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第18話 迫る影の足音



クラリスとヴィクターは、影の公爵を追い詰めるための新たな手がかりを求め、港町へと再び向かっていた。馬車に揺られながら、クラリスは窓の外の風景を眺めていたが、その目はただ遠くを見るのではなく、影の公爵との対決を心に描いていた。


「影の公爵……一体どこにいるの?」クラリスは心の中で問いかけながら、手がかりを整理していた。


ヴィクターも同じように黙っていたが、その冷静な目の奥には強い決意が宿っていた。彼はクラリスの様子に気づき、少し優しい声で言葉をかけた。「クラリス様、私たちはこれまで多くの困難を乗り越えてきました。今回もきっと、影の公爵を追い詰めることができるでしょう。」


クラリスはその言葉に微笑んだ。「ありがとう、ヴィクター。あなたがそばにいてくれるから、私は前に進むことができるわ。」


その会話の後、二人は再び港町に近づいていった。前回の調査では、密貿易が行われている場所を特定したが、影の公爵の正確な居場所までは掴めなかった。今回はさらに深く潜入し、彼の真の拠点を見つけ出すことが目標だった。



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港町に到着した二人は、慎重に行動を開始した。昼間は目立たないようにしながらも、夜になると彼らは密かに港の倉庫街に足を運んだ。前回の調査から、密貿易が行われている可能性の高い場所は限られていた。彼らはまず、前回の証拠を基に再び倉庫を探索することにした。


港の空気は冷たく、夜風が吹き抜けるたびに薄暗い通りが静寂に包まれていた。だが、その静けさの中にも何か不穏なものを感じさせる雰囲気が漂っていた。


「ここに何かがあるはずだ。」クラリスはそう呟きながら、倉庫の扉にそっと手を掛けた。


ヴィクターが周囲を警戒しながら扉を開けると、前回の調査で見つけたのと同じように、違法な取引が行われている証拠が再び目に入ってきた。だが、今回はさらに大量の武器が倉庫内に積まれていた。


「これは……戦争の準備か?」ヴィクターは驚きを隠せなかった。


クラリスも同じく驚きながらも、その場に立ち尽くしていた。「これほどの武器が集められているということは、何か大規模な計画が進んでいる。影の公爵は、ただの犯罪者ではない……もっと大きな目的があるはずよ。」


その瞬間、倉庫の奥から物音が聞こえた。クラリスとヴィクターはすぐに身を隠し、様子を窺った。すると、数人の男たちが倉庫内に入ってきた。


「準備は整ったか?」その中の一人が、明らかにリーダー格の男に声をかけた。


「問題ない。すべては影の公爵の計画通りに進んでいる。」リーダーの男が答えた。


クラリスはその言葉に驚き、ヴィクターと視線を交わした。彼らがここにいるということは、影の公爵の次なる動きが間近に迫っている証拠だった。


「計画通り……一体、何が動いているの?」クラリスは心の中でつぶやいたが、今はその答えを知るために動く時ではなかった。


二人はその場を離れる決断をし、静かに倉庫を出た。彼らが得た情報は貴重だったが、まだ不十分だった。次に何が起こるのかを完全に突き止めるためには、さらなる手がかりが必要だった。



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その夜、クラリスとヴィクターは港町の宿に戻り、情報を整理していた。影の公爵が武器を集め、大規模な攻撃を計画していることは明らかだったが、その最終的な目的地や具体的な動きは依然として不明だった。


「彼の計画を阻止するためには、彼の居場所を突き止めるしかない。」クラリスは静かに言った。


「そうだ。だが、それにはさらに深い潜入が必要だ。」ヴィクターも同意し、次なる行動を考え始めた。「次に彼が動くとすれば、どこで何を狙っているのか……それを知る手がかりを得なければならない。」


クラリスは考え込んだ。「影の公爵が何かを狙っているのは明らかだけれど、彼は非常に慎重で、正体を明かさない。だからこそ、彼を追い詰めるのは難しいわ。でも、何か決定的な証拠があれば……」


その時、ヴィクターが急に顔を上げた。「一つ思い出したことがある。王宮にいるある貴族が、最近不審な動きをしていると噂になっていた。彼は影の公爵と何らかの繋がりがあるかもしれない。」


クラリスはその言葉に興味を示した。「その貴族は誰?」


「名前はサイラス伯爵だ。彼は最近、特に王宮の中で影響力を増している。彼の周りに集まる者たちの中には、密貿易や犯罪に関与していると噂される者もいる。彼が影の公爵と繋がっている可能性は高い。」


クラリスはすぐに決断した。「次に調査するべきは、そのサイラス伯爵ね。彼が影の公爵と関わっているなら、彼を突き止めれば計画全体が明らかになるはず。」


ヴィクターは頷き、計画をまとめ始めた。「サイラス伯爵の行動を調べるためには、王宮に戻る必要がある。彼の周囲を慎重に監視し、影の公爵との繋がりを明らかにしよう。」


こうして二人は港町で得た情報を元に、次なる手がかりを追うために再び王宮へ戻ることを決意した。影の公爵に迫るための新たな糸口を掴んだ今、彼らは決して止まることなく前進し続ける。



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