目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

3-5  正義の勝利





いよいよ、ルミナたちが計画した公開謁見の日が訪れた。王宮の広間には多くの貴族や役人たちが集まり、偽聖女の行動に対する疑念と、それに真っ向から挑むルミナの発言への関心でざわついていた。これまで「無力な婚約破棄された令嬢」として見られていた彼女が、王宮の中心でどのような行動を起こすのか――誰もが息を飲んでその瞬間を待っていた。



---


ルミナは広間に堂々と足を踏み入れた。彼女の後ろには、アレックス、カティア、エリオットが控えている。その視線は強く、怯むことはなかった。


壇上には国王と偽聖女が立っていた。偽聖女は純白のローブを纏い、広間全体を見渡しながら微笑んでいたが、その瞳には明らかに焦りの色が浮かんでいた。彼女もまた、ルミナがここで何を語るつもりなのか警戒していた。


国王が重々しい声で言葉を発した。

「ルミナ・ヴェリーナ、そなたが本日語りたいことがあると聞いている。この場で発言を許可する。だが、それが妄言であるならば、その責任を負う覚悟があるのか?」


ルミナは深く一礼し、静かに答えた。

「陛下、この場で語ることは、私個人の尊厳のためだけではなく、この国の未来のためでもあります。全て真実に基づいた発言であることを、ここで誓います。」


その堂々とした態度に、広間のざわつきが一瞬止まり、静寂が訪れた。



---


ルミナは手元に持っていた証拠の書類を高く掲げ、語り始めた。

「まず、ここに現在の聖女とされる方の活動に関する記録があります。この中には、彼女が寄付金をどのように管理し、どこへ流しているのかが明確に記されています。」


彼女は手元の書類を広げながら、偽聖女が王宮の財政を私物化し、寄付金を海外の秘密口座に流しているという具体的な証拠を提示した。それを裏付けるカティアの商人ネットワークから得た情報も詳細に説明し、偽聖女の行動がいかに国益を損ねているかを明らかにした。


その場にいた貴族たちの間から驚きの声が上がる。誰もが口には出さないが、これほど明確な証拠が揃っているとは予想していなかったのだ。


偽聖女は冷静を装いつつも、その表情には動揺が見え隠れしていた。

「その書類が本物だという証拠はどこにあるのですか?ただの捏造ではありませんか?」

彼女は震える声で反論した。


しかし、ルミナは即座に反論する。

「ここに記されている取引相手の商人たちは、既に証言を得ています。そして、この古文書をご覧ください。これは聖女が本来どのような基準で選定されるべきかを記した記録です。現在の聖女が述べる『神託』が、いかに正当性を欠いたものであるかが示されています。」


ルミナが提示した古文書は、エリオットが王宮の記録室で発見したもので、聖女の権威を根底から覆す力を持っていた。それを読んだ役人たちの顔には明らかに動揺が広がり、偽聖女を疑う声が次第に大きくなっていった。



---


その時、アレックスが一歩前に出た。彼は堂々とした態度で王と貴族たちに語りかけた。

「私は隣国の公爵家を代表する者として、この問題に重大な関心を抱いています。この証拠が示す通り、偽聖女の行動はこの国のみならず、隣国にも影響を及ぼしています。我が国としても、この問題の解決を強く求めます。」


彼の発言により、偽聖女を擁護する声はさらに弱まり、ルミナの立場が一層強固なものとなった。



---


ついに国王が口を開く。

「偽聖女、この証拠について弁明できるのか?」


偽聖女は動揺を隠しきれず、しどろもどろに言葉を並べたが、それがさらに彼女の立場を悪くする結果となった。広間の中には次第に彼女を非難する声が広がり始め、ついには国王が厳しい口調で命じた。

「これ以上、王家を愚弄する行為を許すことはできない。偽聖女の身柄を拘束し、調査を進める。」


その場で偽聖女は衛兵に連行され、広間に緊張と沈黙が戻った。



---


ルミナは深く頭を下げた。

「陛下、そして皆さま。この場で真実を語る機会をいただき、心より感謝申し上げます。」


彼女の声には安堵と共に、次なる責任への決意が込められていた。



---


その夜、ルミナはアレックス、カティア、エリオットとともに王宮の外で勝利を祝った。アレックスは彼女の肩に手を置き、優しく言った。

「君の勇気が、この国を変えたんだ。おめでとう、ルミナ。」


ルミナは微笑みながら答えた。

「ありがとう。でも、これは終わりではなく始まりよ。これから、この国をもっと良くしていくために私ができることを探していくわ。」


その瞳には、未来への希望と強い意志が宿っていた。



---


このセクションでは、偽聖女の欺瞞が完全に暴かれ、ルミナの正義が勝利する様子を描きました。彼女が集めた証拠と仲間たちの協力によって、偽聖女が失脚し、彼女自身の名誉が回復されることで、物語の一つの大きな区切りを示しています。次なる未来への希望が描かれることで、読者に達成感と期待を残す構成となっています。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?