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第45話「闇を狩る者に、漆黒の一杯を」

〜怪物ハンターとブラック・ラグーン〜


 扉が開いた。


 吹き込んだのは、獣の血と硝煙の匂い。


 カウンターに腰を下ろしたのは、一人の怪物ハンター。

 革のコートには、無数の爪痕。

 腰には銀の弾丸を詰めた弾帯。

 そして背には、使い込まれた大剣。


 彼は低く呟く。


 「……喉を焼くような酒をくれ」


 俺は微かに笑い、棚からボトルを取り出す。


 「ブラック・ラグーン——闇に生きる者のための一杯だ」


 ロックグラスに氷を満たし、

 ブラックラム、コーヒーリキュール、スパイスビターズを注ぐ。

 静かにステアすると、

 漆黒の液体が深く絡み合う。


 仕上げに、スモークドソルトをひとつまみ。


 「どうぞ」


 怪物ハンターはグラスを持ち上げ、

 じっとその黒を見つめる。


 「……まるで、“夜の湖”だな」


 そして、一口。


 「……っは」


 ブラックラムの重厚な甘み、

 コーヒーリキュールのほろ苦さ、

 ビターズのスパイスが喉を刺す。


 そこに、スモークドソルトの微かな余韻。


 まるで、“血に濡れた夜の狩り”のような味だ。


 「……なるほど、“闇を飲む”とはこのことか」


 俺はグラスを拭きながら言う。


 「今夜の獲物は?」


 怪物ハンターは苦笑し、

 グラスを揺らす。


 「……“喋る”魔物だった」


 「倒したのか?」


 彼は静かに笑い、

 最後の一口を飲み干す。


 「“選ばなかった”だけさ」


 金貨を一枚置き、

 立ち上がる。


 「また来るぜ、マスター。“狩られる側”になってなければな」


 「待ってるよ。その時は、“勝利の一杯”を用意しておく」


 扉が開く。


 彼の背中は、

 まだ“闇の中の戦場”へと続いていた。


 ——今夜もまた、一人の”狩人”に漆黒の一杯を届けた。

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