《リュウトパーティー》
「リュウトっ!」
「ん、みや……どうした?」
昼下がり、曇り空の下。
川のほとりの大岩に寝転がって空を見上げていたリュウトに、みやが声をかけてきた。
「どうした、じゃないよっ。リュウトこそ、こんなところでボーッとして……」
「いや、ちょっとな……」
みやの顔を一度見てから、リュウトはまた空へ視線を戻す。
「…………よいしょっとっ」
みやは岩に腰かけて、リュウトと並んで曇り空を仰ぐ。
「…………」
「…………」
空を流れる雲は、どこまでものんびりと、ゆるやかに流れていた。
「神の使徒の言葉、気になってるのっ?」
「…………ああ」
「“魔王を倒したって報告はもういい”とか、“あの女王には近づかず、時が来るまでひっそり暮らせ”……だっけ?」
「…………」
「ううん、別に私が“元魔王”で、“神の使徒が嫌い”だから言うわけじゃないけどっ」
みやはそっと笑った。
「リュウトがあの女王に会いたいって思ってるなら、会えばいいよっ? リュウトはリュウトのしたいようにすればいいっ。……私たちは、それにちゃんとついていくからっ」
「……フフッ、そうか」
「うんっ!」
空を見上げながら、ふたりは微笑み合う。
そんな穏やかな時間を破るように、奥から明るい声が響いてきた。
「リュウト様〜! 見てください〜!」
声とは裏腹に、どこか子どもっぽさを残した無邪気なトーン。
「……ユキ!? な、なんだその格好はっ!?」
そこにいたのは――
際どい水着姿の、金髪の大人ユキちゃんだった。
「アンナさんが、これを着て行くとリュウト様がよろこぶって……!」
「アンナさんめ……!」
「……イヤでしたか?」
大人びた雰囲気のユキが、少しだけ潤んだ瞳でリュウトを見上げる。
均整の取れた身体には無駄がなく、胸のサイズこそ控えめだが、形の美しさと透き通るような肌が妙に艶めかしかった。
「ロリコン……」
「ち、違うぞ、みや!」
「ロリコンってなんですか?」
「っ、いや、それよりもだ!ユキ、その姿は戦闘用だろ?普段は戻ってろ!」
「はーいです~」
ユキの身体が光に包まれ、みるみるうちに幼い姿へと戻っていく。だが――
「うわぁぁぁぁっ!? それはそれでマズい!!」
「?」
大人の水着を着ていたユキは、身体が縮んだことで水着が脱げ落ち、完全に真っ裸になってしまったのだ!
「は、早くテントに戻れ!そしてちゃんと服を着てくるんだ!」
「はーいです~♪」
トテトテと裸のままユキが走って行くのを、リュウトは見ないように顔を背ける。
「……やっぱロリコン」
「だから違うってば!」
「ふふっ、冗談だよっ。でもね、アンナもアカネも、みんなリュウトのこと心配してるんだよ?」
「…………」
「だから……ね?」
「……はぁ。分かったよ。けど、どうなっても知らないぞ?」
「今さらだよっ」
「みんなに伝えてくれ。俺たちは今から――」
その瞬間、空気が凍りつく。刹那、リュウトとみやの身体が反射的に戦闘態勢へと移る。
「――っ!」
「誰っ!?」
「おいおい、殺気を出すまで気付かねぇなんて、本当に魔王を倒した勇者様か?」
嘲るような声とともに現れたのは、短くまとめたオレンジの髪を持つ、鋭い眼光の男だった。年は三十前後、無駄のない筋肉質な体をした男が腕を組んで立っていた。
「お前は……!」
「久しぶりだな、ランスのガキ」
「トミー……!」
そこにいたのは――《六英雄》のひとり、トミーだった。