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第14話 揺らぐ王宮と新たな使命



クラリスたちが「黒い牙」のリーダーを捕らえて王宮に戻ってきた時、宮廷内は一段と慌ただしい雰囲気に包まれていた。密貿易や盗賊団の活動がさらに激化しているという報告が相次ぎ、クラリスが洞窟で得た情報の通り、王国全体にわたる大規模な陰謀が進行中であることが確信されつつあった。


宮廷内では、さまざまな重臣たちが次々とクラリスに話しかけ、彼女の視察団の成果について尋ねてきた。だが、クラリスは焦ることなく、冷静に状況を説明し、捕らえた男が王宮で尋問されるまで事態が進展しないことを伝えた。


クラリスは、王宮の奥深くにある尋問室に向かうため、ヴィクターと共に進んでいった。彼女の心の中には、捕えた男から得られる情報が、今後の行動に大きな影響を与えるという予感があった。



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尋問室の扉が重々しく開かれると、クラリスとヴィクターが足を踏み入れた先には、捕らえられた「黒い牙」のリーダーが座っていた。彼は両手を拘束されていたが、相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。


「ようこそ。私を尋問しに来たのか?」男は冷たく言い放った。


「あなたが私たちに何を隠しているか、それを知るためにここに来たのよ。」クラリスは毅然とした態度で答えた。「首都への攻撃を阻止した今、あなたの計画は瓦解しつつあるはず。何を企んでいたのか、すべて話してもらうわ。」


男は鼻で笑い、クラリスを見据えた。「私を捕らえたところで、何も変わらない。この国はすでに滅びの道を歩んでいる。私たち『黒い牙』はそのきっかけに過ぎない。」


クラリスはその言葉に動じなかった。「ならば、どうしてお前たちはこの国を狙ったの?何が目的なのかを教えてもらうわ。」


男は一瞬、考える素振りを見せたが、すぐに笑みを浮かべた。「ふん、どうせ時間の問題だ。話してもいいだろう。私たちの目的は単純だ。王国を揺さぶり、内部から崩壊させること。外部からの攻撃ではなく、内部の腐敗と混乱が進めば、王国は自らの手で崩壊していく。」


クラリスは男の言葉に耳を傾けながら、その背後にある真の意図を探っていた。彼の言葉には何か裏があるように感じた。


「つまり、お前たちは単なる道具で、他の者の命令を受けて動いていたというわけね?」クラリスは挑戦的に問いかけた。


男の顔が一瞬険しくなったが、すぐにまた冷笑を浮かべた。「そこまで分かっているのか。確かに、私たちはただの駒に過ぎない。だが、駒が動く限り、計画は進行し続ける。」


ヴィクターがクラリスの隣で冷静に言った。「誰がその計画を操っているのか。黒幕の名を明かしてもらおう。」


男はしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。「黒幕の名?それを教えたところで、お前たちがどうにかできるものではないだろう。だが、少しだけ楽しませてやろう。『影の公爵』――その名は聞いたことがあるか?」


クラリスはその名に聞き覚えがなかったが、隣のヴィクターが表情を険しくしたのを見逃さなかった。「影の公爵……あの男が黒幕なのか……」


クラリスはヴィクターの反応を見て、彼がその人物を知っているのだと確信した。「ヴィクター様、その男を知っているのですか?」


ヴィクターは頷いた。「ああ、影の公爵はこの国の裏社会を操ると言われている男だ。彼の名は表立っては知られていないが、密貿易や犯罪組織との関わりが噂されている。しかし、確かな証拠は今まで何も得られていなかった。」


クラリスはその言葉に衝撃を受けた。この国の裏で動いている影の存在が、ついに浮き彫りになりつつある。しかし、彼女はまだ確信を持つことができなかった。


「それが本当なら、あなたはその公爵の命令を受けて動いていたということですね?」クラリスは再び男に問いかけた。


男は薄く笑いながら答えた。「そうだ。そして、彼の計画はまだ終わっていない。私を捕らえたところで、すでに次の段階に進んでいる。お前たちはそれを止めることはできないだろう。」


クラリスはその言葉に不安を感じたが、冷静さを保ちながら尋問を続けた。「影の公爵が次に狙っているのは何ですか?首都への攻撃は阻止されたけれど、次の標的はどこなの?」


男は答えようとしたが、突然苦しそうに喉を押さえ始めた。その様子を見たクラリスは驚いて近づこうとしたが、ヴィクターが彼女を制止した。


「毒だ……!」ヴィクターは叫んだ。


「毒!?誰が……!」


「彼自身が口にしたのか、それともどこかで仕掛けられていたのかは分からないが、これ以上の情報は引き出せない……」ヴィクターは男の喉を確認したが、すでに手遅れだった。


男は最後に狂ったように笑い声を上げ、目の前で息絶えた。


クラリスはその場で立ち尽くし、握りしめた拳が震えているのを感じた。重要な手がかりが目の前で消えてしまったのだ。


「影の公爵……彼がすべての黒幕ということですね。次の標的は……」


「おそらく、さらに大規模な動きがあるだろう。しかし、今は手がかりが失われてしまった。」ヴィクターは深くため息をつき、クラリスを見つめた。「だが、私たちは彼を追い続けなければならない。」


クラリスは決意を固めた表情で頷いた。「そうね、これで諦めるわけにはいかない。影の公爵を突き止め、この国を守らなければならない。」



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尋問は失敗に終わったが、クラリスとヴィクターは新たな敵「影の公爵」の存在を掴んだ。この謎めいた人物が、王国の混乱の背後で操っていることは間違いない。しかし、彼が何を狙い、どのようにして王国を混乱に陥れようとしているのかは依然として謎に包まれていた。


クラリスは次の行動に出る決意を固めた。王国の未来を守るため、そして真の黒幕を追い詰めるため、彼女は新たな旅路に出発する準備を進めていく。



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