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第23話:「竜と共に戦う者に、燃え上がる一杯を」

〜竜騎士とドラゴン・スモーク〜


 扉が開いた瞬間、店内の温度が少しだけ上がった気がした。


 重厚なブーツの音が響く。

 カウンターに腰を下ろしたのは、鎧を纏った竜騎士。


 肩には燃え盛る炎の紋章が刻まれ、背には長槍。

 その眼差しは鋭く、まるで”獲物を見据える竜”のようだった。


 「——火を感じる酒をくれ」


 俺は微かに笑い、棚からボトルを取り出す。


 「ドラゴン・スモーク——竜の咆哮を宿した一杯だ」


 ロックグラスに大きな氷を落とし、

 スモーキーなアイラ・ウイスキーをベースに、スパイスラム、チェリーリキュールを加える。

 そして、仕上げに少量のタバスコを一滴。


 バースプーンで軽くステアすると、琥珀色の液体が炎のように揺れた。

 仕上げに、カクテルピンに刺したチェリーをそっと添える。


 「どうぞ」


 竜騎士はグラスを手に取り、一口。


 「……っ!」


 まず襲いかかるのはスモーキーな香り。

 まるで竜が吐く炎のように、鼻腔を焦がすアイラ・ウイスキーの燻したような風味。

 続いてラムの深いコク、チェリーの甘み。

 そして、最後にタバスコの鋭い刺激が喉を灼くように駆け抜ける。


 「……まるで竜の息吹だな」


 竜騎士はグラスの中の琥珀色をじっと見つめる。


 「俺たち竜騎士は、竜の力を借りて戦う。だが、それはただ力を借りるだけじゃない。

  炎を知り、炎を受け入れ、己の血肉に変える——そうして初めて、竜と対等になれる」


 俺は微笑みながら、カウンターを拭いた。


 「なら、この酒もお前にふさわしいな」


 竜騎士は静かに頷く。


 「……いい酒だ」


 最後の一口を飲み干し、ゆっくりと立ち上がる。


 「また竜の背を降りたら、飲みに来る」


 「待ってるよ。今度は”氷の竜”のための酒も用意しておくか?」


 竜騎士は微かに笑い、扉を開ける。


 外の空には、遠くで赤い影が舞っていた。


 ——今夜もまた、一人の”竜の戦士”に燃え上がる一杯を届けた。

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