「ゴーレム太郎とゴーレム次郎ってネーミング……そんなにダサい……?」
いやいや、ゴーレム子とゴーレム美に比べたら断然かっこいいよな? 王道の名前だからこそ輝く力強さ!
「どっちもクソダサなので、名前をつけるだけかわいそうです」
チカに続いてヒナまで辛辣……。
『我の名前はゴーレム太郎』
『我の名前はゴーレム次郎』
『『2体合わせて、ゴーレム兄弟! 石に変わってお仕置きよ!』』
おお、ゴーレムたちがしゃべった!
これが『生命の精霊』が宿ったゴーレムか! めっちゃかっこいいな!
「2人とも、俺のつけた名前……気に入ってくれたのか?」
なー、良いよなー? 太郎と次郎ってシンプルだけどかっこいいよな? なぜか、ヒナとチカがネーミングセンスにダメ出ししてくるんだよー。
『主殿。我はまさに太郎と名乗りたいと思っていたところだ。ナイスタイミングで小躍りしそうだ』
『主殿。我は次郎だが、太郎よりも遅れて誕生したのか?』
「あー、いや? そんなことはないと思うが。同時に2体を作ったしな」
次郎よ、気にするところはそこなのか? 名前自体は気に入ってくれたのかな?
『では我が太郎でも良かったのではないか?』
『何を言う。我が太郎だ。弟なら黙って我についてこい』
『その兄貴面が許せないんだよな。主殿は、我ら兄弟が同時に誕生したとおっしゃっている。我らは同列。2体とも太郎で良いのではないか?』
『それもそうだ。では2体そろってゴーレム太郎と名乗ることにしよう』
「いや……どっちも太郎だと俺が指示を出しにくくなるんで、名前は違うほうがありがたい……」
あとさ、俺が主なんだから、俺の意向を無視してそっちで勝手に名前を変えようとするのはやめてくれない? このゴーレム、俺の命令にちゃんと従うのか……? ちょっと不安になってきたな……。
「仕方ありませんね。私が素敵な名前をつけてあげます」
ヒナが元ゴーレム太郎に向かって呼び掛けた。
「仕方ないンよ。チカがエレガントな名前をつけてあげるンよ」
チカが元ゴーレム次郎に向かって呼び掛けた。
あー、2人が名前を付け直す流れね?
まあ好きにしてちょうだい。すぐにでもあっちのゴーレムと戦わないといけない雰囲気だから、なるべく早めに頼むな? リリちゃんが怒りださないうちにさ。
「決めました!」「決めたンよ!」
お、わりと早かった。
「「今からあなたは(お前は)」」
「コハナよ!」「コハリアなンよ!」
うーん。コハク+自分の名前……ってことだよな。
2人のネーミングセンス……ほぼ丸被りだな。
おーおー、すっげぇ睨み合っているじゃんか……。どっちがパクったとか、そういうのはどっちでも良いから……。
「どうする、お前ら? コハナとコハリアだってさ? 太郎と次郎のほうが良かったらそっちでも良いんだぞ?」
『我はコハナ。ヒナ=スカーレットに付き従う者なり』
『我はコハリア。チカリア=グラニットに付き従う者なり』
なんだよ。お前ら、めっちゃ気に入っているじゃんか。
しかもなぜか主が俺じゃなくなってるし。生みの親は俺なんだけどなあ。
「そちらの準備は整ったようですね。そろそろ良いですか?」
と、リリちゃんが声をかけてきた。
わりとしびれを切らしている雰囲気が……。
「あー、なんか俺はお役御免らしいので、ヒナとチカが戦いますけど、それで良いですか?」
コハナとコハリアはたぶんオレの言うことは聞かないだろうし。
ちょっと悲しい。
「問題ありませんよ。3人で話し合って好きにしてください。私のゴーレム子とゴーレム美を打ち倒せたら、禁書庫への入場許可証を発行しましょう」
「OK。それを聞いて安心した。おーい、ヒナ、チカ。それとコハナとコハリアもこっちこい。作戦を伝える」
俺に良い考えがある。
「コハナのナックルパンチであんな土人形は簡単に粉砕できますよ。ね、コハナ♡」
「コハリアの殺ゴーレムタックルであんな土人形は簡単に粉砕できるンよ。な、コハリア♡」
お前ら殺意高すぎ。
そんなことをしたら、リリちゃんが悲しむだろ。
「お前らがコハナとコハリアに愛着を持って接しているのと同じように、リリちゃんもゴーレム子とゴーレム美に愛着を持っているに決まっている。禁書庫への入場程度のために、大切なゴーレムを壊したりしたらダメだ」
「じゃあどうするんですか? あちらさんはブンブン腕を振り回して戦闘準備万端だし、話し合いで解決できそうには思えませんよ?」
まあ聞けって。
俺の考えた作戦は――ごにょごにょごにょ、と。
これならいけるだろ? な、コハナにコハリア?
「コハク……それはずるいンよ……」
「ずるくない。まあ、コハナとコハリア次第だけどな。お前らにまったくその気がないって言うなら、もう仕方ないからぶっ壊してこい。でも、一生後悔するかもしれないけどな? ゴーレムなんてこの国中探しても、お前らしかいないだろうし?」
決めるのはお前たちだ。
『兄貴……どうするンよ』
コハリア、お前チカの口調がうつって……ってこんな時だけコハナのことを兄貴扱いって。さっきと言っていることが逆じゃねぇか。
『我は……まんざらでもないです』
コハナもヒナの口調がうつってるじゃん。
って、まんざらでもないのか。じゃあ良いじゃねぇか。
『我も……兄貴が良いならそうしてやっても良いンよ?』
コハリア、言い方ー!
興味ないですけどー渋々ー、みたいな雰囲気はずるいぞ。
だがまあ良いや。
コハナとコハリアが完全拒否じゃないから当たって砕けてこい!
いや、本当に砕けられると困る。玉砕しそうになったら、仕方がないからプランBってことで泣きながらあいつらを粉砕してやれ! それもまた人生……ゴレーム生だ。
とにかく健闘を祈る!
「リリちゃん、お待たせだ。こっちは準備ができたので、いつでも勝負を始められる!」
「こちらは待ちくたびれて、ゴーレム子とゴーレム美の体が温まり過ぎてしまいましたよ」
ゴーレムの体って、腕を回したりする準備運動で温まるのな。『生命の精霊』の部分がエンジンにでもなっているのか、興味深い……。
「ではわたくしがこの勝負のジャッジを担当させていただきますわ~。準備は良いですか~?」
ミサ王女が扉(砂石でできたダミー扉)の前に立ち、両陣営に向かって手を振ってきた。
そんなに近いところでジャッジするの? 大丈夫か?
王女様なんだし、巻き込まれてケガをしないでくれよな。
「それでははじめ~!」
ミサ王女の掛け声とともに、コハナとコハリアが全速力でゴーレム子とゴーレム美のもとに走り寄る。
先制攻撃だ!
行け! 一撃で決めてこい!
『我が名はコハナ!』
『我が名はコハリア!』
『『我と結婚を前提にお付き合いしてください!』』
片膝をついたコハナとコハリアの手には、俺の生成した超巨大なルビーの宝石付き指輪。
ゴーレム子とゴーレム美にそれぞれ向かって差し出し――。
完璧に