「問題は――行き方なのよね〜」
たまこがふぅと息を吐きながら、映像をスッと閉じて腕を組む。
「えっと、今までってどうやって行ってたんですか?」
「う〜ん……私が継承した時には、もうその拠点は使われてなかったのよね〜」
「儂らの時代は、召集がかかったらレナノスのような影移動ができる者が“迎え”に来ておったわ」
「迎え、っていうか……俺なんかは強引に“拉致”されてたけどな」
「……なるほど……」
アオイは地図を見下ろしながら呟いた。
映像の中では、自分たちの現在地と“神の島”とされる目的地――その2点にピンが立ち、そこを繋ぐルートまで自動で描かれている。
しかし、距離は尋常じゃない。
「うーん……やっぱ、あの人に頼むしかないか……」
アオイは小声で独り言を呟きながら、腕を組んで考え込んでいた。
「何をブツブツ言ってるの〜?」
「え、あ、いや……ちょっとね。友人に、もしかしたらそこまで行けるかもって人が居て……でも、特殊だから驚かせちゃうかなって……」
「ふふ〜ん?私も勇者のパーティーにいたのよ〜?ちょっとやそっとくらいじゃ驚かないわよ〜?」
「ホッホッホ、何年生きとると思っとるんじゃわしを」
「ちなみに魔法とかじゃないよ?」
「ん〜?じゃあ船かしら?それならまたヒロユキ君たちと合流して《ホワイト団》の船で――」
「船でもないかな?いや“乗る”って意味では合ってるけど!てかホワイト団って何!?」
「ホッホッホ、アオイよ、老い先短い儂らにあまりじらすでない」
「……はぁ、わかりましたよ。ちょっと通信してきますね」
「ごゆっくり〜」
「楽しみじゃのぅ」
そう言いながら、アオイは溜息をついて家の中へ入る。
装備の一部に仕込まれた通信魔法を起動させながら、微妙に苦笑い。
(……ほんとは呼びたくなかったけど……お願いするしかないか)
「{もしもし、ミカさん?}」
{なんだい、我が女神}
「{出るの早っ!?}」
{当然だ。私だけじゃない、全員が君からの通信には即応できるよう細工してある}
「{……それ、逆にプレッシャーなんだけど……}」
{何を言ってる。むしろもっと君の声を届けるべきだ。ムラサメくんなんてこの前『通信が来ないのは成果が足りないからですぞ!あああ許してくだざいですぞ!』って泣きながらリスカしてたぞ、まぁどうでもいいが}
「{いや、それ全然“どうでもよくない”から!?}」
{……で、用件は?}
「{うん、ルカを使わせてほしいんだ}」
{ふむ、それだけか。彼女なら今も他の皆と一緒に六英雄の拠点を探っているが、直接頼めば喜んで行くだろう}
「{一応、ミカさんには先に話しておこうと思ってね。……六英雄の拠点、判明したんだ}」
{な……!?}
「{ごめん、報告遅れた。こっちもいろいろバタバタしててさ}」
{……くく、はは、はははははっ}
「{え、な、なに!?}」
{いや、おかしくてね。こっちは隅々まで探してるのに、君のとこには自然と情報が舞い込む。運命か、女神の導きか……そうか、わかったよ。ルカで行くんだね?}
「{そう。いい?}」
{もちろん。彼女もきっと喜ぶ。全員に伝えておくから、場所は?}
「{いつもの山。家からちょっと離れたとこ}」
{了解。1時間後に到着するよう手配する}
「{ありがとう。助かるよ}」
通信はそれで切れた。
「さて……みんな、行こっか」
______
――そしてその1時間後。
ルカが変身した瞬間、たまこと師匠の2人が__
「「な、なんじゃありゃああああああ!!」」
派手にひっくり返ったのは、言うまでもなかった。