宙に、一歩を踏み出した。青空と地面の狭間で足が空を踏む。見えない地面を歩いていくように、神愛(かみあ)は空を歩き出す。一歩を踏み出すごとに足裏から黄金の波紋が広がった。それは空間を揺らし街と建物をも揺らしていった。
憑依合体(デュエット)モード。黄金の聖霊、ミルフィアを背後に控え神愛は白の外套を身に纏っている。巨大な都市を悠々と見渡せる高みに立ち、ビル群の屋上すら見下ろす空を闊歩(かっぽ)する。全身からは金粉でも散らすように金色の粒子を振りまきながら、神愛は神のように進んでいった。
その足が止まる。そして神愛は見上げたのだ。空に浮かんでいてもなお、その巨大さを確かめるように。
全長百メートルの神託物(しんたくぶつ)、メタトロン。石の彫刻のような白の巨人。その大きさと神々しいほどの迫力はまるで神話そのものだ。神愛はメタトロンの胸元辺りに立ち彼を見上げていた。メタトロンの、敵として。
悠然と立つメタトロンが拳を構える。これだけ巨大なものが動くだけで遠近感が錯覚を起こす。距離感がうまくつかめない。だがメタトロンの拳がそれだけで神愛の身長を超えるほど大きいことに変わりはない。
神愛は右手を握り込み、そこに黄金のオーラを集中させた。極限の神化(しんか)を拳に宿し神愛も構える。
メタトロンの拳がとんできた。まるで壁が迫ってくるかのような迫力に、神愛も負けじと拳を叩き付ける。
両者の激突に衝撃が空を走る。爆風はあらゆる建物のガラス窓をぶち破り、世界に轟音を響かせた。
神対神。
これより始まるは神域の闘い。無信仰者(イレギュラー)神愛(かみあ)と慈愛連立最大の神託物メタトロンの激闘が行われる。
世界が、変わろうとしていた。
――たとえなにがあろうと、俺たちはずっと友達だ