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第16話 タルトタタンと布石 1

雪の庭、開店です


 雪の庭に日差しが差し込み、月はエプロンを整えながらドアを開けた。

「雪の庭、開店です!」

いつものように満面の笑顔で常連客を迎える月。


開店前から集まっていた客たちが次々と入店し、席に着く。

月が軽やかに声を上げる。

「本日のスイーツは、タルト・タタンとなります。甘酸っぱいりんごの魅力を存分にお楽しみください!」


月の宣言と準備


厨房では月が仕込みを仕上げていた。

「タルト・タタンは、りんごのキャラメリゼが命。しっかりと丁寧に仕上げたから、お客様も喜ぶはず。」


クラリスが感心した様子で声をかける。

「月様、本当に完璧ですね……。雪乃店長直伝の技術といいますか。」

月は笑いながら答える。

「姉さまから学んだことを活かしているだけよ。でも、今日は少し私らしさも加えてみたわ。」


タルト・タタンの提供


注文が入り、月は次々とタルト・タタンを仕上げていく。

甘くキャラメリゼされたりんごとサクサクの生地が美しい黄金色を放つ。


飲み物との相性も考慮し、月はコーヒーや紅茶を丁寧に準備する。

「りんごの甘酸っぱさに合うように、今日は紅茶も少し濃いめにしてみたの。」


客たちはタルト・タタンを一口食べると、その美味しさに感嘆の声を上げる。

「さすが雪の庭……いや、月店長のタルト・タタンですね!」


月の狙い


閉店後、弥生が月に声をかけた。

「月様、今日はまた特別な気合いが入っていましたね。」

月は意味深な笑みを浮かべる。

「ええ、今日はただのタルト・タタンじゃないわ。」


「どういうことですか?」忍が首をかしげる。

月はそっと目を細めながら続けた。

「今日のタルト・タタンは、次の計画への布石なのよ。」


クラリスが目を丸くして尋ねる。

「布石……?次の計画って?」

月はいたずらっぽく笑いながら答える。

「ふふ、それはまだ内緒。明日を楽しみにしていてね。」



店内ではタルト・タタンが大人気となり、客たちの喜びの声があふれていた。

そんな中、スタードールの店長アルベルトが来店し、席につく。

運ばれてきたタルト・タタンを一口食べると、彼は思わず声を漏らした。


「これもすごい……」


それを聞きつけた月が、満面の笑みを浮かべてアルベルトに声をかける。

「どうですか?お気に召しました?」


アルベルトは感心した様子で頷く。

「ああ、とても美味しい。りんごの甘酸っぱさとキャラメリゼのバランスが絶妙だ。」


月は満足げに微笑みながら答える。

「ありがとうございます。実は、明日はもっと特別なスイーツをご用意する予定ですが、数に限りがございます。」


アルベルトの目が輝く。

「それは興味深い。どんなスイーツなんだ?」


月はいたずらっぽく笑いながら言った。

「それは、明日のお楽しみです。ただし、数に限りがございますので、ぜひお早めにご来店ください。」


アルベルトは笑いながら答える。

「それは楽しみだ。ぜひ伺わせてもらおう。」


「お待ちしております。」


月は丁寧に一礼し、その場を離れると、心の中で密かに笑みを浮かべた。

(明日は、もっと驚かせてみせるわ――)




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