ホムンクルスを使った攻略……?
「やっぱり武力行使……なのか?」
「いえいえ、武力は使いません。もちろん、ここの勝負です」
リリちゃんが、自分の頭を叩いて見せる。
自信満々って顔だな。ミサ王女も頷いているし、この2人……本当に上位6人を蹴落として王位継承権争いに勝つつもりなのか。
「頭脳勝負ねぇ。ホムンクルスってのが人造人間なんだなってことくらいしかわかっていないからさ。ゴーレムとの違いがいまいちわからん」
コハナたちは普通に意思を持って行動していたしなあ。そういう意味ではもう人造人間なのか?
「その疑問には私がお答えしましょう! みなさんが王位継承権争いについて話をしている間に、私とたぬき娘で禁書を解読しておきました」
えっ、いつの間に⁉
今の今まで、ヒナもチカも会話に参加していなかったか⁉
「苦節10年……ホムンクルスの意味がやっとわかったンよ。でもこれは……悔しいけれど、コハクにしか作れないかもしれないンよ……」
「わたくしは最初からそう思っていましたわ。ですから、リリスお姉様にコハク様のことをお伝えしたのですわ!」
「ミサからハクちゃんの話を聞いて、正直戸惑いました。まさに私が求めていたスキルを持った人が現実に現れるなんて、ありえないことだ、と。ですが、先ほどのゴーレム作成の手際を見て確信しました。ハクちゃんがいれば、この戦いを制することができるでしょう!」
4人が、目を輝かせて頷き合っている。
当事者の俺を置いてけぼりにして……。
「さあ、コハクちゃん。今こそ『ワンランク上の石加工』スキルを使って、完璧なホムンクルスの素体を作り出してください!」
あ、うん。
盛り上がっているところ悪いんだが、まずは俺にもホムンクルスの正体について教えてくれる?
「ここにすべて書いてあります!」
あ、うん。
古代精霊語が読めないから、要約して教えてくれる?
「作り方は書かれていません!」
「おい! ぜんぜん話が違うじゃないか! すべて書いてねぇじゃん!」
正解がわからないなら、さすがに俺だってどんな分子構造を組みあげれば良いのか特定するのは無理だぞ?
「作り方は書いていませんが、書かれている内容から高い確率で『こうだ』という推測ができるんです」
「やはりヒナさんにも『あれの秘密』がわかりましたか。おそらく私たちは同じことを推測しているのでしょうね」
「『あれの秘密』はおそらく『あれ』でしょう。コハクちゃんならおそらく『あれ』を作り出せると思います」
おーい。
ヒナとリリちゃんの2人だけにしかわからない暗号でキャッキャするのやめてくれる?
珍しい組み合わせだから、ちょっと新鮮で「これはこれで良いか」って気持ちになりかけているんだけど、今はそんなことよりもホムンクルスについて教えてくれると助かるんだがー?
「チカがズバリ教えてやるンよ」
チカが腰に手を当てて仁王立ちになる。
「おお、頼む」
ヒナとリリちゃんは俺に教えてくれる気がないらしいからな……。
「簡単なことなンよ。ホムンクルスは人間。人造人間だから、素体として人間の体と同じものを作れば良いンよ」
「人間の体……?」
普通に考えて、そんなの無理じゃねぇか?
「いやしかし、人間は厳しいと思うぞ……。そもそも生き物の分子構造を真似るのは大変厳しい……」
ゴーレムは中身が石のままでも良かったから、サッと作れたわけだが、生き物は見た目以上に中身が複雑でな……。なぜそう動いているのかを理解しないと真似ることができないし、俺は別に人体に詳しい医者ってわけじゃない。
「四の五の言わずにさっさと作るンよ! ミサが困っているンよ!」
「さっさとって……。そういや、チカは王位継承権争いにそんなに乗り気だったっけか。ミサ王女のことがそんなに好きじゃないのかと思っていたわ」
「ミサが王位に就かないと、チカが平民の娘になってしまうンよ! 真剣に頼むンよ!」
ああ、心配しているのはそっちか。
まさかチカが他人のことでこんなに必死になると思わなかったからな。自分のことしか考えていなくて逆に安心したわ。平常運転平常運転。
しっかしさあ、人間の構造を理解するのってかなり難易度高いよな。ヒナの女神パワーで何とかならねぇ?
「助けになるかはわかりませんが、彼の国から詳細な医療データを取り寄せることはできます」
「おお、それは助かる。パーツごとに分子構造を把握していって、最後に一気に組み合わせる感じかな……」
そうして、俺の人体実験……ではなくて、人体を作成する実験の日々が幕を開けたのだった。
そういや、ホムンクルスを使るのは良いんだけど、ホムンクルスをどう使って王位継承権争いに勝つつもりなのか、ぜんぜん説明されてなくないか?