エリザベスに対する信頼が完全に崩れ始め、彼女の立場は王宮で急速に悪化していた。かつて彼女を支持していた貴族たちは次々と離れ、王宮内での噂はますます広がり、彼女の孤立は日に日に深まっていった。
クラリスはそんなエリザベスの姿を冷静に観察していた。かつてはクラリスのすべてを奪い、王妃の座を手に入れたかのように見えたエリザベスだが、今やその立場はまさに崖っぷちだった。クラリスの計画は着実に進み、エリザベスは王太子レオンからの信頼も失い始めていた。
「彼女は自分が勝者だと思っていた……だが、全ては崩れ去る運命だったのよ。」
クラリスは自室の窓から王宮を見下ろしながら静かに呟いた。エリザベスがすべてを失うまで、もうあと一押しだ。そして、その一押しこそが、クラリスの復讐を完成させる。
---
その夜、クラリスは再び王宮の舞踏会に招かれた。今回の舞踏会は、レオンの誕生日を祝う大規模なもので、多くの貴族や外国からの賓客が集まる華やかなイベントだった。クラリスにとっては、これ以上ない機会だった。エリザベスが完全に失脚するその瞬間を、王宮のすべての人々の前で演出するつもりでいた。
豪華なドレスに身を包んだクラリスは、落ち着いた足取りで舞踏会の会場に入った。会場は煌びやかな装飾で彩られ、多くの人々がレオンの周りに集まっていた。しかし、クラリスの目はエリザベスを探していた。
彼女はすぐにエリザベスを見つけた。エリザベスは美しいドレスを着ていたが、その顔には明らかな疲労と焦りが滲んでいた。彼女の周りにいた貴族たちも、以前のように親しげに話しかけることはなく、距離を置いているように見えた。
クラリスは静かに笑みを浮かべ、エリザベスに近づいた。「エリザベス様、今宵もお美しいですね。」
エリザベスは驚き、少し不安そうな表情でクラリスを見つめた。「ああ、クラリス様……ありがとう。でも、今夜はあまり気が乗らなくて……」
「そうでしょうね。最近、いろいろと大変なことがあったとお聞きしましたから。」クラリスはあくまで優雅に、エリザベスの不安を増幅させるような言葉を選んで話しかけた。
エリザベスは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに自分を取り戻し、クラリスに問いかけた。「あなたも噂を聞いたの?でも、あれは全てデタラメよ。私がそんなことをするはずがないわ。」
クラリスは心の中で満足感を覚えながら、慎重に言葉を続けた。「もちろん、私もそのように思っています。ただ、最近は王宮でもいろいろなことが耳に入りますから……少し気をつけたほうが良いかもしれません。」
エリザベスは明らかに動揺していた。彼女は信頼できる友人もなく、レオンとの関係も冷え切っている状況で、クラリスの言葉が心に深く刺さったに違いない。その顔色がますます青ざめるのを、クラリスは見逃さなかった。
「それでは、失礼しますね。」クラリスは優雅に一礼し、エリザベスを後にした。
---
クラリスが舞踏会の会場を歩き回る中、彼女はすでに準備していた最後の一手を打つ時が近づいていることを感じていた。それはエリザベスが手に入れた王妃の座を完全に崩壊させるための計画だった。彼女は密かにエリザベスのさらなる不正の証拠を集め、それを公の場で明らかにするつもりだった。
舞踏会が最高潮に達した頃、レオンが王座に立ち、祝福の言葉を受け取っていた。その場の視線はすべて彼に集中していたが、クラリスは冷静に時を待っていた。すると、レオンの隣にエリザベスが立ち、彼女もまた王妃としての立場を誇示するかのように微笑んでいた。
その瞬間、クラリスは行動に出た。彼女は舞踏会の中央に進み出ると、声高に言った。
「皆様、どうかお聞きください。私は重大な事実をここで告げなければなりません。」
その声に、会場が静まり返った。すべての目がクラリスに向けられ、彼女の言葉を待っていた。レオンも驚いた表情で彼女を見つめていたが、その視線はクラリスの冷静な態度に次第に鋭さを増していった。
「エリザベス様は、この王室の財政に深刻な問題をもたらしています。彼女は長年にわたり、王室の資金を私的に流用しており、それが明るみに出ることを恐れて、嘘を重ねてきました。」
会場内にはざわめきが広がった。人々は耳を疑いながらも、クラリスの言葉に動揺を隠せなかった。レオンはすぐにエリザベスに視線を向け、その目には怒りが宿っていた。
「それは嘘よ!」エリザベスは声を上げたが、その声は震えていた。「私はそんなことをしていない!」
しかし、クラリスはすでに証拠を用意していた。彼女は貴族たちの前に不正の証拠を提示し、それが本物であることを証明した。証拠の存在により、エリザベスの言葉は完全に無力化され、彼女は次第に追い詰められていった。
「エリザベス……これが真実なら、お前はもはやこの王国の一員ではない。」レオンの冷たい声が響き渡り、その場にいた全員が緊張感を感じ取った。
エリザベスはその言葉を聞き、完全に絶望したように崩れ落ちた。彼女はこれまで手に入れた全てを失い、王妃の座も、友人も、そしてレオンの信頼も失ってしまった。
クラリスはその光景を冷静に見つめながら、心の中で静かな満足感を覚えた。エリザベスはすべてを失い、彼女の復讐は成し遂げられた。
-