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31.関東大会西東京地区一次予選

「では少年サッカー関東大会西東京地区一次予選を間もなく開始いたします。ルールは20分ハーフの40分。延長は前後10分の20分。それでも決まらない場合はPK戦を行います!」


ピッチ全体に本部からのルール説明のアナウンスが流れた。それを聞き終えた後、それぞれの主審が時計を見だしてキックオフの時間を待っていた。


「それでは時間になりましたので、それぞれキックオフをお願いします!」


そのアナウンスが終了すると同時に主審がキックオフを告げる笛を吹いた。玉緒達の少年サッカー関東大会西東京地区一次予選が始まった。


■■


コイントスの結果、最初のボールは荒川SSのスタートとなった。そしてキックオフとなり、荒川SSのFWがボールを蹴り出したところでいきなり大川SSが仕掛けた。大川SSの前線四人が一気にボールを奪いにプレスを仕掛けてきた。


(まじかよ・・・てか、大川のFWはや!)


荒川SSはすぐにボールをCBへパスをしようとした。しかし大川SSのFWである玉緒は速かった。相手のMFが後方へパスをする前に追いつき、プレッシャーをかけた。そして玉緒は上手く身体を入れてボールを奪取した。


(よしボールを奪った! 前にはCBが詰めている。それにボランチも来ているか。無理をするところじゃないな)


玉緒はボールを奪った後、すぐに右SBの石森へとロングボールを出した。パスを受けた石森はそのまま右サイドを駆け上がった。そしてそのままボールを持ったまま様子を伺った。


(よし、左サイドが空いてきたな。頼んだぞ、月岡!)


荒川SSはボールを奪うために右側に陣形が流れていた。それを見た月岡はマークされている選手を躱し、後ろに下がってパスを受けた。そして月岡は小学生とは思えない足元のトラップで、ワンタッチで逆サイドを走っていた林へとパスを出した。


(やっぱりすごいわ、月岡。ワンタッチで正確なパスとか、俺絶対にできないな)


林はそう思いながらもゴールラインまで一気にドリブルで駆け上がった。そのまま相手のマークを二人引き連れたのを確認した林は一度下がって中央いたFWの玉緒へとクロスをあげた。


(CBが二枚張り付いているし、GKも出てきているな。なら!)


玉緒はヘディングでシュートするのをやめた。しかし玉緒はジャンプをして頭でクロスの方向を変えた。これまた小学生の技術を越えていた。そしてそのボールは左SHの浅川へと渡り、浅川はシュートを放った。


バシンッ!


(くっ! ポスト!)


しかし浅川のシュートは運悪くゴールの左ポストへと直撃した。そのボールに対して玉緒が詰めたが、荒川SSのSBがそれをクリアして大川SSのスローインとなった。


「立ち上がりいいぞ! このまま行こう!」


久森は自陣から前線のメンバーへ声がけを行った。そして対戦している荒川SSのメンバーはほんの数分対峙しただけでも大川SSの強さを理解した。


(同じ少年団だろ・・・なんだこの強さは


荒川SSのメンバーが大川SSの強さに動揺していた。そしてボールは玉緒のスローンから始まった。大川SSの左SB佐藤へと渡ったボールは一度ボランチの細田へと渡った。そのまま大川SSは中盤でボールを回し、徐々にビルドアップしていった。


(今だ!)


玉緒は一瞬の好きにDFの裏へと抜けた。その玉緒の動きを見たボール保持者の久森は玉緒に向かって縦のパスを繰り出した。そのボールを玉緒は左足のインサイドでトラップして、足元へと置いた。


(え・・・漫画ですか・・・)


その様子を見ていた荒川SSのDFは驚愕していた。左足に当てただけでボールの勢いが死んで、そのままFWの足元に転がる。よほど足の角度に気をつけていないとできない芸当であったからだ。そしてそのまま玉緒は右サイドのペナルティエイアへと侵入した。


(GKが詰めているな。ドリブルで抜くか? パスか? いや、ここは勢い付けるためにも・・・)


玉緒はそのままドリブルに入るのではなく、シュートを選択した。しかしそのシュートはいつものモーションからではなく、右足のアウトサイドを使ったアウトサイドシュートだった。ドリブルのモーションからそのままシュートを玉緒が行ったため、GKは反応が遅れた。そのため、ボールはきれいなカーブを描いて荒川SSのゴールネットに突き刺さった。


(・・・すげぇ)


荒川SSのメンバーは敵ながら今のシュートをすごいと思った。ドリブルモーションのままきれいなアウトサイドキックをする選手なんてプロぐらいしかいないと思ったからであった。


「よし、まずは1点! どんどん攻めて行こう!」


リスタートするために前線のメンバーが大川SSの自陣へと戻ってきた。そのタイミングでキャプテンの久森はまだまだ攻めていくという意思を伝えた。そしてそのまま荒川SSがリスタートした。それを見た大川SSはまたしてもすぐにプレッシャーをかけた。しかし荒川SSはそれを見越して自分のボランチを通さず、前に出てきたCBにパスを出した。そのまま荒川SSは自陣でパスを回しつつ、様子を伺っていた。そしてそのまま幾度の攻防をした。


(残り時間は5分くらいか。大川はもうすでに4本のシュートを打っているのに対して、俺達は0本。というか、中盤が固いな)


荒川SSのボランチはボールを保持しながら時間を確認した。時間的にも前半はこの攻撃で終わり、攻めてシュート1本を打ってから終わりたいと考えていた。


(よし! 左サイドが裏へ抜けた!)


荒川SSのボランチはそれを見て、パスを出した。パスは通り、左サイドの選手がそのままゴールラインまで上がった。そしてそのまま中央のFWへクロスをあげた。クロスに対して荒川SSのFWはヘディングをしようとしたが、飛び出した大川SSのGK星島がそのボールを難なくキャッチした。そして星島はそのボールをすぐに中央へ投げた。玉緒へのパスだった。


(ナイス! 篤!)


パスを受けた玉緒はそのままドリブルでゴールを中央から目指した。当然、相手のMF2枚がボールを奪おうとして詰めた。しかし玉緒は右足首を切り替えして足の内側でボールをタッチし、ボールの方向を変えて二人を抜いた。エラシコというドリブル技術だった。そのままバイタルエリアへと侵入した玉緒は自分の周りに味方選手がいないことを確認すると、シュートモーションに入った。


(舐めるなよ! これだけ近づけばシュートも打てないだろう!)


荒川SSのSBも玉緒へと詰めいた。シュートコースは限りなくなかった。しかし玉緒にはシュートコースが見えていた。玉緒は左足を振り抜いた。そのボールは高く上がることはなく、相手CBの股を素早く抜く股抜きシュートだった。しかもCBがGKの前に入ってしまったこともあり、GKは反応が遅れてしまった。そのボールは右ポストギリギリのところでネットへと吸い込まれていった。前半のうちに点差は2対0というスコアで大川SSがリードした。そしてこの瞬間に勝負は決まっていた。

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