肉質な体をした男が腕を組んで立っていた。


 「お前は……!」


 「久しぶりだな、ランスのガキ」


 「トミー……!」


 そこにいたのは――《六英雄》のひとり、トミーだった。






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