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第457話 1体1


 「あぁ?……おい、てめぇに名前を名乗った覚えはねぇんだけど?」


 「こっちは苦い記憶が残ってる……調べてさせてもらった」


 「へっ……人間からかき集めた情報なら、肩書きと伝説くらいは拾えるか」


 「……あぁ。英雄譚は美化されるもんだからな」


 「チッ、反吐が出るぜ……あの頃は“暴れ場”があるって話に乗っかって手伝っただけだ。遊びのつもりが、気づきゃこのざまだ……」


 トミーが手の甲を掲げる。光とともに浮かび上がるのは《六英雄》の紋章。


 「で? なんで今さら俺の前に現れた?」


 「あぁ? 決まってんだろ」


 トミーが地面から適当に拾った木の枝を握ると――

 瞬時に、それはリュウトのレイピアと同型の武器へと変貌する。


 「“てめぇを殺す許可”が出たから、殺しに来た」


 「させないっ!」


 リュウトの前に立ち塞がるみや。両手を広げて、彼を守ろうとする。


 「あ? てめぇ……」


 「リュウトは……ここで死ぬような存在じゃないっ!」


 「へぇ? “存在”じゃねぇ? だったらどうする気だ?お前ごときが前に出て、何か変わると思ってんのか?」


 「…………」


 「……いい、みや。下がってろ」


 「!? リュウトっ……」


 「みんなも隠れるな。もう意味はない」


 その声に応じて、岩陰からパーティーメンバーたちが姿を現す。

 ユキ以外、全員が武器を構えていた。


 「動かなくていい。こいつは……最初から気づいてる。下手に攻撃した奴から順に殺されるだけだ」


 「……ようやく話が通じる奴になったな」


 「…………」


 「……この場所じゃ狭ぇな。変えるぞ」


 「……あぁ」


 「お前らは、ついてくんなよ?」


 トミーは手に持ったレイピアを、みやの足元へと無造作に投げ突き刺す。

 ――それは“リュウトだけ来い”という、無言の合図。


 「……」


 「…………」


 トミーが無言で歩き出す。それに続いて、リュウトも静かに歩き出した。


 「……なぁ」


 「んだよ」


 「なぜ……あの時、俺を見逃した?」


 「は?」


 「……あの時の俺は弱かった。殺すなら、簡単だったはずだ」


 「……おいおい、殺すのに“今”とか“昔”とか関係ねぇだろ。結局、やるかやられるか……それだけだ」


 「…………」


 「――この辺りでいいか」


 トミーが地面に転がる石を拾う。その石は形を変え、無骨な金棒へと変化する。


 リュウトもレイピアを構え、深く息を吐いた。


 「……あーおい、全力で来いよ。手ぇ抜いたら、死ぬぞ」


 「行くぞ、《六英雄》――!」


 リュウトが地を蹴った。

 踏み込みとともに、レイピアが突き出される!









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