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第48話 愛の深さの前には出逢った順番など些末なものです!

ご主人様マスター、愛しています』


 聞き間違い……ではなさそうだな。

 起動直後のホムンクルスから、いきなり愛の告白をされたんだが?


「んー、バグったか……?」


 よし、1回実験を中止しよう。

 何が問題だったか振り返りのための検証を……。


 えーと、どうやって止めるんだっけか? ああっ、ホムンクルスマニュアルのヒナが寝ているっ!


ご主人様マスター、抱いてください』


 ホムンクルスが肩にかかるローブを払いのけて俺に抱き着いてきた。

 一糸まとわぬ姿で……直接、(ミサ譲りの)大ボリュームの軟乳が! 再現度すげぇ! まだ本物は直で確かめてないから想像だけどな!


「それはダメです! お許しできません!」


 ホムンクルスの後ろからドッペルゲンガー――じゃなくて本物のミサが! 俺の体からホムンクルスを引き剥がしにかかる。だが、そう簡単にはホムンクルスも剥がれない。


ご主人様マスターはわたくしのものですわ!』


「いいえ、わたくしのものですわ! 順番をお守りになって!」


『愛の深さの前には出逢った順番など些末なものです!』


「わ、わたくしはすでに婚約が内々定しているんですの! わたくしが先ですわ!」 


 それは初耳だなあ。

 内々定って、就職先の企業との口約束みたいなもんか? まあ、俺たちは口約束もしていないけど。


ご主人様マスターは、わたくしのほうが良いですわよね⁉ そちらの方よりも若いですし!』


「若い……生まれたばかりだからな……」


『身寄りも人権もありませんから、違法な行為もし放題です!』


「俺を何だと思っているんだ……」


 まあ、ミサが王女だっていうのはわりと面倒なしがらみだなとは思っていますけれども……。

 あ、いや、ミサさん、違いますよ? 俺もまだ学生の身分なので結婚とかそういうのを考えるのはまだ早いかなーって? そもそも女同士は法律の壁とかいろいろありますし、まあ、社会に出てからゆっくりと考えても……。


「コハク様がそのようにおっしゃるのなら、わたくしは王室を離脱いたしますわ! さあ、今すぐに駆け落ちいたしましょう!」


「俺は何も言っていないんだが……」


 勝手に人の表情から都合の良い解釈をするのはやめなさいね。


「ミサが王位継承権争いから離脱してしまったら、ホムンクルスを作っている意味がなくなってしまいます」


 リリちゃんによる冷静なツッコミが刺さってくる。


「そ、そうだよな! だいたいあれだよ! ミサが王女じゃなくなったら、今生まれたばかりのホムンクルスと違いがなくなっちまうぞ?」


 なんなら若さで負けて――。


「コハク様……そんな……」


 あああああ! 違う違う違う!


「ハクちゃん、それはひどすぎます。ミサは王女だから魅力があるわけではなく、ミサ個人に魅力がある、そうですよね?」


 そうそうそうそうそうそう! リリちゃんナイス! 俺が言いたかったのはそれ!


「ミサ、泣かないでくれ! ちょっと言い方を間違った! 誤解を与えたならすまない! 見た目の違い、そう、見た目が同じになっちゃうぞって言いたかっただけ! 中身はほら、ミサのほうがずっと魅力的だから!」


 やべやべ! ぜんぜん具体的な例えが思い浮かばない! パニックパニックパニック! どうすれば⁉


ご主人様マスター、お言葉ですが、わたくしのほうが中身は優れておりますわ。まず最初に、排せつを行わないので外部も内部も永久に美しい存在です』


 排せつ……。

 まず最初に並べる利点がそれ……。


「わ、わたくしもそのような行為は一切いたしませんわ!」


 そこは……対抗するところかな?

 ミサはアイドルか何かなの?


『そして何よりも優れた点として、わたくしの体の中にはご主人様マスターのアレがいっぱいに駆け巡っておりますの。今この瞬間もご主人様マスターを体内に感じますわ……』


「アレ……魔力オドね。まあ、血液の代わりに流れているから……」


 でも言い方がおかしい……。なんかエロい感じに言うのやめて?


「わたくしにもコハク様のアレをいっぱいにくださいませ!」


「いや、人間に対して魔力オドを流す方法は知らないんだが……」


 まあ、同じやり方で流すことはできるかもしれないが、体内に滞留させる方法は知らないな。そんなことをしても意味はないと思うし。


「わたくしは……排せつもしますし、コハク様のアレも体内に感じられない……。何も……」


 がっくりと膝をつくミサ。


『どうやらわたくしの勝ちのようですわね』


 うれしそうに俺の膝の上に腰かけてミサを見下ろすホムンクルス。


 いつの間にか勝敗が決したのか?

 いやその……なぜミサはホムンクルスの土台で勝負したのか。まあ、本人たちの中で納得しているならそれで良いんだが……。


「わたくしもホムンクルスになりたいですわ~~~~~~!」


 あー、間違った方向に考えがー。誰か助けてー。


「ミサ、泣かないで。今のはハクちゃんがひどいです。私がうんと叱っておきますからね」


「お願い……いたしますわ……」


 しゃくりあげてガチ泣きですわ。

 今のは俺が悪いわけじゃないのに……。


 って、このホムンクルスはなんでさっきから俺の胸を揉んでくるの?


ご主人様マスターの愛を感じますわ♡』


 それは愛ではない気が。

 自分のを揉みなさいよ。そっちのほうが柔らかくて大きいからワンランクもツーランクも上の体験ができるぞ。


「コハク……チカが寝ている隙に浮気とは良い度胸なンよ……」


 ヒエッ⁉

 耳元で氷のように冷え切ったチカの声が!


「ち、チカさん。おはようございます……。これはホムンクルスの起動実験でして……」


 決して浮気なのではございませんので……。


「起動実験成功おめでとうなンよ」


「あ、ありがとうございます……」


 ずっと背後に立たれていてめっちゃ怖い……。


「ところでコハクは、初めて出逢ったホムンクルスに胸まで揉ませるンよ?」


「んひぃぁ⁉」


 変な声出ちゃった……。

 いきなり背後からチカに両胸を鷲掴みに……不意打ちはびっくりするンよ……。それと俺の背中にチカの立派なやつが当たっているンよ?


「あ~、コハクちゃん! ホムンクルスが無事起動していますね~。おめでとう――ござい、ますっ!」


「あひぁ⁉ トカゲ! いきなり何するンよ⁉ チカの国宝に気やすく触れるンじゃないンよ!」


「そっちこそコハクちゃんの胸から手を放してください。千切りますよ?」


 ヒナが国宝に……? これはどういう状況だ……?

 俺の背後で何かとんでもないことが起きている気がする⁉ まあ俺にもとんでもないことが起きてはいるんだけどな……。

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