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第478話 目指すべき場所

 「ごちそうさま〜。美味しかったわ〜」


 「おそまつさまでした」


 朝食を終えたアオイたちは、ウジーザスたち六英雄の能力を共有し合い、それぞれの対応方針も固めていた。


 「ちょっと待っててねっ!」


 アオイは気合いを入れて、指をパチンと鳴らそうとした――が、ちょっとスカった。

 しかしそのまま誤魔化すように《神速》を発動し、一瞬でお皿、机、椅子を片付けてみせた。


 「はい、お待たせっ」


 「それ……神速使わなくても良かったんじゃ〜?」


 「これたまこ、アオイはまだその力を得たばかりじゃ。いちいち使っておるのは、身体に馴染ませるためじゃな?」


 「え? あ、う、うん……そうです、そういうことですっ!」


 ――本当はちょっとカッコつけたかっただけ。

 でも、思ったより反応が薄かったので、内心ちょっと恥ずかしくなったアオイであった。


 「あー……えっと、準備できてたら……そろそろ出発しよっかっ!」


 「「……」」


 ……沈黙。


 話を早く切り変えようとしたが、もっと恥ずかしい空気が襲ってきた。


 「あの〜」


 「は、はいっ?」


 「行き先、わかってるの〜?」


 「……あ」


 アオイの顔が真っ赤に染まる。


 「そ、そそ……その……ど、どこに行けばいいんでしょうかっ……」


 涙目になりながら、か細い声で師匠とたまこを交互に見つめる。


 「……あらあら〜」


 「……ホッホッホ」


 その場に流れる、なんとも言えない“優しい苦笑”。


 「紋章の力で共通するものがひとつあるの〜。それが、これよ〜」


 たまこが手の甲の紋章を淡く光らせ、コツ、コツ――と二度叩く。

 次の瞬間、空間に薄膜のような映像が開き、青白い光の地図が浮かび上がった。


 「……真似してみるね」


 アオイも同じ所作をなぞる。紋章が脈打ち、目の前にもう一枚の地図が投影される。


 「……っ!? これは――」


 「驚いた〜? 人間の世界では完成していない……世界地図よ〜?」


 アオイは言葉を失う。

 驚きは“世界地図”じゃない。描かれている“かたち”だ。


 (嘘でしょ……元の世界と……まったく一緒!?)


 大陸の稜線、海の配置、緯線・経線の刻み――誰もが見慣れた“地球”のそれ。

 違うのは、この世界での呼び名だけ。


 「そして〜私たちが目指す六英雄の拠点はここよ〜」


 たまこがアオイの地図と連動するように、中央の大海へと伸びる弧状の列島にピンを落とす。

 そこに浮かんだ名称は――


 「え!? ここって!」


 「そう。人間でも魔族でも、この大陸はこう呼ばれてるわ〜……《神の島》って」


 静かに息を呑む。視界の中で、島影がくっきりと連なった。


 「……日本じゃん……」










 ピンが刺されたのは両隣に大きな大陸に挟まれた小さな大陸……アオイ達の世界でいう所の《日本》だった。









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