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第16話 港町での暗躍

クラリスとヴィクターは、影の公爵の手下らしき者たちを追い続け、港町の裏通りへと向かっていた。港町の繁栄の裏に隠された不穏な空気が、次第に濃くなっていくのを感じながら、二人は慎重に足を進めていった。


「この町の表の顔と裏の顔はまるで別物ね。」クラリスは静かに呟いた。昼間の賑わいとは打って変わり、裏通りに入ると薄暗い道と荒れた建物が並んでいた。貧しい者たちが集まる場所であり、無法者たちが暗躍するのには最適な環境だった。


「ここが影の公爵の手下たちが動いている拠点の一つかもしれない。気を抜かずに進もう。」ヴィクターが静かに返す。


二人は目立たないように歩きながら、影の公爵に繋がる情報を探り続けた。港の倉庫街に差し掛かった時、彼らの目に不審な光景が飛び込んできた。数人の男たちが、荷車に大量の荷物を積み込んでいた。それ自体は不自然ではなかったが、彼らの動きはどこか焦りを感じさせ、周囲を警戒するような様子だった。


「ヴィクター、あれを……」クラリスがそっと指差した。


ヴィクターはすぐに理解し、二人は物陰に隠れて男たちの様子を観察した。彼らはただの港の労働者ではないことは明らかだった。その慎重な動きや、倉庫の奥に隠れるように運び込む荷物の様子は、何か大きな陰謀が絡んでいることを示していた。


「彼らの動きが普通じゃないわ。何かを隠している……これが密貿易の証拠かもしれない。」クラリスは慎重に言った。


「その可能性は高いな。だが、もっと確実な証拠が必要だ。」ヴィクターは目を鋭くして男たちの動きを追っていた。


しばらく観察を続けていると、一人の男が何やら指示を出し、倉庫の奥へと向かった。クラリスとヴィクターはその後を密かに追い、倉庫の扉の隙間から中の様子を伺った。すると、そこで目にしたのは大量の密輸品だった。宝石、薬品、そして武器――明らかに違法に取引されているものが積み上げられていた。


「これが影の公爵の取引の一部ね……」クラリスはその光景に息を呑んだ。


ヴィクターは静かに頷き、「これを証拠として持ち帰り、王宮に報告すれば影の公爵に一歩近づける。だが、まだ彼の本当の拠点は見つかっていない。」と冷静に分析した。


二人は密かに証拠を抑えた後、倉庫を後にしようとしたが、その時、足元で小さな音が響いた。気づかれたかのように、男たちが一斉にこちらを振り向いた。


「誰だ!?」鋭い声が響き、男たちが剣を抜いて襲いかかってきた。


「見つかったわ!」クラリスは即座に剣を抜き、敵の攻撃を受け止めた。


「ここで捕まるわけにはいかない!」ヴィクターもすぐに剣を抜き、クラリスと共に応戦した。


男たちは精鋭の兵士というわけではなかったが、彼らの人数が多いこともあり、二人は劣勢に立たされそうになった。クラリスは冷静に敵の動きを見極め、素早く反撃に転じた。剣を振り下ろし、次々と男たちを倒していく。


ヴィクターもまた、彼の卓越した剣技を駆使して敵を次々に打ち倒していった。だが、次から次へと現れる男たちに、二人はじわじわと追い詰められつつあった。


「数が多いわね……このままでは、いくら私たちでも持たないかもしれない。」クラリスは息を整えながら言った。


「ここは一度撤退するしかないな。」ヴィクターは敵を蹴り飛ばしながら言った。「情報は十分に手に入れた。今は無理に戦うより、これを王宮に持ち帰ることが優先だ。」


クラリスは頷き、二人はその場から退却することを決断した。倉庫を抜け出し、男たちの追跡を振り切りながら、港町の奥へと走り去った。



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数時間後、二人は無事に港町を脱出し、ひとまず近くの安全な場所で一息ついた。ヴィクターが持ち帰った証拠を確認し、密貿易と武器の取引が行われていたことが確実であることが確認された。


「これで影の公爵に繋がる一つの糸を掴んだわ。」クラリスは疲れた表情ながらも、次の展開に向けての決意を固めていた。


「そうだ。これで彼の背後にある組織を突き止められるかもしれない。」ヴィクターも同意しながら、次の計画について話し始めた。「だが、これだけでは影の公爵を直接追い詰めるには足りない。彼が動いている証拠をさらに集める必要がある。」


「その通りね。」クラリスは立ち上がり、窓の外を見つめた。「彼が次に何を狙っているのか、その全貌を暴き出すために、もう一度王宮に戻り、次の手を考えましょう。」


二人はそのまま再び王宮へと向かう準備を整え、影の公爵のさらなる痕跡を追う決意を胸に、行動を再開した。





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