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19.少年団への入団

「さて、行くか!」


玉緒は本日の学校終わり、急いで自宅に戻って準備を進めた。すでに大川サッカー少年団には本日の入団する旨を伝えており、練習着が送られていた。玉緒はそれに着替えて、自転車で指定の場所へと向かった。


(大川サッカー少年団、どんな人達がいるんだろう?)


大川サッカー少年団、通称大川SS。守谷曰く、団員が現在11人を満たしていないために全国U—12サッカー大会予選への参加が見送りとなっていた。


(確か、俺達四人が加われば6年生抜きで11人を超える人数になるんだよな。来年は公式戦に参加かぁ。緊張するな)


今年度はもう大会がないが、11人揃ったのであれば来年度は公式戦に参加できる。そのため、現在の玉緒の目標は6月に関東少年サッカー大会の地方予選で勝つことであった。そしてその次は日本のサッカー少年が全力を注ぐもう一つの大会、10月に日本のサッカー協会であるJSAが開催する全日本Uー12サッカー大会で成績を残すことだった。


「おーい! 修斗!」


玉緒がそんなことを考えていると自転車に乗っている月岡と合流した。二人はそのまま自転車に乗りながら談笑をして練習場を目指していた。


「まずは来年の関東少年サッカー大会で優勝だな、修斗」


「優勝って、まずは初戦突破からじゃないか?」


「いや、俺達ならいける。修斗にはいろいろとサッカーのことを教えたし、キーパーには篤もいる。俺達がいれば強いと思うよ」


「・・・まぁ頑張るよ」


そんなことを話しているうちに大川SSが練習場として借りている人工芝の合同サッカー練習場にやってきた。


サッカーが根付いて以来、こういった人工芝の練習場が日本各地に建設されていた。主に玉緒達のような少年団や地域のサッカーイベントなどに使われている場所であり、大川SS以外にもサッカー少年団が借りている場所だった。


(大川は・・・あっちだな)


「おー、来たか。修斗、翔真」


「こんにちは、篤。あれ? 健太郎は?」


「あぁ、あいつならほら。もう走っているぞ」


先に来ていた星島が指した方向へ玉緒が見ると、すでにランニングをしている守谷がいた。守谷はやる気万全のようであった。


「じゃあ俺達も加わるか」


玉緒の掛け声で月岡と星島は守谷のランニングに付き合うことになった。それから玉緒達は時間まで周囲をランニングすることにした。


「で、来年の関東大会の目標は?」


「そりゃ優勝でしょ、篤」


「そうだな! 修斗に翔真、篤にそして俺がいれば間違いないだろ!」


「まぁそうだな。でも健太郎はもう少し上手くならないといけないぞ。少しはまともになったとはいえ、この半年で鍛えないとな」


星島の質問に月岡が答えた。星島も月岡と同じで来年の関東大会で優勝する気があった。それは守谷も同じだったが、守谷は星島にもっと上手くなれと言われて、表情をしかめた。


「てか、まずはこのチームの状況を見るほうが大事だな」


「? どういう事、篤」


玉緒は星島の言っていることが分からなかった。そんな玉緒に星島は説明をした。クラブチームと違い、スポーツ少年団はあくまでもスポーツを通して子供の健康と心身の成長の手助けをすることが目的となる。つまり、勝ち負けは二の次というところが多いということを。従って、チームがどれほど勝利に貪欲なのかわからないと伝えた。


「勝利はよりそれに貪欲な方が持っていく。チームが勝利を目指していないと勝てるものも勝てないからな」


「ふーん、でもそれはしょうがないんじゃない?」


「? なんでだ?」


「だって勝利とか目指している人って基本的にクラブチームとか行こうとするじゃん。それに大川SSって人数ギリギリ何でしょ? そんなところ選ぶかなぁって思ってさ」


「まぁそうだな。そこは俺達で変えていくしか無いか」


「あぁ、それなら安心していいよ。修斗、篤。俺が事前に調べて、その上で入団しようとしたからさ」


「「?」」


星島は玉緒の言葉に納得をして、自分たちで意識を変えていくしか無いと思っていた。しかし月岡はその心配はないことを伝えた。玉緒は月岡の言葉に引っかかったが、時間までランニングをすることにした。


■■


「よし! みんな集まったな! 今日は四人の新加入してくれたメンバーを紹介するぞ! まず先に新メンバーに私の紹介をするが、私は監督の大川詩織おおかわしおりだ! そして右の女性が山崎綾香やまざきあやか、左が前田忠まえだただしだ。二人共うちの大川スポーツ用品店のスタッフでこのチームをサポートをしてくれている。よろしくな!」


大川SSの監督は女性であった。監督と言うにはいささか若いという印象を玉緒達は受けた。そして玉緒は大川に言われたように選手達に向けて自己紹介をした。


「月岡翔真です! 親の引っ越しでスペインのバルセロナから来ました! ポジションはMFです! 主にトップ下とかをやっていました!」


「星島篤。翔真とはスペインのバルセロナで一緒でした。ポジションはGKです」


「守谷健太郎です! サッカーは初心者ですが、頑張りたいと思います! ポジションはDFやらどこでもやるつもりです! よろしく!」


「玉緒修斗です。えーと、俺も初心者です。希望ポジションは一応FWです。よろしくお願いします」


自己紹介が終わると、案の定月岡と星島に注目が集まった。スペインというサッカーの本場で経験のあることはやはり注目の的になるのだと玉緒は思っていた。


「ほう、スペインからか! 頼りになるな! うちは他のスポーツ少年団と違って実力主義だから先輩後輩関係ない。死ぬ気でスタメンを勝ち取ってよ! 目指せ、二次リーグ進出だ!」


(なるほど、翔真はこれを知っていたんだな)


大川SSは少年団では珍しい勝利を目指しているチームであると説明があった。そのため、実力主義でスタメンを決めるのだと玉緒達に教えた。


(ていうか、女子もここに入るんだな。女子は女子サッカークラブか少女団に入るかと思った)


玉緒は正面にいた女子に目が行っていた。ボブヘアで美少女という印象を玉緒は受けた。もしかしたら早乙女にも負けないかもと思ってしまった。


「よし! メンバーの挨拶とかは明日行うから、今日は入団したみんなの実力とか今のメンバーの成長とかいろいろと知りたいから今日はフィジカルテストね。50m走とかドリブルダッシュとかコーンドリブルとかいろいろ見させてもらうわ」


「「「「「「「「はい!」」」」」」」


大川SSの面々は早速大川監督の指示でフィジカルチェックをするための準備をして、そのまま男子はペアでストレッチを行い、女子は監督とストレッチをしていた。その後番号が書いてあるリブスを着て、フィジカルテストが始まった。

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