ドアがガチャリと開いて、沙耶と勝則が入ってきた。麻衣が達也と真知子と伽耶に目配せした。
「伽耶がいつまでも戻ってこないから食べに来たわ。」と沙耶。
「ちょっと話し込んでたんだ」と達也。「これでみんな揃ったから、食事にしよう。」
「そうね、早く二人とも座りなさい」と真知子。
沙耶が勝則を自分の隣に座らせた。勝則はひどく鼻水をすすっている。真知子が慌てて食器をテーブルに並べ、麻衣が支度を手伝った。
勝則が黙って食事をする間、他の五人はとりとめのないことを話して家族の団らんを装った。
食事を終えた勝則と、沙耶と交代に伽耶が付き添って部屋を出て行った。
「離婚調停で勝則を押し付けあった話までしたわ」と麻衣。
「その話はもう少し落ち着いてからする予定じゃなかったの?」と沙耶。
「父さんがしつこかったのよ」と麻衣。
「すまない」と達也が頭を下げた。
「もう少し山小屋で過ごすべきだったわ」と沙耶。「兄さん、山小屋ではすごくやさしい顔をしてたもの。」
「ここじゃあ気が休まらないでしょうね」と麻衣。
「さっき父さんの怒鳴り声で目を覚ましたのよ」と沙耶。「出ていくって言いだすんじゃないかと思ったわ。」