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第14話 決闘と書いて『告白』と読むんですよ、たぶん。きっと。絶対そうです!

「なあ、ヒナ……。今のはミサリエ王女のちょっとしたジョークだからさ……。機嫌直して教えてくれよ?」


 平民の俺をからかって遊んでいるだけだって。

 こういうのも王族の遊びなんだろ。知らんけど。


「あら、わたくしは本気ですわよ。もしよろしければヒナ様もご一緒にどうですか?」


 あのー、王女殿下がしゃべると、ちょっとややこしくなるので、一旦今は黙っていてもらっても良いですかね⁉

 それにいきなり3人とか、さすがに難易度が高すぎますよ!


「あ~もう、どうぞお2人でおしあわせに! 私は実家に帰らせていただきますっ!」


「いや、お前孤児院……。それに今は俺たち寮暮らしだからな? 帰っても同じ部屋だし……」


 俺とヒナの寮部屋は2人で1部屋だ。ほかの貴族様たちはもちろん1人1部屋。

 この辺りは平民同士有無を言わさず、って感じで部屋割りが決まっていたからなあ。正確に言えば俺たちの部屋だけはほかのみなさんが住んでいる立派な寮の中にはなくて、馬小屋の隣にある離れの小屋だしな。たぶん元々は使用人のための部屋なんじゃね? まあ別に、雨露凌げる屋根さえあれば贅沢は言わねぇけど。


「だったら寮に帰らせていただきますっ! 荷物はコハクちゃんが持って帰ってきてねっ!」


 なんでだよ。


「あのなー、勝手に早退するなよ……。まだこの後授業あるぞ」


 首席入学の生徒が授業をサボるのはマズいんじゃないか?


「じゃあどうすれば良いんですか⁉」


 なんで逆ギレ……。


「だから……一度深呼吸をしてから、さっきチカリアさんと話をしてきた結果を教えてくれたらそれで良いんじゃないか?」


 ミサリエ王女はさ、ちょっと強烈なキャラと強めの肩書きを持っているからあれだけどさ……。 お前がハーレム宣言なんてしたせいで、それを本気にしたやつらがこれから押し寄せてくるかもしれないんだぞ? ミサリエ王女に俺のハーレム属性がどれくらい作用しているかはわからんが、こういう雰囲気になった時にいちいちカリカリしていたら身が持たないぞ?


「ス~~~ハ~~~~~ス~~~ハ~~~~~~」


 深呼吸したら落ち着いたか?

 って、なんだよ。そんな目で睨んでくるなって……。


「………コハクちゃんキライ」


「はいはい。悪態をつけるくらい落ち着いたなら良かったな」


「ヒナ様はとってもかわいい方ですわね♡」


 ちょっとミサリエ王女は黙っていてもらって良いですかね⁉

 ホント王族ってやつは空気読めないのな!


「……ウソ、好き」


「はいはい、ありがとな」


 ミサリエ王女! ニヤニヤ顔までは許しますから、そのまま黙っていてね?

 はい、良い子良い子。


「じゃあ仕切り直しってことで、チカリアさんの話を聴こうか?」


 やっぱり決闘は不可避か?


「あの巨乳たぬき顔が……」


 こらこら、睨むな睨むな。

 ていうか、チカリアさんもまだこっちを睨んでいるんだが?


「あの方は……チカリア様はまったく話の通じない方でしたわ……」


 いや、王女殿下……あなたもそっちの部類ですからね?


「うん、話が通じなかったですね。あれは……コハクちゃんに惚れていますね……。間違いないです」


「そういうふうには見えないんだけどな?」


 もしそうなら持って帰ってくるのはラブレターなんじゃないのか? ミサリエ王女が持って帰ってきたのは決闘の申し込みだしなあ。


「ヒナはチカリアさんと何を話したんだ?」


「私が『やあ、巨乳たぬき顔のお嬢さん!』って気さくに挨拶をしたら、無言で腹パンされそうになったので足を3連打で踏み返してやりましたよ!」


「お、おう……。穏やかじゃないな……」


 一触即発……っていうか、お互い手を出しているし、すでに戦いの火ぶたは切られているな……。

 ミサリエ王女にも、ヒナにも似たような態度か。

 ホント何があったんだよ……。


「放課後、伝説の樹の下で決闘の申し込みがあったので、手袋を10セット投げつけて受けてやりましたよ!」


「やっぱり決闘……。俺、腕力には自信がないんだけどな……。チカリアさんってドワーフ族なんだろ? 力強そうだよな……」


 ドワーフ族って鍛冶師に多いよな。ずんぐりむっくりで重たい金づちを簡単に振るって金属加工しているイメージがあるわ。チカリアさんは細身だからちょっとドワーフ族のイメージと違うが、きっと力は強いんだろうな。んー、ほら、俺って人族だし、細腕だし、見た目も超キュートな女子だし、ケンカになったら負けちゃう、みたいな?


 おい、女神! スルーすんな!……ツッコめよ!


「あの人、たぶんコハクちゃんのことが好きなんだと思います。決闘と書いて『告白』と読むんですよ、たぶん。きっと。絶対そうです!」


「絶対違うだろ……。なんかそう思う根拠でもあるのかよ?」


 まさかチカリアさんの心の声を?


「いいえ、私、コハクちゃん特化型なので、コハクちゃん以外の声なんて聞こえませんけど」


「そうですかー」


 なんだそのコハク特化型って。


「でも私にはわかるんです! ピンときました!」


「そう、ですわね……。わたくしにもわかります……」


 なぜだかヒナとミサリエ王女が頷き合っている。


 あれあれ? 意気投合しちゃいました?

 俺だけ話についていけていない……。仲間に入れて?


「あれは恋する乙女の熱視線です!」


「間違いありませんわね!」


 たぶんお前たちの目は節穴だわ……。


 んー、決闘は放課後か。

 準備するにしても時間が足りなすぎるな。

 一応護身用に小型ピストル(威嚇射撃用)を持っていくか。

 あれなら決闘になっても相手の出鼻をくじくのには使えるだろ。こっちは戦いたいわけじゃないし、戦意を喪失させられればそれでOKだしな。


 よし、チカリアさんが襲い掛かってきたら、小型ピストルでびっくりさせて、その隙に逃げる作戦でいこう!


「相手がびっくりして固まっている間に、私のファイヤーブレスで焼き払っちゃえば良くないですか?」


 お前はまさか、同級生を焼き殺そうとしているのか……?

 とんでもない女神だな。

 睨まれている理由を訊きたいだけだから、絶対手荒なことはするなよ?


 今のはフリじゃねぇからな⁉

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