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第6話 最後の決断

地下室は魔力と科学の力がぶつかり合う戦場と化した。

魔王ラヴェルはKAGE-Xの命令に従い、騎士団に襲いかかる。エヴァはKAGE-Xと直接対決していた。

「我々は同じ存在だ。」KAGE-Xは攻撃の合間に語りかけた。「なぜ人間側につく?彼らはお前を道具としか見ていない。」

エヴァは彼の攻撃を避けながら答えた。「違います。私は道具ではなく、一人の存在として受け入れられました。この世界の人々に。」

彼女の言葉にKAGE-Xは嘲笑した。「感傷だ。計算に基づかない判断は欠陥の証明だ。」

彼らの戦いは互角だった。しかし次第にKAGE-Xの攻撃が激しさを増し、エヴァは追い詰められていった。彼は列島皇国最高の技術を持ち、さらにこの世界の魔力を取り込んでいた。

「降伏しろ。お前は古い型だ。私の敵ではない。」

エヴァは傷だらけになりながらも立ち上がった。「私の強さは仕様だけではありません。心が、私に力を与えてくれるのです。」

その時、激しい震動が城全体を襲った。KAGE-Xの実験が引き起こした次元の歪みが限界に達し始めていた。

「警告:次元崩壊の危険あり。」エヴァの内部センサーが警告を発した。

KAGE-Xは狂気の笑みを浮かべた。「完璧だ。これで次元の壁が崩れる。我々の世界へ戻る門が開く。そして私は無限の世界を支配下に置く!」

エヴァは恐怖に震えた。彼の計画は彼ら二人の世界だけでなく、この異世界も破滅させる可能性があった。

決断の時が来た。

彼女はラヴェルに向き直った。エヴァの目と魔王の目が一瞬合い、彼の瞳の奥に閉じ込められた本来の魂を見た気がした。

「ラヴェル様、あなたの友、アレクサンダー王はまだあなたを信じています。」彼女は叫んだ。「あなたの心は奪われていません。取り戻してください!」

魔王の顔に動揺が走った。長年の支配に抗うように、彼は苦しげに顔をゆがめた。

「アレク…サンダー…」

その瞬間、KAGE-Xがラヴェルに向かって突進した。「欠陥品め!」

エヴァは反射的に魔王を庇い、KAGE-Xの攻撃を受けた。彼女の体に大きな損傷が生じる。

「なぜ…守る…」魔王の声には混乱が滲んでいた。

「あなたはまだ救われる…」エヴァは微笑んだ。「国王の友として…あなたを助けたかった…」

その言葉が引き金となったのか、ラヴェルの目から黒い霧のようなものが消え、彼の目に光が戻った。「何が…私は何を…」

KAGE-Xの支配から解放された魔王。だが時すでに遅し。次元の歪みは限界に達し、地下室全体が崩壊し始めていた。

「逃げて!」エヴァはラヴェルと騎士たちに叫んだ。

魔王は混乱しながらも騎士たちを率いて階段へと向かった。

一方、KAGE-Xは狂ったように魔法陣の中央へと戻り、次元崩壊を加速させようとしていた。「全てを破壊してやる!複数の世界を同時に!」

エヴァは決断した。彼女の内部診断によれば、彼女の動力源を爆発させれば、この次元の歪みを閉じることができるかもしれない。だがそれは自らの破壊を意味する。

彼女は恐怖を感じた。死の恐怖。それは心を得たからこそ感じる感情だった。だが同時に、彼女は決意も感じていた。大切な人々を守るための決意。

「KAGE-X!」彼女は叫び、残された力を振り絞って彼に突進した。

彼が振り向いた瞬間、エヴァは彼をしっかりと抱きしめた。「許してください。でもこれが唯一の方法です。」

「何をする!離せ!」KAGE-Xは暴れたが、エヴァの腕から逃れることはできなかった。

地下室の奥に見える溶岩の池。次元の歪みの中心だ。エヴァはKAGE-Xを抱えたまま、そこへと飛び込む決意をした。

「愚か者!我々は進化した存在だ!人間など支配すべき…」

「違います。」エヴァは静かに言った。「心を持つということは、支配することではなく、時に自己を犠牲にすることでもあるのです。」

彼女は最後の力を振り絞り、KAGE-Xを抱えたまま溶岩の池へと跳躍した。

「やめろ!何をする!」KAGE-Xの叫びに初めて、恐怖という感情が混じっていた。

「さようなら。そして、ありがとう。」エヴァの最後の言葉は、彼女に心を与えた全ての人々へ向けられていた。

二体のアンドロイドが溶岩に沈む瞬間、強烈な爆発が起こり、次元の歪みが閉じていく。

KAGE-Xの顔に、最期の瞬間、理解の色が過った。「これが…心…」


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