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3-4 アレックスとの協力

 ルークとの再会と決別を経たルミナは、自らの選んだ道に一層の確信を持つようになった。偽聖女の正体を暴き、王宮を覆う欺瞞を取り払う――その使命感は、彼女をさらに強くし、次なる行動へと駆り立てていた。



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その夜、ルミナはアレックスと二人で計画を練るためにカティアが用意してくれた離れの部屋に集まっていた。暖炉の火が静かに揺れる中、アレックスは机に広げられた地図と書類を見つめながら口を開いた。

「これで、聖女が王宮の財政を私的に利用している証拠が揃った。この寄付金の流れを追えば、彼女が裏で商人たちを操り、さらに隣国の資産にまで手を伸ばそうとしていることも明らかにできる。」


ルミナは静かに頷きながら、彼が指差した地図の地点に目をやった。

「問題は、この情報をどうやって公にするかね。証拠が揃っているとはいえ、偽聖女とその背後の勢力が黙っているとは思えないわ。」


アレックスは少し考え込み、やがて穏やかな微笑みを浮かべた。

「彼らがどれほど反発しても、真実が公になればその影響力は必ず崩れる。だが、公開の場を選ばなければならない。それが一番の難題だ。」



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二人が意見を交わしている中、エリオットが部屋に入ってきた。彼は手に一冊の古びた書物を持ち、それを机に置いた。

「これを見てほしい。この書物は、聖女の選定とその役割について記された古文書だ。王宮の記録室で見つけたものだが、これによると、現在の聖女が示している『神託』の内容は全くの作り話だということが分かる。」


ルミナは驚きながらページをめくった。そこには「神託」が本来、どういった状況で下されるべきかが詳細に記されていた。それを読む限り、現在の偽聖女が用いている「神託」とは根本的に異なるものであり、全てが彼女自身の都合に合わせた作り話であることが明らかだった。


「これがあれば、聖女の欺瞞をさらに証明できるわ。」

ルミナは書物を手に取りながら、力強く言った。



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さらに数日後、カティアが商業地区の商人たちとの会合から戻ってきた。彼女は満足げな表情で、ルミナとアレックスにこう伝えた。

「商人たちの中でも、偽聖女のやり方に反発している者たちが協力を申し出てくれたわ。彼らが集めた情報によれば、寄付金の一部は海外の秘密口座に流れていることが確認された。」


ルミナはその話を聞いて、彼女の心の中で一つの決断が固まった。

「これで十分な証拠が揃ったわね。次の公開謁見の場で、この全てを公にする。」


アレックスが彼女の決意を受け止めるように頷いた。

「僕も君と一緒にその場に立つ。君が証拠を示す時、僕の立場を使ってそれを支えるよ。」



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公開謁見の日が近づく中、ルミナとアレックスは慎重に準備を進めた。彼女たちは証拠を整理し、どのように話を展開するかを細かく計画した。また、カティアとエリオットもそれぞれの役割を果たし、ルミナたちが安全に行動できるよう裏で支援した。


夜、ルミナはアレックスと最後の打ち合わせをしていた。彼女は窓の外を見ながら呟いた。

「この戦いに勝てば、私の名誉は取り戻せるかもしれない。でも、それだけじゃない。この国の未来も変えられる。」


アレックスは彼女の隣に立ち、静かに言った。

「君がこの戦いに挑む勇気を持っていることが、すでに多くの人々を変え始めている。君は一人じゃない、僕たちがいる。」


その言葉に、ルミナは小さく微笑んだ。彼の存在がどれほど大きな支えになっているのか、彼女は改めて感じていた。



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公開謁見を前に、ルミナは自室で静かに準備を整えた。自分の人生を変える瞬間が、もう目の前に迫っている。鏡の前に立ち、自分の姿を見つめる。かつての婚約破棄で失われた自信は、今や完全に取り戻されていた。


「私は負けない。」

その言葉を心の中で繰り返し、ルミナは力強く扉を開けた。






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