クラリスが目を覚ますと、彼女は見知らぬ場所に横たわっていた。周囲には広がる青空と、草原のような風景が広がっている。太陽の光が柔らかく肌を照らし、心地よい風が頬を撫でる。しかし、この穏やかな風景がどこなのか、彼女にはまったく見当がつかなかった。
「ここは……どこなの?」
彼女がそう呟いたとき、ふと視界の片隅に一人の女性が立っていることに気づいた。それは処刑台で彼女を救った、あの美しい銀髪の女性、運命の女神フローラだった。
「目が覚めたようね、クラリス。」フローラは微笑みながら、静かに彼女に歩み寄った。「あなたはもう、あの世界のクラリス・ド・ロレンではないわ。ここで新たな人生を歩み始めるのよ。」
クラリスはぼんやりと周囲を見渡しながら、彼女の言葉を反芻した。「新たな人生……でも、私はあの世界で裏切られ、すべてを失ったままです。それでも、もう一度あの世界に戻ることはできるのですか?」
フローラは優雅にうなずいた。「もちろんよ。あなたには、私が授けた『運命を操る力』があるわ。それを使って、自分を裏切った者たちに復讐し、そして自分自身の道を切り開いていくのよ。」
「運命を操る力……?」クラリスはまだその力が何を意味するのか完全には理解していなかった。
「そうよ、あなたの手の中には、人の運命をほんの少しだけ操作する力が宿っている。未来の一部を垣間見たり、他者の選択を微妙に変えることができるの。それを駆使すれば、あなたの復讐は必ず成し遂げられるでしょう。」
クラリスは一瞬、フローラの言葉を聞き、心が躍るのを感じた。運命を操る力――それを使えば、自分を陥れたレオンやエリザベスに報いを与えることができる。彼女は強い決意を胸に抱きながら、目の前の女神に深く礼をした。
「ありがとうございます、フローラ様。私はこの力で、自分の運命を取り戻します。」
「良い返事ね。あなたならきっとできるはずよ。」フローラは満足そうにうなずき、優雅に手を振ると、次の瞬間、クラリスの目の前から姿を消した。
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クラリスはしばらくの間、その草原に立ち尽くしていたが、やがて自分の手に運命を変える力が宿っていることを実感し始めた。彼女は手をかざし、目を閉じると、ふと未来のビジョンが頭に浮かんだ。
それはレオンの姿だった。彼は玉座に座り、周囲の人々に命令を下している。しかし、その目はどこか不安げで、冷たいものが感じられる。