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第31話 ゴーレム子ちゃんは、魔法攻撃無効の属性が付与されています

 地下室前――。

 年季の入った大きな鉄扉。その前にはゴーレムが2体、鎮座していた。


 大きさは、約3mってところかな。まあ、でかい。


「ゴーレムが扉を守っているのか……」


 事前にゴーレムの話を聞いていなかったら、ただの土人形のオブジェだと思ったに違いない。

 でも、これまでの話から想像すると……コイツは動くんだよなあ。

 コイツらが一度暴れ出したら、そのパワーに正面から対抗するのは非常に難しそうだ……。というか、人間には無理だな。


「ハクちゃん、さっそくですが、このゴーレムたちと戦って勝利してください。それが禁書庫への入場許可証になります」


「さっそく、じゃねぇよ。無茶言うな。この中で戦闘系のスキルを持っているのはヒナくらいだぞ」


 ヒナは火の精霊と契約しているおかげで、火系の攻撃魔法が使える。対して俺とチカは『石加工』スキルしか持っていない。いや、チカは水の精霊と契約していて水魔法が使えるようだが……おそらく戦闘向きでは精霊なんだろうな。動く敵に向かって、人の歩く速度よりもゆっくりとしたウォーターボールは……たぶん当たらない。当たりさえれば、凍らせることはできるんだろうが……。


「仕方ないですね。私が1人であのゴーレムたちをボッコボコにしてきます!」


 グルングルン腕を回しながらヒナがゴーレムの前に進み出る。


「うぉー! ヒナかっこいいー! ヒナがんばれー!」


 ヒナ、イケメーン!


「ほら! チカもヒナのことを応援して!」


「……トカゲ娘……がんばるンよ……」


「トカゲじゃありません! 高貴なファイヤードラゴンです!」


「火トカゲ?」


「そんなちっぽけな存在じゃありません! ファイヤードラゴンは、ドラゴンの中でも火力が高いほうに属する強いドラゴンなんですよ!」


「チカの水魔法で氷漬けになると良いンよ」


「ハハ。あんな攻撃、眠っていても避けられますよ」


「だったらそこで眠っていると良いンよ! 行くンよ! ウォーターボール!」


 うむ、ここいらで止めておかないと大惨事になるか……。


「お前ら、いい加減に――」


「なんの! カウンターファイヤーボール!」


 ちょっ! いきなり両側から魔法を放つな! 真ん中にいる俺! 死ぬ!


「ゴ~~~~~~~~~~レムッ!」


 ヒナとチカの精霊魔法が俺に着弾する寸前――。

 向かって左のゴーレムが突然動き出し、巨大な両手を俺の体の周りに突き立てたのだ。


「ゴ~レムレムッ!」


 ファイヤーボールとウォーターボールは、俺に当たることなくゴーレムの手の甲に着弾した。

 なんと……そのまま霧散。

 火で燃えることも、氷で凍結することもなく――。


「皆さん。ここでの戦闘行為は、私のゴーレムちゃんたちへの敵対行動とみなされますのでご注意ください」


「チカの精霊さんのウォーターボールが、手ではじかれたンよ……」


 チカが驚きの声を上げる。

 いや、俺も正直驚いたわ……。

 とくにさ、当たりさえすればなんでも凍らすことができる、チカのウォーターボールが何のダメージも与えられずに消滅した、だと……。


「ゴーレム子ちゃんは、魔法攻撃無効の属性が付与されています」


「ゴーレム子ちゃん……」


 名前のセンスが壊滅的だった。

 しかし、その強さは本物だった。


 魔法攻撃無効とはすげぇな……。


「ゴーレム美ちゃんは、物理攻撃無効の属性が付与されていて、2体のゴーレムちゃんたちは俊敏な動きでの連係プレイが得意です」


「魔法攻撃も物理攻撃も無効? 3mはありそうな巨体なのに俊敏な動きって、さすがに強すぎでは?」


 攻撃手段が2人の魔法攻撃だけの時点で、普通に俺たちに勝ち目なんてなくないか?


「3人全員でかかってきたほうが良いですよ。ゴーレムちゃんたちを倒せなければ、立ち入りの資格なしということで、禁書庫への入場許可設定を有効にすることはできませんから」


 なんだよ、これは俺たちに対しての試験ってことか。

 一緒に組む価値があるか見てやろうってことかよ。


 良いだろう。

 売られたケンカは買ってやるぜ!


「そうだ、ハクちゃん」


 リリちゃんが思い出したように俺のことを手招きしてくる。


「なん……ですか?」


 若干警戒しつつ、リリちゃんのもとへ。


「ハクちゃんは、ちゃんとゴーレムを作って戦ってくださいね。『生命の精霊』には、特別にハクちゃんの造ったゴーレムに宿って、ハクちゃんの命令を聴くようにお願いしてあります。どうぞ~」


 リリちゃんが俺の目の前で両手の平を合わせて、お椀のような形を作ってみせる。

 俺の目では、リリちゃんが大事そうにしている精霊何かを見ることはできないようだった……。


「見えないと思いますが、これが『生命の精霊』です。今、ハクちゃんの肩に乗っかりました。良かったです。気に入られたみたいですね」


「俺の肩の上に精霊が……?」


 何も見えない。

 ホントに? それともリリちゃんが俺のことをからかっているだけ?


「こ、これが『生命の精霊』なンよ……。さすが上位精霊は顔つきが違うンよ……」


「纏っているオーラがきれいですね……。これが幻の『生命の精霊』なんですか……」


 チカとヒナには『生命の精霊』の姿が見えているらしい。

 ミサ王女は――。


「わたくしには見えませんわ。コハク様とおそろいですね♡」


 なぜうれしそうにする。

 だがどうやら俺だけが見えずにからかわれているわけではなさそうだ……。


「ゴーレムを作って戦わせる……か」


 俺が作れるのは土人形ではなくて石人形だ。

 だがおそらく、石人形を作れば俺の肩にいるらしい『生命の精霊』がそこに宿り、俺の命令を聴くゴーレムになるんだろうな。なんかすげぇな……。


「いっちょやってみますかー」


 俺が石人形作りをやらないことには始まらなそうだしな。

 まずはあのゴーレムを倒すための石人形、その基礎部分を担う『石』を探そう。


 良さそうな材料探しから――。

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