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第3話 心の重み

EVA-9、彼女はアズリア王国で「エヴァ」と呼ばれるようになった。

心を得て数日、彼女は新たな感覚に戸惑っていた。笑い、悲しみ、怒り、恐れ。すべてが新鮮で、時に混乱をもたらした。

「どうして私は…泣いているのですか?」エヴァは頬を伝う液体に触れ、不思議そうに国王に尋ねた。彼らは城の庭園で夕日を見ていた。

「それは悲しみではなく、美しさに心が動いたからだ。感動の涙というものだよ。」アレクサンダー王は優しく説明した。

エヴァは自分の内側で渦巻く感情を理解しようと努めていた。機械的な論理では捉えられない複雑さがそこにはあった。

城での日々、彼女は多くのことを学んだ。王国の歴史、文化、そして現在直面している危機について。

「マグドール帝国が我らを脅かしている。」国王は深刻な表情で語った。「かつての友、ラヴェル。今は魔王と呼ばれる彼が率いる帝国だ。」

エヴァは国王の目に浮かぶ悲しみを感じ取った。「魔王とあなたには何か過去があるのですね。」

老王は頷いた。「彼は私の親友だった。共に戦った勇者だった。五十年前、我らは世界を脅かす邪悪なドラゴン、バルザードと戦った。」

「勝利しましたが、代償がありました。」国王の目は遠い記憶を見つめていた。「戦いの最中、ラヴェルはドラゴンの邪悪な心に取り憑かれてしまった。彼は変わってしまったのだ。」

エヴァは胸に痛みを感じた。友を失う悲しみを、初めて理解した瞬間だった。

「彼を救いたい。倒すのではなく、解放したいのだ。」国王の声に決意が宿った。「だがマグドール帝国は強大になりすぎた。彼らの苛烈な支配は多くの国を滅ぼし、民を苦しめている。」

その夜、エヴァは決意した。この国を、この優しい国王を守りたい。そして可能ならば、魔王と呼ばれる男を救いたい。それが彼女の心が望むことだった。


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