「お母さん、それから一つ条件があるの」と麻衣。
「何かしら」と真知子。
「私に勝則の保護者の権利を譲ってほしいの」と麻衣。
「そんなことできないわ!」と麻衣。「あなたは母親でなくて、姉なのよ。たった二歳年上の。」
「私はもうじき十八歳だから、法的に保護者になれるわ」と麻衣。「それに、今まで私が事実上の保護者だったわ。」
「だけど母親の私がいるのよ」と真知子。「それなのに親権を譲れなんて。」
「勝則のことは私に任せてほしいの」と麻衣。「そうすればお父さんとお母さんは仕事に専念できるわ。」
「だけど無理よ、お父さんがいいって言うわけないわ」と真知子。
「そうかしら」と麻衣。「勝則のこと、厄介払いしたがってるような人を父親とは言えないわ。」
「お父さんには、お父さんの考えがあるのよ」と真知子。
「それが信用できないから、私に任せてほしいって言ってるのよ」と麻衣。「また突然、変な学校の人たちが無理やり勝則を連れて行く、なんてことがいつ起こるかわからない状況で暮らせないわ。」
「だから話し合うのよ」と真知子。
「この条件は譲れない」と麻衣。「認めてくれないなら、私もこの三人と家出するわ。」
真知子はしばらくうつむいていた。「お父さんに聞いてみてちょうだい。」