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第18話:雪乃の帰還と天災(天才)の来襲4:三姉妹店長?

「ところで、この店は、いつ開店するの?」


花が唐突に話題を変え、周囲の空気が一瞬止まった。

弥生が時計を見て慌てて声を上げる。

「確かに、もう開店時間です!急いで準備を――」


しかし、雪乃は悠然と椅子に座ったまま紅茶をすすり、のんびりと答えた。

「久しぶりに私たち3人が揃ったんだから、今日は休業でもいいんじゃない?」


その一言に、店員たちは全員固まった。

クラリスが困惑気味に尋ねる。

「お嬢様、それは少し急ではありませんか?」

「もともと休業も少なくなかったし、…お客さんも、あっ、またかと思うくらいでしょ?」


月の自信満々な宣言


「大丈夫、お店は私に任せて。雪姉様も花も長旅で疲れたでしょ?今日は、私の店長ぶりを見ててよ!」


雪乃が微笑みながら紅茶を手に答える。

「月、あなたがそこまで言うなら、今日は私も花もお客さん気分で楽しませてもらおうかしら。」


花が興味津々な表情で付け加える。

「じゃあ月姉様、どんなスイーツが出てくるのか楽しみにしてるね!」


弥生が不安げに声をかける。

「月様、本日はガトーショコラがメニューですよね?準備は大丈夫ですか?」


月は自信満々に頷いた。

「もちろん!雪姉様直伝のレシピで完璧に仕上げるから、心配無用よ。」


忍が少し心配そうに小声で弥生に話しかける。

「月様の自信は頼もしいけど、今日もまた張り切りすぎて何か起こらなければいいけど……。」


弥生は軽く肩をすくめて答えた。

「まぁ、それも月様らしいというか……でも大丈夫ですよ、きっと。」


雪乃は肩をすくめ、花とともにカウンター席へ向かう。

「それじゃあ、月、今日は任せたわ。私たちはゆっくりさせてもらうからね。」


月は笑顔で見送りながら、小さく呟いた。

「今日は、私の本気を見せてあげるわ……ふふふ。」


弥生と忍がその背中を見ながら、不安そうに目を合わせるのだった――。


月は厨房から顔を出し、笑顔で二人に答えた。


「はいはい、雪姉様には紅茶ね。花にはココアね。特製でお出ししますから、少し待ってて。」


雪乃は頷きながら椅子に深く腰掛け、肩の力を抜いた。

「ふふ、月がこうしてお店を仕切ってくれると、本当に楽で助かるわね。」


花も隣で足をぶらぶらさせながら、笑顔を浮かべた。

「ねぇねぇ、月姉様の作るココアってどんなのかな?楽しみ!」


弥生が近くで耳を傾けながら小声で忍に囁いた。

「お嬢様がこんなにリラックスしてる姿、久しぶりに見ますね。」


忍も頷きつつ返す。

「そうですね。でも、月様の特製ココアと紅茶って、どんなひと工夫があるのか少し気になります。」


その間、月は厨房で手際よくココアを準備しながら呟いていた。

「さて、花には甘すぎず濃厚な特製ココアを。雪姉様には、紅茶に少しだけ隠し味を……よし、完璧!」


しばらくして月がカウンターからカップを運んでくると、目の前の二人にそれぞれの飲み物をそっと差し出した。


「雪姉様には特製アールグレイティー、花には濃厚だけどさっぱりした後味の特製ココアよ。どうぞ召し上がれ。」


雪乃がカップを手に取り、香りを楽しみながら一口飲むと、目を細めて微笑む。

「……香りも味も申し分ないわ。さすが、月ね。」


花も一口飲み、顔を輝かせた。

「わぁ!すっごく美味しい!ココアってこんなに濃厚で美味しくなるんだね!」


月は誇らしげに胸を張りながら答えた。

「当然よ!二人が満足してくれたなら、これ以上の幸せはないわ!」


店内はリラックスした雰囲気に包まれ、雪乃と花の穏やかな時間が流れるのであった――。



月は紅茶を運びながら微笑んで答えた。


「私は、オーナー店長で、月には、総支配人してもらおうかな。」相変わらず楽することばかり考える雪乃であった。



「総支配人ねえ……姉さま、本当に楽することばかり考えてますね。」


雪乃はカップを手に取り、余裕たっぷりの笑みを浮かべる。

「だって、私が頑張らなくても店が回るなら、それでいいじゃない。月がいてくれれば何も心配いらないし。」


花がココアを飲みながら口を挟む。

「じゃあ、花も何か役職もらおうかな。花は……えっと、何がいいかな?」


弥生が苦笑しつつフォローする。

「花様はまだお若いですから、次に何を目指すかゆっくり考えられてはいかがですか?」


花は少し悩んでから、小さな手を挙げて宣言する。

「じゃあ、花は『副支配人』でいい!」


その場が一瞬静まり、忍が思わず呟く。

「この店、もう完全に家族経営ですね……。」


雪乃が椅子にもたれながら、上機嫌に話を締めくくる。

「いいじゃない、家族経営で。私たちが楽しく働ければ、それで十分なのよ。」


月は厨房へ戻りながら、「姉さまらしいわ……」と呟きつつも、心の中で微笑んでいた。


店内には、ゆったりとした和やかな空気が漂っていた――。

花は腕を組みながら、当たり前のように宣言した。


「帰るのは時間がかかるし疲れるから、しばらくこっちにいることにするね。」


雪乃は少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んだ。

「そうなの? それならゆっくりしていきなさい。花がここにいてくれるなら、店の設備管理も完璧ね。」


月があきれたようにため息をつく。

「まったく姉さま、そういう理由で喜ぶなんてね。でも花がいるなら心強いわ。」


弥生が困惑しながら尋ねる。

「本当にしばらくこちらに滞在されるのですか? 本国のほうで問題にならないでしょうか?」

花は胸を張って得意げに答えた。


「大丈夫、私は本国にいることになってるの。」


雪乃と月、そして店員たちは驚きの表情で花を見る。

「は? どういうこと?」雪乃が眉をひそめて尋ねた。


花は笑顔で説明を始める。

「私の部屋に、ノックすると『今忙しいから、ほっといて』って返事をするマジックアイテムをセットしてきたの。」


「えー!? なんです、それ?」弥生が目を丸くして叫ぶ。


花はさらに説明を続ける。

「これは声を録音して、自動で応答してくれるアイテムなの。私が部屋にいるフリをするために作ったんだ。実に便利でしょ?」


月が呆れた表情で溜息をついた。

「さすが花ね。そんなことにまでマジックアイテムを使うなんて……。」


クラリスが半信半疑で尋ねた。

「それで、本当に誰も気づかないんですか?」


花は自信満々に頷いた。

「大丈夫よ! 私の声そっくりに再現してるし、普段から部屋にこもって作業してることが多いから、誰も怪しまないの。」



花は得意げに続けた。


「それにね、そのマジックアイテムには思考アルゴリズムを搭載してあるの。だから、百パターンの返事ができるようにしておいたの。これなら絶対にバレないわ!」


弥生は目を大きく見開きながら尋ねた。

「ひ、百パターン!? そんなに返事のバリエーションが必要なんですか?」


花は自信たっぷりに頷く。

「もちろん! 同じ返事ばかりしてたら怪しまれるでしょ? 例えば、『忙しいからほっといて』だけじゃなくて、『今手が離せないの』とか、『また後でお願い』とかね。」


クラリスが驚きを隠せない様子で口を挟む。

「それって……もう普通に人間じゃないですか?」


花は満足そうに微笑みながら答える。

「そうでしょ? 私の部屋に来た人は絶対に気づかないわ。むしろ、感心されるかもしれない!」


月は頭を抱えながらぼやいた。

「さすが花……自由すぎるというか、発想が飛び抜けてるというか……。」


雪乃は困惑しつつも苦笑いを浮かべていた。

「まぁ、確かにバレる心配はなさそうね。でも、花、本当に大丈夫なの? いつか本国で騒ぎになったりしないでしょうね?」


花は軽く手を振りながら答えた。

「大丈夫、大丈夫! 完璧に計算してあるから!」


店員たちは呆れるばかりだったが、花の天才ぶりと無邪気さに感心せざるを得なかった。




雪乃が苦笑しながら頭を抱える。

「もう……自由すぎるわね、本当に。」

しかし店員達は全員思う

あなたが、言うか?…


店員たちは半ば呆れながらも、花の奇想天外な発明に感心せざるを得なかった。








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