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1‐4 迫り来る王位継承争い

 リアナが密命大使として影で動いている間、宮廷内では王位継承争いが激化していた。第一王女エリザベートと第二王女マルグリットが互いに手を組みつつも裏では競い合い、第三王女リアナは「無能」として蚊帳の外に置かれているように見えた。だが、それは彼女にとって都合の良い状況でもあった。



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宮廷内の陰謀

ある日、リアナの元に侍女のセシリアが急ぎ足で駆け込んできた。彼女の顔には明らかな焦りが見える。


「リアナ様、大変です!エリザベート様が次期王位継承者としての宣言を準備しているとの情報があります。」

セシリアの言葉に、リアナは眉をひそめた。


「父上がまだ決定を下されていないのに……。姉様は焦っているのね。」

リアナは冷静に答えたが、その声にはわずかな緊張が含まれていた。エリザベートのような野心的な人物が継承争いで動き出したとなれば、宮廷全体が混乱する恐れがある。


「彼女の動きに注意を払わなければなりませんね。セシリア、エリザベート姉様の動向を引き続き監視してください。」

セシリアは頷き、素早く部屋を後にした。


リアナは一人になり、静かに深呼吸をした。これまで陰で活動してきた彼女にとって、宮廷内の争いに直接関与することは避けたかった。しかし、今回の状況はそうもいかないようだ。エリザベートの行動が王国全体に混乱をもたらす可能性がある以上、リアナにはそれを止める責任があった。



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マルグリットとの対話

その翌日、リアナは第二王女マルグリットに呼び出され、王宮内の中庭で面会することになった。マルグリットは優雅なドレスに身を包み、微笑みを浮かべながらリアナを迎えた。


「リアナ、あなたにお話があるの。」

彼女の穏やかな声には、何かしらの含みがあるように感じられた。リアナは静かに頷き、マルグリットの後に続いた。


「姉様が私に話しかけてくださるなんて珍しいですね。何か重要なことですか?」

リアナは礼儀正しく質問したが、その目はマルグリットの意図を探るようにじっと彼女を見つめていた。


「ええ、とても重要なことよ。」

マルグリットはふと視線を外し、中庭の花々を見つめながら続けた。


「エリザベート姉様が、近々正式に次期国王として名乗りを上げるつもりなの。あなたも知っているでしょう?」

リアナは頷き、言葉を慎重に選んだ。


「はい、伺っています。しかし、父上のご判断がまだである以上、それは適切ではないと思います。」

マルグリットは一瞬リアナの顔を見つめ、薄く微笑んだ。


「さすがね、リアナ。あなたの冷静さにはいつも感心するわ。でも、私たちの間で協力関係を築くことを考えてみてはどうかしら?」

その言葉に、リアナはわずかに目を細めた。


「協力、ですか?」

マルグリットは優雅に頷いた。


「ええ。エリザベート姉様が王位を得れば、彼女の野心が国を危険にさらすことになるわ。あなたもそれはわかっているでしょう?」

リアナは内心で驚きつつも、それを表に出さず慎重に答えた。


「確かに、姉様の動きには警戒が必要ですね。しかし、私は影の存在です。姉様方と競うつもりはありません。」

マルグリットは少し顔を曇らせたが、それ以上の追及はしなかった。



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エリザベートの策略

その夜、リアナは隠し部屋で密書を整理していた。そこに、情報網を通じて新たな知らせがもたらされた。それは、エリザベートが王宮内の保守派貴族と手を組み、自分を次期国王に推す計画を進めているというものだった。


「姉様……やはり動き出しましたか。」

リアナは低くつぶやいた。彼女の胸には緊張感が走る。エリザベートの計画が実行に移されれば、王宮内で分裂が生じ、王国全体が混乱する恐れがある。


「このまま放置するわけにはいきませんね。」

リアナは立ち上がり、密書を丁寧に封印した。彼女には、エリザベートの動きを止めるための手段が必要だった。



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父王との対話

翌日、リアナは父王との秘密会談を求めた。病に伏している父王は、リアナの申し出を快く受け入れた。


「父上、姉様方が王位継承について動き始めています。これ以上、事態を放置すれば宮廷内が混乱し、王国の安定が脅かされます。」

リアナの言葉に、父王は重々しく頷いた。


「わかっている……だが、私はまだ決断を下せる状態にない。リアナ、お前に任せたい。お前がこれまで果たしてきた役割を、私は知っている。」

その言葉に、リアナは少し驚いた。父王が彼女の密命の成果をどこまで把握しているかは知らなかったが、その信頼の言葉は彼女にとって重いものだった。


「ありがとうございます、父上。必ず王国の安定を守ります。」

リアナは深く頭を下げ、父王の元を後にした。



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次なる動き

リアナは宮廷内に潜む敵対勢力を調べるため、オスカーに追加の調査を命じた。同時に、彼女自身も姉たちの動向をさらに詳しく探る準備を進めた。


「王位継承争いが避けられないなら、私は影から国を守るだけでは済まない……。」

リアナは窓の外を見つめながら、静かに決意を固めた。


彼女の戦いは、もはや影の役割を超えたものになろうとしていた。王国の未来を守るため、リアナは表舞台に立つ覚悟をしなければならなかった。そして、その覚悟が彼女を新たな運命へと導いていくのだった。



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