クラリスとヴィクターが港町から戻ると、王宮は夜の静けさに包まれていた。しかし、二人の心はすぐに次の行動を計画するために動き出していた。密貿易の証拠を手に入れた今、影の公爵の足取りをさらに追う準備が整った。しかし、彼がどのようにして王国の中枢へ介入しているのか、そして次にどこで何を狙っているのか、まだ多くの謎が残っていた。
王宮に到着した二人はすぐに重臣たちを集め、手に入れた証拠を報告することにした。クラリスは一刻も早くこの情報を共有し、影の公爵の陰謀を未然に防ぐ必要があると考えていたからだ。
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翌朝、重臣たちが王宮の会議室に集まり、クラリスとヴィクターが報告を始めた。港町での密貿易の現場を押さえたこと、そしてそれが影の公爵の指示によるものである可能性が高いことを説明すると、重臣たちは次第に深刻な表情を浮かべ始めた。
「これが証拠です。違法に取引されている武器や宝石が、大量に積み上げられていました。」クラリスは持ち帰った証拠品を見せながら続けた。「そして、その裏で影の公爵という人物が動いていることは間違いありません。これ以上、放置するわけにはいかないわ。」
ヴィクターも冷静に話を続けた。「彼の計画はこの王国の崩壊を狙っている可能性があります。国全体に広がる陰謀を防ぐために、私たちはただちに行動を起こすべきです。」
重臣たちは神妙な面持ちで耳を傾けていた。影の公爵の存在が確実であることが証明され始めた今、彼らも危機感を抱いていた。
「クラリス様、あなたの報告には感謝します。」一人の重臣が口を開いた。「しかし、影の公爵がどのようにこの国の中枢に入り込んでいるのか、まだその全貌は見えていません。彼の影響力がどれほどのものか、そして王宮内にまでその手が伸びている可能性も否定できません。」
クラリスはその言葉に頷いた。「確かに、影の公爵の手が王宮内部にまで及んでいるかどうかはまだわかりません。だからこそ、私たちは今、慎重に動く必要があります。彼を捕らえるために、私たちはできる限りの手を尽くさなければなりません。」
ヴィクターも重臣に向かって意見を述べた。「王宮の防衛を強化し、影の公爵の動きを監視するための体制を整えることが急務です。さらに、密貿易に関わっている可能性のある貴族や商人を調査し、彼の計画を止めるために必要な情報を集めるべきです。」
重臣たちは再び顔を見合わせたが、最終的にはクラリスとヴィクターの意見に賛同する形で決定が下された。
「よろしい、クラリス様、ヴィクター様。我々も協力を惜しみません。影の公爵を捕らえるために、王宮全体で動きましょう。」
こうして、王宮全体が影の公爵を追い詰めるために動き出した。王宮内の警備体制が強化され、情報収集のための密偵が各地に派遣された。クラリスとヴィクターは影の公爵の痕跡を探し出し、その動きを封じるために準備を整えた。
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その日の夕刻、クラリスは一人で王宮の庭を歩いていた。彼女の心の中には、次にどう動くべきかという重い責任感がのしかかっていた。影の公爵は強大な力を持っており、しかも彼の計画の全容はまだ明らかになっていない。それでも、彼女は恐れることなく、この国を守るために戦う決意をしていた。
「私は……必ず影の公爵を見つけ出す。そして、この国を守る。」
そう決意を新たにしていた時、背後から静かな足音が聞こえた。振り返ると、そこにはヴィクターが立っていた。彼もまた、深く考え込んでいる様子だった。
「クラリス様、何かお悩みですか?」ヴィクターは優しい声で尋ねた。
クラリスは少し微笑んで答えた。「ええ、少しだけね。でも、これからどうするべきかはもう決まっているわ。影の公爵を追い詰めるために、私は全力を尽くすつもり。」
ヴィクターは頷き、「私も同じです。彼の計画を止めるためには、私たちが率先して動かなければならない。そして、そのためにはもっと多くの情報が必要だ。」
「そうね。彼の手下たちを追い詰めるだけではなく、影の公爵自身の居場所を特定しなければならないわ。」クラリスは力強い声で答えた。
ヴィクターは少し考え込んだ後、提案を口にした。「次に動くべき場所として、もう一つの密貿易の拠点があるはずだ。以前から怪しまれている港の別の場所がある。そこを調査すれば、さらなる手がかりが得られるかもしれない。」
クラリスはその提案に頷いた。「それが次の目標ね。すぐに準備を整えて、そこに向かいましょう。」
二人はその場で決意を固め、次なる行動に向けて準備を進めることにした。影の公爵を追うための旅路は、まだ続いている。だが、クラリスはもう迷いを持っていなかった。彼女の中にあるのは、国を守るという強い決意と、ヴィクターと共に戦う覚悟だった。
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数日後、クラリスとヴィクターは再び港町へと向かっていた。影の公爵の動きを封じるために、今度こそ彼の居場所を突き止める覚悟を持っていた。
「私たちは必ず彼を見つけ出す。そして、国を守る。」クラリスは馬車の中で静かに誓った。
「そうです、クラリス様。私たちはすべての手がかりを元に、彼の計画を阻止しなければなりません。」ヴィクターもまた、固い決意を持っていた。
二人は再び港町に向かい、影の公爵を追い詰めるための新たな旅路を進み始めた。彼らの前には、多くの困難が待ち受けているだろう。しかし、クラリスは恐れることなく、進むべき道を見据えていた。
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