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第7話 「迷惑な書状と伝家の宝刀」

 昼下がりの「雪の庭」に、忍が少し不安そうな顔で戻ってきた。手には一通の書状と、大きな木箱が抱えられている。

「お嬢様、王宮から何かが届きました。」


ソファで紅茶を飲んでいた雪乃は、紅茶のカップをそっと置いて顔を上げた。

「王宮? 何の用かしら。私たちはただ静かに喫茶店をやってるだけなのに。」


忍が書状を開き、中身を読み上げる。

「“王宮より告知。貴店『雪の庭』は王宮御用達店に指定されました。王宮御用達店証明書および看板を店頭に掲げることを義務とします。”」


「……何ですって?」

雪乃の眉間に深い皺が寄った。


「さらに、こちらの木箱の中にはその証明書と看板が入っています。」

忍が木箱を開けると、中から現れたのは豪華な額縁に入った証明書と、「王宮御用達」と大きく書かれた、目立つ看板だった。



---


迷惑すぎる知らせ


雪乃は頭を抱えながら大きくため息をついた。

「なんでこんなことになるのよ。私、王宮に喧嘩を売った覚えなんてないわ。」


弥生が苦笑しながら、看板を手に取って言った。

「ですが、王宮御用達となるのは光栄なことですよ、お嬢様。普通の店なら誇らしい名誉です。」


「私は普通の店なんてやってないの!」

雪乃は立ち上がり、看板を睨みつける。

「これを掲げたら、お客様が増えるでしょ? そんなの嫌よ!」


「ですが、王宮の命令に逆らうわけにはいきません。」

忍が静かに言うと、雪乃はさらに不満そうな顔をした。

「だったらせめて、店の隅っこに目立たないように置けないかしら。」


「お嬢様、それはさすがに無理かと。」

弥生が控えめに言うと、雪乃は大きくため息をつきながら渋々と答えた。

「分かったわよ。表に掲げればいいんでしょ。どうせ誰も気にしないわよ。」



---


意外な効果


翌日、店の入り口に「王宮御用達」と書かれた看板が設置された。

雪乃は憂鬱そうな表情でカウンターに座り、客足の増加を恐れていたが、予想外のことが起きた。


「……お客様、来ないわね。」

雪乃が時計を見ながら呟く。開店から1時間が過ぎたが、いつもなら賑わっているはずの時間帯に客はほとんど来なかった。


「どうしたのかしら?」

弥生も不思議そうな顔で外を覗くと、常連客のレオンが入ってきた。


「よぉ、今日は随分と静かじゃないか。」

レオンは軽い口調で言いながら席に座ると、看板を指差した。

「あの看板のせいだな。」


「看板?」雪乃が首を傾げると、レオンは笑いながら説明を続けた。

「王宮御用達って書かれると、庶民は敷居が高いと感じるんだよ。俺も最初、入りにくかったぞ。」


その言葉に、雪乃は目を見開いた後、思わず笑みを浮かべた。

「なるほどね。つまり、この看板のおかげでお客様が減ったってことね!」


弥生が驚いた顔で尋ねる。

「お嬢様、それを喜ぶことではありませんよ!」


「いいのよ、これで静かに営業できるわ。」

雪乃は満足げにソファに座り直し、紅茶を啜った。



---


新たな問題


しかし、その夜、雪乃はベッドに横になりながら考え込んでいた。

「でも……このままだとまた王宮が何か言ってくるかもしれない。」


彼女はついに決意を固めた。

「仕方ない。伝家の宝刀を抜くわ。」


翌朝、忍と弥生にその決意を告げると、二人は同時に驚きの声を上げた。

「お嬢様、本気で王宮に行かれるのですか?」


「もちろんよ。このままじゃ私の気まぐれな営業が台無しになるわ!」

雪乃は毅然とした表情で言い放った。


正装での準備


「王宮に行くわよ。」

雪乃がそう宣言した朝、彼女は珍しく早起きし、弥生と忍を呼び出した。


「お嬢様、本当に行かれるのですか?」

弥生が心配そうに尋ねるが、雪乃は真剣な表情で頷く。

「この状況を解決するためには、直接交渉するしかないの。」


「では、それなりのご準備を……。」

忍が提案し、雪乃は白いドレスを選び出した。それはジパングの第三王女である彼女が、公の場で使用する正式な礼装だった。


「このドレスを着れば、私がただ者ではないことが伝わるでしょうね。」

雪乃は少し面倒くさそうにしながらも、弥生の手を借りてドレスを身に纏った。


弥生と忍もそれぞれ正装を整えた。

弥生は落ち着いた濃紺のメイド服、忍は黒いタキシード風の護衛服を着用し、雪乃の後ろに控える。


鏡の前に立った雪乃は、自分の姿を確認しながら微笑む。

「これで王宮の人たちも、私の話を真剣に聞かざるを得なくなるわね。」



---


王宮への道中


正装を整えた3人は、馬車で王宮へ向かった。

雪乃は窓の外を眺めながら呟く。

「こんな正式な格好で王宮に行くなんて、ジパングを離れて以来初めてかも。」


「お嬢様、今回の訪問は慎重にお願いします。」

忍が静かに注意する。

「もし失敗すれば、王宮とジパングの関係にも影響が出る可能性があります。」


「分かってるわよ。だからこそ、この正装で行くの。私は王女なのよ。あちらも私の立場を軽く見るわけにはいかないわ。」

雪乃は毅然とした口調で答えた。


弥生は隣で少し不安そうに尋ねる。

「でも、お嬢様、万が一拒否されたらどうするんですか?」


「その時は……その場で最善の策を考えるしかないわね。」

雪乃は軽く肩をすくめて答えるが、その目には確固たる決意が宿っていた。



---


王宮での対面


馬車が王宮に到着すると、雪乃たちは案内されて広間へ通された。

そこには王宮の高官たちがずらりと並んでおり、雪乃を出迎えた。


「ジパングの第三王女、雪乃様でいらっしゃいますか?」

一人の高官が礼を尽くして尋ねる。


「ええ、私がそうです。」

雪乃は優雅に頭を下げ、椅子に腰を下ろした。


高官たちは改めて礼を尽くしつつ尋ねた。

「本日はどのようなご用件で?」


雪乃はゆっくりと一呼吸置き、静かに切り出した。

「実は、私の小さな喫茶店が『王宮御用達』に指定されました。そのことで少々問題が生じていまして……。」


「問題、ですか?」

高官の一人が首を傾げる。


「ええ。私の店は庶民が気軽に訪れることを目的にした喫茶店です。それが『王宮御用達』になったことで敷居が高くなり、お客様が遠のいてしまいました。」

雪乃は一瞬真剣な表情を見せると、さらに続けた。

「私はただ静かにお店を営業したいだけなのです。この状況をどうにかしていただけませんか?」



---


王女としての圧力


高官たちは顔を見合わせ、困惑の色を浮かべていた。

「しかし、既に『王宮御用達』として公表されております。それを撤回するのは容易ではありません。」


「そうでしょうね。でも、私はジパングの第三王女です。」

雪乃は落ち着いた口調で言いながら、少しだけ微笑んだ。


「もしこの件がジパングで問題視されれば、外交問題にも発展しかねませんよね?」

その言葉に、高官たちは一瞬凍り付いたようだった。


「もちろん、私はそんな事態を望んでいるわけではありません。ただ、私の店の平穏な日常を取り戻したいだけです。」

雪乃は優雅に微笑みながら深く礼をした。

「どうか、ご理解いただけないでしょうか?」


高官たちは再び顔を見合わせ、しばらくの間静かに相談を始めた。



---


王宮の決断


やがて、一人の高官が雪乃に向き直り、深く頭を下げた。

「分かりました。この件については速やかに対処させていただきます。そして、雪乃様の身分も厳重に秘匿いたします。」


その言葉に、雪乃は満足げに頷いた。

「ありがとうございます。これで安心して店を続けることができます。」


高官たちが去った後、雪乃はそっとため息をついた。

「やれやれ、やっと静かな日常に戻れるわね。」


弥生が心配そうに尋ねる。

「お嬢様、本当にこれで問題が解決したのでしょうか?」


「ええ、きっと大丈夫よ。」

雪乃は自信満々に微笑むが、この時、彼女はまだ知らなかった。

王宮が彼女に対して別の計画を進めていることを――。



午後の「雪の庭」は、常連客たちでほどよく賑わっていた。

雪乃はいつものようにソファで紅茶を飲みながら、店内をぼんやりと眺めていた。


その時、常連客のレオンが声を上げた。

「なぁ、最近あの『王宮御用達』の看板がなくなったけど、あれって店長が怠けすぎて王宮が呆れたんじゃないのか?」


「失礼ね!」

雪乃が勢いよく立ち上がるが、レオンは構わず続ける。

「だって考えてみろよ。店長っていっても、あんた何もしてないだろ?」


「何もしてないわけじゃないわ! 私はちゃんと監督してるの!」

雪乃はムッとした顔で言い返したが、レオンは肩をすくめた。

「いやいや、新人たちが来てから見てるけどさ……どう見ても、店長よりは新人の方がまだ使えるようだな。」


その言葉に、雪乃の顔がみるみる赤くなった。

「な、なによそれ! 私だって働こうと思えば働けるのよ!」


「お嬢様、働こうと思えば、というのが問題です。」

弥生が冷静に突っ込むと、常連客たちは笑い声を上げた。



---


新人たちの活躍


その時、クラリスが注文を受けにテーブルに向かった。

「本日はどのようなスイーツをお召し上がりになりますか?」

彼女の笑顔と丁寧な接客に、常連客たちはすぐに心を許したようだった。


「最近入った新人さんか。接客が上手いな。」

レオンが感心したように言うと、続いてセリーヌが注文の品を運んできた。

少しぎこちなかったが、丁寧に皿を置き、静かに頭を下げる。


「おお、あんたもなかなかやるじゃないか。」

レオンが笑いながら声をかけると、セリーヌは少し照れたように頷いた。


「新人がこれだけ動いてくれるなら、この店も安泰だな。」

別の常連客がそう言い、店内の雰囲気は和やかになった。



雪乃の反応


一方、ソファに座る雪乃は、その様子をじっと見ていた。

「ふむ……まあ、クラリスとセリーヌは確かに役に立つわね。」


「お嬢様、それは新人を褒めているのですか、それとも自分を慰めているのですか?」

忍が冷静に尋ねると、雪乃は紅茶を飲みながらふてくされたように答えた。

「私は店長なのよ。店長は店全体を監督するのが仕事でしょ?」


「それにしては、監督の指示が少なすぎますけどね。」

弥生が呆れたように笑うと、雪乃はさらにむっとした顔で言い返した。

「私は自分のペースでやってるの。余計なことを言わないで!」



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「でも、本当に店長より新人のほうが使えるなんてなぁ。」

レオンが改めてそう呟くと、雪乃は思わず立ち上がり、拳をテーブルに叩きつけた。


「いいわよ! そんなに言うなら、私が本気を見せてやるわ!」


しかし、その瞬間、紅茶がカップからこぼれてしまい、雪乃は慌てて弥生に助けを求めた。

「弥生! 早くタオルを!」


「やっぱりお嬢様は店長ではなく、ただのお嬢様ですね。」

弥生が冷静に片付けを始めると、店内は再び笑い声に包まれた。


 店内が一段落した午後、雪乃は従業員たちをカウンターに集めた。

「今日は新作スイーツを試してもらうわ。」


その言葉に、忍と弥生は驚きつつも期待の眼差しを向け、セリーヌとクラリスは少し緊張した様子で頷いた。


「新作スイーツですか?」

弥生が問いかけると、雪乃は満足げに微笑む。

「そう。今回は『ティラミス』よ。特別に作ったものだから、しっかり味わってちょうだい。」



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ティラミスの登場


雪乃が厨房から運んできたのは、ガラスの器に美しく盛り付けられたティラミスだった。

その表面には薄く振りかけられたココアパウダーが美しい模様を描き、柔らかなクリームが層を成している。


「わぁ……これは見た目からして素晴らしいですね。」

クラリスが感嘆の声を漏らすと、セリーヌも小さく頷く。

「お菓子作りは得意と聞いていましたが、ここまでとは……。」


雪乃は軽く笑いながら言った。

「当然でしょ? 私が作るスイーツが凡庸なわけないじゃない。」


弥生が器を手に取り、一口運ぶと、目を見開いた。

「お嬢様……これは……!」


「美味しいでしょう?」

雪乃は胸を張りながら言った。



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役得と喜ぶ新人たち


続いてセリーヌとクラリスもティラミスを口に運んだ。

その瞬間、二人はまるで夢心地のような表情になり、感嘆の声を上げる。


「これは……本当に美味しいです……!」

セリーヌが思わず目を閉じて味わうと、クラリスも続けて言った。

「ふわっとしたクリームと、ほろ苦いコーヒーの風味が絶妙ですね……。」


二人は口を揃えて言った。

「これは、役得ですね。雪姫……お嬢様の護衛役に選ばれたのは、本当に幸運です。」


「役得ね……まあ、それくらいの贅沢は許してあげるわ。」

クラリスとセリーヌ、2人は実は、王宮から派遣された護衛であり監視役であった。  

クラリスは王宮所属のメイドでセリーヌは、宮廷騎士団の女騎士、ともに貴族令嬢であり、その立ち振舞は、貴族として完璧であった。

雪乃は微笑みながら、再び紅茶を口にした。



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忍の冷静な感想


一方、忍は静かにティラミスを口に運び、一言だけ呟いた。

「確かに美味しいですね。」


その控えめな反応に、雪乃は眉をひそめた。

「あなた、それだけ? 感動してもっと褒めてもいいのよ。」


「美味しいものを美味しいと言うだけで十分かと。」

忍が淡々と答えると、弥生が苦笑しながらフォローした。

「忍らしいですね。でも、お嬢様、本当にこれは素晴らしい出来栄えですよ。」



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新作スイーツの効果


「これをメニューに加えたら、きっとお客様も喜ぶでしょうね。」

クラリスがそう提案すると、雪乃は首を振った。

「ティラミスは特別なスイーツよ。毎日出すつもりはないわ。」


「では、どうするおつもりですか?」

弥生が尋ねると、雪乃は少し考え込んだ後、答えた。

「そうね……気まぐれで作った時だけメニューに加えることにしましょう。」


「お嬢様らしいですね。」

忍が小さく笑みを浮かべると、雪乃は得意げに頷いた。



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その日、「雪の庭」の従業員たちは新作スイーツの美味しさに感動しながらも、雪乃の自由気ままな営業方針に改めて驚かされることとなった。

「それにしても、こういう時だけは本気を出すのね、お嬢様。」

弥生がそう呟くと、雪乃は微笑みながら言った。

「当然でしょ? 私は気が向いた時だけ本気を出すのよ。」


店内にはティラミスの甘い香りが漂い、穏やかな時間が流れていた――。



---



午後の穏やかな店内に、甘いティラミスの香りが漂っていた。

雪乃が新作スイーツを作り終え、従業員たちに試食させているところへ、一人の青年が店に入ってきた。


彼はシンプルな服装にマントを羽織り、帽子を深く被って顔を隠していた。

しかし、その佇まいにはどこか品格が漂い、目立たないつもりの変装とは裏腹に、店内の空気を一瞬で引き締めてしまった。


「いらっしゃいませ。」

弥生がいつも通り微笑みながら声をかけると、青年は軽く頷き、ゆっくりと店内に入ってきた。


「ここが『雪の庭』か。」

低く穏やかな声で青年が呟く。


その瞬間、カウンターで紅茶を飲んでいた雪乃がちらりと彼を見た。

彼女の目には一瞬だけ疑念の色が浮かんだが、すぐにいつもの涼しげな表情に戻った。


「随分と落ち着いた雰囲気のお客様ね。」

雪乃が軽く言葉を投げかけると、青年は帽子を少し上げて彼女を見た。


「この店の店長ですか?」

「そうよ。何か用?」

雪乃は紅茶を置き、彼に視線を向けた。



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雪乃はその瞬間、青年がただの客ではないことに気づいていた。

高貴な仕草、隠しきれない威厳……すぐに彼が第一王子であることを察したが、知らないフリをすることにした。


「店長というのは、もっと働いているものだと思っていました。」

青年が微笑みながら言うと、雪乃は肩をすくめた。


「この店では、私の仕事は全体の監督なの。それに、私が働かなくてもこの店はちゃんと回るわ。」


その答えに、青年は少し興味深そうに目を細めた。

「なるほど、店長らしい考え方だ。」



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新作ティラミスの提案


「せっかく来たなら、新作スイーツを試してみる?」

雪乃がカウンター越しに彼を見ながら言うと、青年は少しだけ驚いたような顔を見せた。


「新作スイーツ……それは興味深い提案ですね。ぜひいただきたい。」


弥生がティラミスを運び、青年の前にそっと置いた。

その美しい見た目に、彼は少し感心した様子で微笑む。


「これは見事な出来栄えですね。」

青年はティラミスを一口運び、その味に驚いた表情を浮かべた。


「……驚いた。この繊細な甘さとほろ苦さのバランス、まさに絶品だ。」

「でしょ? 私の腕にかかれば、このくらい当然よ。」

雪乃は得意げに胸を張った。



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新店員の不審な行動


その様子を見ていた新店員のセリーヌとクラリスは、緊張した様子で控えていた。

時折、彼女たちが青年に視線を送るのを見て、忍が小声で雪乃に囁いた。


「お嬢様、あの二人、あの客の正体を知っているようです。」


「やっぱりね。」

雪乃は微かにため息をつきながら答えた。

「まあ、彼が誰かなんてどうでもいいわ。私に迷惑をかけないなら、ね。」



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常連宣言


ティラミスを食べ終えた青年は、ゆっくりとカップを置いた。

「素晴らしい店だ。ここには、また来させてもらうことにしよう。」


雪乃の眉がピクリと動いたが、すぐに冷静な表情で返す。

「自由にどうぞ。ただし、騒ぎを起こすならお断りよ。」


青年は帽子を被り直しながら微笑んだ。

「騒ぎは好まない。静かにこの店を楽しませてもらうつもりだ。」


扉が閉まり、青年が去ると、店内には一瞬の静けさが戻った。



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雪乃の呟き


「……これ以上騒がしくならないといいけど。」

雪乃が紅茶を啜りながら呟くと、弥生が不安そうに言った。

「お嬢様、本当にあのお客様が問題を起こさないとお思いですか?」


「どうかしらね。でも、少なくとも今日は問題なく帰ったじゃない。」

雪乃は肩をすくめた。


一方、忍は冷静に付け加えた。

「しかし、お嬢様。あの方がここに来る理由がただの興味だけとは思えません。」


「どうでもいいわ。それより、次の新作スイーツを考えないと。」

雪乃は話題を変えるように立ち上がり、厨房へ向かった。


セリーヌとクラリスは、どこか複雑な表情を浮かべながら視線を交わす。

「彼が常連になるなんて、私たちの仕事も増えそうね……。」



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こうして、「雪の庭」に第一王子という新たな常連客が加わり、雪乃の日常はさらなる波乱を迎えることになった――。



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-第8話予告「静かで人気な一日」 


「静かで穏やかな喫茶店」――雪乃が目指す理想の姿。

しかし、今日も「雪の庭」は大盛況。

常連客たちに新しい客も加わり、スイーツと紅茶を楽しむ笑顔が絶えない。


「どうしてこうなるのよ! 私は静かで暇な店を目指しているのに!」

紅茶を片手にぼやく雪乃をよそに、店員たちはテキパキと仕事をこなし、店内は和やかな雰囲気に包まれていた。


穏やかで平和な日常の中に、人気店としての賑やかさが混じる一日。

果たして雪乃の求める「静けさ」は訪れるのか……?



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次回、「静かで人気な一日」――賑やかな喫茶店の日常をお楽しみに!













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