「私は……何してるんだろっ……」
リュウトに「お留守番してて」って言われて……悲しくなって……頭の中がぐちゃぐちゃになって……気づけば、誰もいなくなった近くの公園で、ひとり座って泣いていた。
「こんな、気持ちになるくらいなら封印されてた方がっ……」
……………
――違う。
この感情が……人間なんだ。
「……リュウトっ……」
魔神が怖いわけじゃない。
ずっと胸に引っかかってるの……“何かの悪い予感”……
まるで、死の世界に通じる道を歩いてるみたいな……
「わかんないよっ……リュウト達を行かせたくない……でもっ……」
みんなは行く。
私が何を言ったって……きっと止まらない。
「…………」
――気配。
「……隠れてるのは、だれっ?」
背後の気配には殺気はなかった。
でも……明らかに私を見てた。だから、声をかけた。
「えへへ、バレちゃいましたです」
「ユキ?」
そこにいたのは――ユキ。
私たちパーティーメンバーだが、今回寝ている間にコッソリと置いてきた小さな少女だ。
「ダメじゃないっ、ここに来ちゃ……!」
「ダメじゃないです! みんなの方が酷いです! 嘘をついてユキを置いてくなんて!」
「う……でもっ……」
「でもも何もないですっ!」
「ユキっ、今回は――」
「あれ? そう言えば、リュウトさん達はどこですか?」
「っ! え、えと……」
「悪い予感がするんです! 早く伝えないとです!」
「え……」
「こう……ここで言っとかないと、後に引けなくなりそうな……そんな感じです!」
「私と同じ……?」
「みやさんも感じるですか? じゃぁ、あの人に会ったんですです?」
「あの人?」
「はいです! 肌が白くて、紫の玉がある人です!」
「……?」
「その人がユキのお手手にお絵描きしたら、悪い予感がしてきたんです! だから居ても立ってもいられなくなって、色々なことしてここまで来ましたです!」
「色々っ……?」
「うふふ♪ アンナさんに教えてもらった“色々な事”ですっ♪」
そう言ってユキはアンナに仕込まれた綺麗なウィンクする。
「ユキっ……変な大人になっちゃうよっ……」
「うへへ、それでリュウトさん達はどうしたのです?」
「……」
「?」
「一つ聞かせて、ユキはそれを伝えてどうするの?」
ユキはその質問に迷わず答えてくれた。
「もちろん!一緒に行きます!」
「でもっ、行くと必ず悪い事が起きるんだよっ?」
「だから行くんです!それに、リュウトさんが言ってたんです!」
「な、なんてっ?」
「“ユキは強い”って!」
「それがっ?」
「……昔、ユキはおかぁさん達に無理やりついて行こうとした時にユキと同じ名前のお姉ちゃんに言われたんです……弱いから連れていけないって」
「弱いから……」
私も……リュウトから見たらどうなんだろう……今回も弱いから言われたのかな……
「だから強くなったユキは行く権利があるんです!」
「怖く、ないのっ?」
「?、うーーん……えと……おかぁさんが言ってました!怖いけど立ち向かうのがヒーローだって!」
「ヒーローっ?」
「はい!ヒーローです!ユキはヒーローになりたいので怖くても立ち向かいます!」
「そっか……確かにユキは強いねっ」
ユキは強い……それは戦闘力やそんなんじゃない。
「えへへ、そうです?」
「うんっ、私なんて__」
「みやさんもヒーローです!」
「え……?」
「だって!世界の為にあんな怖い人達やモンスターさん達を顔色一つ変えずにバッタバッタと倒してたです!ヒーローです!」
「私がっ、ヒーロー?……っ」
「はいです!」
「ふふっ」
ヒーロー……魔王の私がっ?あり得ない。
あり得ないけどっ
「なにそれっ、笑えるっ」
不思議と悪い気はしないっ
気がつくと私の頭の中はスッキリしていた。
ユキが無邪気に私の質問を一つ一つ返してくれていたのが私の迷いを取り除いてくれたのだ。
確かにリュウトっ
この子は強い。
「よいしょっ」
私の心は決まった。
「みやさん?」
「行こうっ、ユキ、リュウト達の所へっ」
「はいです!」
私はユキの手を引き海岸へまた戻っていく。
「あ、それと私はヒーローじゃないよっ」
「えっ!」
「私はリュウトのヒロインなんだからっ」
愛してる人の元へ……
リュウト、もしもアナタが私を見てないとしても
私の命はアナタのために……