伽耶は背負っていた酸素ボンベにつながったチューブを取り出して、勝則と自分たちの口に入れて呼吸した。
両親と警官たちは山道を通って滝つぼのそばまで降りてきた。警官がライトをあてて真っ暗な水面を調べた。浮いてきた様子がない。沈んだままで、十分以上が経った。警官が警察署に連絡をした。しばらくすれば消防のレスキュー隊が来るだろう。
伽耶と沙耶は滝つぼの中から水面の明かりを観察し、水面が暗くなるタイミグを見計らっていた。ボンベの酸素が尽きる前に、気づかれないように滝つぼから抜け出した。
三人はずぶ濡れのまま真っ暗な山道を進み、昼間に隠しておいた荷物がある場所にたどりついた。着替えをして髪を乾かし、体を温めた。この夜は勝則が見張りをして、伽耶と沙耶を寝かせた。
伽耶と沙耶が明け方目を覚ますと、見張りを勝則と交代するために声をかけた。二人は勝則の顔色が悪いことに気がついた。昨夜ずぶぬれになって体が冷え、風邪で熱を出したらしい。
「兄さん、昨夜、体調が悪いことを何で言わなかったの?」と沙耶。
「ぼくは何ともないよ」と勝則。
沙耶が勝則の額に手をあてた。「やはり、ひどい熱だわ。」
沙耶と伽耶はテントをたたんで、より目立たない場所に移動してテントを張りなおし、中で勝則を寝かせた。
「しばらくここに隠れているしかないわね」と伽耶。
「勝則兄さん、かなり体が弱っているようだから、無理させないように気を付けましょう」と沙耶。