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第21話 帰宅(1)

 五人は車に乗って帰宅した。家は真っ暗だった。達也は書斎に籠りきりのようだった。


 真知子が書斎のドアをノックした。「大事な話があるの。」


「何だ?」と達也は面倒くさそうに返事をした。部屋にウイスキーのにおいが立ち込めていた。


「伽耶と沙耶と勝則が帰ってきたわ」と真知子。


「冗談はよせ」と達也。


 五人はぞろぞろと部屋に入った。


「父さん、酔ってるの?」と麻衣。


「悪いか?」と達也。


 真知子が窓のカーテンを閉めて明かりをつけた。


 達也は少しまぶしそうにしてから目を見張った。よろめきながら立ち上がり、勝則たちのほうに近づいてきた。


 勝則はあわててドアから逃げ出そうとして麻衣に捕まり羽交い絞めにされた。


 伽耶と沙耶に近づくと震える手で二人の手を取った。「本当に生きているんだな。帰ってきたんだな」と涙を浮かべた。


「ええ」と伽耶。


「帰ってきてくれてありがとう」と達也は二人の肩に手を乗せてもたれかかった。「お父さんが悪かったよ。」


「あなた、大事な話があるの」と真知子。


「何だ?」と達也。


「勝則のことよ」と真知子。


 達也はドアのそばで麻衣に抱きかかえられている勝則を見て状況を理解した。


 全員が気まずくなって沈黙が続き、「リビングで座って話をしようじゃないか。」と達也が言った。


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