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第12話 ……ポン? ポニョンかな? それともポワン?

 何回か聞いているはずなんだけど覚えられない。

 青髪の……目つきの悪い……そうだそうだ、ドワーフ族の……ドワーフさん!


「それは種族名ですよ」


「あの子の名前、なんだっけ?」


 話をしたことがないヤツの名前は覚えられない! まあ、話をしたとしても、なかなか覚えられないんだけどな。

 さすがに貴族のお嬢様方ばっかりだから、みんな小綺麗にしていてかわいらしいんだけど、なかなか真面目に覚える気にならないというか……。あ、そういえば、クラスメイトじゃないんだけど、先輩にすっごい美人がいたよな。生徒会長の人? あの人とはお近づきになりたいな。


「青髪の方は、ドワーフ族の族長の娘で、チカリア=グラニットさんです。ちなみに生徒会長さんはリリス=ロックウェルさんです」


「おおーそうだった。チカリアさんね。ドワーフ族の族長⁉ なんかすごいな……。よし、今度こそ覚えたぞ」


 族長の娘・チカリアさんと覚えておこう。

 チカッとチカリアね。


「コハクちゃんは、生徒会長さんみたいなスラりとした美人が好みなんですか? もしかして……好み変わりました?」


 なんで眉間にしわを寄せて……。

 まさか嫉妬?


「いや……きれいだよなって思っただけで別に好みとかでは……」


「ででですよね~。コハクちゃんは前世の時から、胸がこう~ボインボイ~ンのグラビアアイドルさんが好きですもんね~♡」


「ぜんせ? ぐらびああいどる? なんのことですの?」


 ミサリエ王女殿下が俺から体を離し、目を白黒させていた。

 この世界にはグラビアアイドルなんていないもんな……。説明がムズイな。


「あー、ヒナは時々おかしくなるから、あんまり気にしなくて良い。良いですわ?」


「で、ですが! わたくしにもコハク様の好みについて詳しくお聞かせ願えますか⁉」


 いや、そんなに意気込まれても……。大したことではないので。


「も~♡ 殿下にだけ特別ですよ♡」


 ヒナ……悪い顔になっているぞ。

 余計なことはやめるんだ!


「ぜひ、お願いしますわっ!」


 ミサリエ王女殿下もメモ帳を取り出すんじゃない! 真面目か!


「コハクちゃんが好きなタイプは、ずばり……巨乳・低身長・たぬき顔です!」


 なあ……その話、絶対触れ回るのやめてくれよ?

 ここだけの話にしておいてくれないと、恥ずかしくて表を歩けなくなるから……。


「巨乳・低身長・たぬき顔ですのね。……たぬき顔?」


 メモを取るミサリエ王女殿下の手が止まる。

 まあ、この国にたぬきなんて生き物はいないからな。


「顔が丸顔で、目尻がこ~んな感じにタレ目の人のことです。美人というよりかわいらしい印象の人のことですね」


「なるほど……コハク様はそういう方がお好きなのですね」


 マジマジ見つめてくるのやめてね? さすがに恥ずかしいですわ。


「ですが……」


 険しい表情で俺とヒナを交互に見てくる。

 あー、ミサリエ王女殿下……。殿下が、言わんとしていることはなんとなくわかるよ。でもそこにはあまり触れないでおいたあげたほうが良いんじゃないでしょうかね。


「ヒナ様は低身長と丸顔しか当てはまりませんわね」


 おっふ。

 ミサリエ王女殿下ってあまり空気が読めないタイプですわね? もしかして王族ってそういうもの?


「わ、私はそういうのとは……別格! そう、別格で好感度MAXでメーターが振り切れているので関係ないのです! ね、コハクちゃん!」


 なぜ俺に圧力をかけてくる……。

 俺のことは良いから、ミサリエ王女殿下とお話をしなさい。


「そんなことを言う殿下は……身長は普通、顔は卵型、胸は……巨乳ですね」


 巨乳だけ刺さっていますね。

 だが、巨乳であればすべて許される! そう巨乳こそ至高! だからヒナはもうちょっとがんばれ。


 痛っ!


「なんで今足を踏んできた⁉」


「偶然です」


 いや、わざとだろ!


「コハクちゃんが失礼なことを考えるからです!」


 考えただけで……。口には出さなかったじゃん。


「でもそういう意味でいうと、チカリアさんは巨乳・低身長・たぬき顔で、コハクちゃんの好みど真ん中なんですよね……」


「チカリア? 誰だっけ?」


「コハクちゃんのことをずっと睨んでいるドワーフ族の族長の娘さんです! いい加減に名前を覚えてあげてください!」


「悪ぃ悪ぃ! どうしても覚えられなくて……。あんまりこっちから見てもなんかケンカでも吹っ掛けられたら嫌だなと思ってチラ見しかしていないんだけど……かわいいの?」


「し~り~ま~せ~ん~! 自分で確かめてきたら良いんじゃないですか~」


 ヒナがほっぺたを膨らませて、プイとそっぽを向いてしまった。

 あからさまな嫉妬心が……。


「って言ってもな~。俺、めっちゃ嫌われていそうだし……かわいいの?」


「知りません!」


 ヒナが話を繋いでくれれば良いのに。

 ハーレムを作りたいとか言っていたわりには独占欲強いよな。


「あの~」


 ミサリエ王女殿下が俺の反応をうかがうように見つめてくる。


「どうしましたか?」


 もちろん殿下はストライクゾーンの中に入っていますよ!

 王族関連のめんどくさい何かがないなら、ぜひ仲良くしたいです!


「わたくしが、チカリア様とお話してまいりましょうか?」


「えっ? それって……」


「コハク様は、チカリア様とまだお話したことがないのに、一方的に嫌われているご様子なのですわよね?」


「あー、はい。なんかそんな感じで困ってます……」


 俺のほうは何かをした記憶はないんだけど、まあヒナが何かをやらかしていて、そのとばっちりって可能性はあるんだけどな。


「私は何もしていませんよ。み~んなと仲良しのヒナちゃんですよ?」


 はいはい。


「きっとチカリア様は、コハク様のことを何か誤解されていらっしゃるのだと思いますわ」


「そうだと良いなってお……わたしも思いますわ」


 かわいい子とはお近づきになりたいもの。

 一方的に嫌われるのは悲しい。


「わたくしにお任せくださいませ」


 ミサリエ王女殿下は自信ありげな表情で微笑むと、自身の胸をポンと叩いた。……ポン? ポニョンかな? それともポワン?


 んー、制服のデザインのせいでわかりづらいが、王女様は大変ご立派なモノをお持ちのようで!


 巨乳王女様最高!

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