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3−2 偽りの聖女の正体




公開謁見でのルミナの発言が引き金となり、王宮は激震に包まれた。王家と聖女に対する疑念は貴族や役人たちの間で徐々に広まり、これまで偽聖女を絶対視していた人々の信頼が揺らぎ始めていた。しかし、それと同時に、ルミナには危険が迫っていた。偽聖女とその背後にいる勢力は、彼女を黙らせるための策を練り始めていたのだ。



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ルミナはその夜、王宮で協力を申し出てくれた数人の貴族たちと会合を開いていた。彼女の周囲には、エリオットやカティア、そしてアレックスがいた。部屋の中心に置かれたテーブルには、これまでの調査で集めた証拠の山が並べられていた。


「ここにある記録を見て。」

ルミナは手元の書類を広げ、指を差した。

「これが寄付金の流れの記録よ。一見、正当な用途に使われているように見えるけれど、実際には多額の資金が王宮の外部、特定の商人たちに流れているの。」


カティアが目を細めながら書類を確認する。

「……確かに、この名前は私の知る限り、聖女の個人的な利益に関わる商人たちのものだわ。」


エリオットが口を開く。

「問題は、この事実をどのように公にするかだ。王宮に反発する形になれば、君たちの立場が危うくなる。」


ルミナは深く息をつき、静かに言った。

「私がすべてを背負うわ。これは、私の名誉を取り戻すためだけではなく、この国全体のための戦いよ。」


アレックスが穏やかに微笑み、彼女の肩に手を置いた。

「君は一人じゃない。僕たち全員が君を支える。」


その言葉にルミナは力強く頷いた。



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翌日、ルミナたちはさらに詳しい証拠を集めるために動き出した。カティアは自らの商業ネットワークを使い、偽聖女とその周囲の商人たちの関係を深掘りした。一方、エリオットは王宮の記録室に潜入し、過去の文書を調べ始めた。


アレックスは、隣国の貴族たちと連絡を取り合い、聖女が隣国の資産を狙っているという噂を確認した。その結果、驚くべき事実が明らかになった。偽聖女は王家の力を利用し、国境を越えて隣国の資産や人脈をも取り込もうとしていたのだ。


その夜、ルミナたちは再び集まり、調査結果を共有した。

「これで、彼女がただの偽聖女ではなく、もっと大きな陰謀の一部であることがはっきりしたわ。」

ルミナはテーブルに集まった資料を見ながら言った。

「このままでは国が彼女の策略に飲み込まれてしまう。」



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一方、偽聖女の方も動きを見せていた。彼女はルミナを「国王への反逆を企てる危険な存在」として貶める噂を流し始めた。その噂は貴族や平民の間に広がり、一部の人々はルミナに対して敵意を抱くようになった。


ある日、ルミナが商業地区を歩いていると、数人の男たちが彼女を取り囲んだ。

「お前が聖女様を侮辱した女か!」

彼らは怒りを露わにしながら、ルミナを責め立てた。


しかし、その場に現れたアレックスが冷静に対応し、彼女を助けた。

「彼女は真実を追い求めているだけだ。それ以上、手を出すなら僕が相手になる。」


アレックスの威厳に押され、男たちは退散したが、ルミナは危険がすぐ近くまで迫っていることを実感した。



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その夜、ルミナはカティアとエリオット、アレックスに向かって宣言した。

「これ以上、彼女たちに好き勝手はさせない。私は次の謁見で偽聖女の正体を公に暴くわ。」


カティアが驚いた表情を浮かべた。

「そんなことをすれば、彼女たちは全力であなたを潰しにくるわ。それでもやるつもり?」


ルミナは微笑みながら答えた。

「ええ、それでもやるわ。私が黙っていれば、この国は偽りに支配され続けることになる。それだけは絶対に許せない。」


その決意に、アレックスが深く頷いた。

「僕も君とともに戦う。真実を明らかにしよう。」



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数日後、次の公開謁見の日がやってきた。ルミナはこれまで集めたすべての証拠を手に、王宮へと向かった。彼女の心には不安もあったが、それ以上に強い使命感があった。


広間に入ると、再び王家と偽聖女の姿が目に入った。偽聖女はあの日と同じように微笑みを浮かべていたが、その笑みの裏に潜む焦りをルミナは感じ取った。


ルミナは静かに深呼吸をし、自分の立つべき位置に進んだ。

「今日、私は真実を語るためにここに参りました。」


その声が広間に響いた瞬間、すべてが静まり返った。次の瞬間、ルミナは堂々とした態度で、偽聖女の正体を暴くための戦いを開始したのだった。




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